某日、池袋
普段は弟からもらったバーテン服とサングラスのセットで、一見してもそれが誰だか判る格好をしてる池袋最強の男が珍しく私服で人待ちをしていた
一緒にいるドレッドヘアの上司は見当たらず、12時になろうとした時に彼の前に現れたのは同い年くらいの普通の女性
「ごめん、静ちゃん! 電車が遅れてて…」
申し訳なさそうに現れた女性は、彼―平和島静雄が嫌がるであろう呼び名を平然と呼んだ
周囲の通行人はその瞬間に冷や汗が溢れ出したが、静雄は軽く眉を潜めただけだった
「電車はいいけどよ…ノミ蟲と同じ呼び方すんの止めろよ、」
「えー、可愛いじゃん。ま、臨也と同じ呼び方して、その度に臨也の事思い出されるのも癪だな」
笑いながら、さらりと小さな嫉妬めいたような事を言うに、言葉が詰まる
彼女―は静雄や臨也、森羅と同じ来神高校の同級生で長い付き合いだ
色んな意味で怖がられているこの三人に、大きな偏見も持たず何時の間にか溶け込むように一緒にいた
勿論、彼女がいたからと言って臨也との喧嘩がないわけではないが、それでも二人の仲裁はいつも彼女の役目だった
「しかし静雄からお誘いだなんて珍しいな。しかも私服? やー、ちょっと得した気分」
そう言って満面の笑みを浮かべるに、静雄の頬は薄く染まる
そう言うだって、普段のシンプルな服装に比べたらかなり……と言えない静雄は、照れ隠しに「行くぞ」と声をかけて歩き出した
「で、今日はどこ行きたいんだ?」
「え、静雄から誘ったのにノープラン?」
「あまり買い物とかしねぇし…どこに何があるとかあまり興味ねぇからよ」
「それが誘った方のお言葉ですか…まぁいいや、じゃあ甘味行こ?」
「あ? 甘いもの好きだよなぁ、相変わらず。いいぜ」
「やった、あのお店、夏の新作出てるんだよね」
いかにも楽しみです、といったはしゃぎっぷりに静雄は軽く笑う
の笑顔が見たいがために彼女に振り回される自分が不思議だが、それが嫌じゃない
末期だな、と思いつつ、静雄はの横を歩く
隣のが、静雄の笑顔を目にして軽く頬を染めていることも知らずに
「しっかし…よくあんな食えるな。どこに行くんだよ、あのケーキは」
「さぁ? 美味しいんだから、いいんじゃない?」
時間制の甘味食べ放題におとずれた人物が人物のために、周囲はおどろいていたが、
そんなことは気にせず目を輝かせるの食べっぷりに静雄は感嘆を通り越して呆れていた
満面の笑みで食べるは可愛いが、見てるこっちは胸焼けだ…など考えているとふいにが顔を上げた
「で、これからどうする? 私は行きたい所、行っちゃったんだけど?」
「他にねぇのかよ? 服とか見ないのか?」
「(他にって…誘った方の台詞じゃないよなぁ)んー、服は一人で見るほうがラクだからあまり友達と行かないんだよね。
静雄ン家でもいいけど? DVDでも借りて見ようか?」
たまに遊びに(襲来とも言える)行くにとっては、静雄の家は勝手知ったるだ
「あー…まぁ暑ィしなぁ。じゃあ俺ン家行くか」
「夕飯は任せときなよ、好きなの作ったげるから」
「(甘いもの食った直後に夕飯の話かよ…)…あぁ、まぁ頼む」
夕飯の買い物兼レンタルを終え、静雄の家に向かう
道すがら、門田達三人組(主に遊馬崎や狩沢だが)にからかわれ、何故か臨也に遭遇し、
を連れて行かれそうになって喧嘩が勃発、帰宅した時には19時を過ぎていた
「うわっちゃー…19時か。喧嘩して、ケーキは消費された? 急いで夕飯作るね」
そう言ってキッチンに向かうの腕を、静雄が捕まえた
「静雄? さっきの喧嘩で怪我した? それか、お腹空きすぎて動けない?」
どこか見当違いのことを話すを軽く引き寄せ、腕の中に閉じ込めた
内心かなり焦るだが、顔には出さずにされるがままになった
しばらくそのままの状態で過ごした後、静雄がポツリと呟いた
「臨也が…」
「うん?」
「…ノミ蟲がを連れて行こうとしたとき、すげぇ嫌だった。お前の笑った顔とか、全部俺だけが見ればいいと思った。
特にノミ蟲なんかに渡したくねぇ。何に替えても渡さねぇ」
それは紛れもなく嫉妬であり、熱烈な告白とも言える内容で
「学生ん時から、ずっと好きだった。怖がらずに接してくれるが、笑顔を見せてくれるが。ノミ蟲と話してるだけでも嫌だった」
話しながら、静雄は腕に軽く力を込める
それでもかなり加減はされているが、腕が、態度が、逃がさないとでも言っているような錯覚を受ける
「お前心配なんだよ…誰でも受け入れるし、今俺がこうやって抱きしめても平然としてるし…」
「静雄……私もね、静雄が好きだよ。たまに笑う顔とか、他の女の人に見せたくないよ。
だから、今日誘ってもらった時、すっごい嬉しかった。
それに…こうされること、静雄以外に許すと思う? 私が好き嫌いはっきりしてるの、知ってるでしょ?」
「知ってる…嫌いならあんな笑ってくれねぇ」
「でしょ? ……森羅も臨也も好きだけど、それよりも、何よりも好きなのは静雄だけだよ」
「甘味よりも?」
「あー…難しいね」
「なんだそりゃ」
何時の間にか腕の拘束は解け、互いの額を合わせて笑いあう
「静雄、大好きだよ」
そう言って合わせる唇は、一日の中で一番甘かった
嫉妬した臨也が、色んな甘味でを誘惑しようとしてるのは、また別の話
-END-
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こちらはリアル友達の暁蓮ちゃんが寄贈してくれた静雄夢です。
なんと蓮ちゃんこれが初めての作品だそうです(>д<*)
このヒロインちゃんは甘い物が大好きですが、私は甘い物が得意ではないので
自分で夢を書く時も甘い物大好きヒロインと言う設定では中々書けません。
なので今回のこの甘い物大好きヒロインはとても新鮮でした♪
人の作品を読むと自分ももっとこう言うのを書きたいなーと言う刺激になりますね。
私ももっと色々書けるように頑張ります!!
蓮ちゃん有難うv
'11/12/24
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