「…何ソレ」
「何って…仔ニャンコ」
金木犀の香りも終わりはじめ、冬の気配も近付いて来ている頃
一仕事終わって帰ってきた臨也の部屋には、恋人であるがいた
それまではいつも通りなのだが、の膝の上の珍客に目がいった
「見れば分かるけど…どうしたの、ソレ」
「ん、友達が急に実家に帰ることになっちゃって、一週間だけ預かってるんだ。可愛くて臨也にも見せようと思ってさ」
" ほら、臨也くんにご挨拶しようね"と満面の笑みを浮かべながら仔猫と遊ぶ
猫と言えば人見知りのイメージしかないのだが、仔猫だからか好奇心旺盛に臨也にも近付いてくる
「あは、臨也も懐かれてるね」
「小さいね…。どうやって連れてきたの?」
「ケージごと友達が連れてきたからそれに入れてきた。なんか凄いお利口さんなんだよ、出掛けてる途中は一切鳴かないの。でね、家にいるときは…」
飼い主でもないのに既に親馬鹿になっているは、仔猫が家にいる時の様子を嬉しそうに話しはじめる
話していても、彼女の手と目線は仔猫を追っていて、臨也に向けられない
「(面白くない)…ねぇ、ケージってどれ位の大きさ?」
「あぁ、ここにあるよ。こう見えて意外に軽いんだよ」
「ちょっと見せて」
言うが早いか、臨也は仔猫を抱き上げてケージの中に入れてしまった
「…可愛くなかった? 臨也って動物嫌い?」
申し訳なさそうに、少し悲しそうに問いかけるに対して、臨也は軽く笑って、の隣に座る
「キライじゃないし、仔猫も仔猫を構ってるも可愛かったよ。でもねー」
「うぁっ、何?」
「ここは、俺の指定席だから。例え猫だったとしても、座らせないよ」
そう言って、臨也は寝転がり、の膝の上に頭を乗せた
「…ばか臨也。猫に嫉妬しないでよ」
「そんな事言ってるわりには、顔が赤いよ? あの仔猫に構ってたぶん、俺のことも構ってよね。つまらなかったんだから」
サラサラの黒髪を梳きながら、「恥ずかしいやつ…」と思いつつ、愛おしくなって膝の上の臨也に顔を近付けた
END