「ただいまー」

「あ、お帰りなさいさん」



早朝

正門にはと小松田の姿

どうやらは昨日頼まれたお使いを終え、やっと帰って来た所らしい



「外出終了届けにサインして下さいね」

「はいはい…、これで良いね」

「はい、どうも有難う御座います」

「学園長もう起きてるかなぁ?」

「多分起きてると思いますよー」

「そっか、そんじゃぁまたね、小松田さん」



は片手をひらひらさせて小松田に背を向けた



「眠いよー…」



あくび交じりにそう呟いて、学園長の部屋に向かう



!!帰って来てたのか!!!!」



突然背後から抱き締められた

はさして驚きもせず立ち止まる



「さっき帰って来た」

「随分と遅かったな、何かあったのか?」

「んー?別に大した事は何も無かったよ」

「そうか、なら良いが…」

「ねぇ滝くん」

「何だ?」

「物凄い邪魔」



後ろからしっかりと抱き締められ、これでは歩く所では無い



、私が昨日一日でどれだけ寂しい思いをしたと思ってるんだ」

「知らないよそんな事…、私今から学園長の所行かなきゃいけないんだから離してー」

は私の事なんかどうでも良いのか!?」

「違うって…」



はぐいっと滝夜叉丸の腕を掴み、引き剥がす

そして滝夜叉丸を見上げると子供を諭す様な口調で告げた



「早く学園長に報告しちゃって、後はのんびりゆっくりすれば良いでしょ?」

「…まぁ……それもそうか」

「うん、滝くんは部屋で待っててよ、早めに終わらせて遊びに行くから」



はそう言って腕を伸ばし、滝夜叉丸の頭をぽんぽんと優しく叩くと、学園長の部屋へ向かった



「おっと、喜八郎を部屋から追い出さないと……」



暫くの背中を見つめていた滝夜叉丸だったが、ぽつりとそう呟くと自分の部屋に戻って行った



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「学園長、只今戻りました」

「おぉか、ご苦労じゃったの、随分と帰りが遅かったが、何かあったのか?」

「いえ、ちょっと町でのんびりしていたら遅くなってしまいまして…」

「そうかそうか、まぁとりあえず無事で良かった」

「すいません心配掛けてしまって…」

「うむ、今日はゆっくり休むと良い」



学園長はにこりと笑いながらから頼んでいた荷物を受け取った



「どうじゃ、今小松田くんに茶を入れさせるが、一緒に飲まんか」

「すいません、これからちょっと用事がありますので…」

「急ぎなのか?」

「えぇ…、余り遅くなると後が恐いと言うか…、他の人に迷惑が掛かるんです」



学園長の質問に苦笑しながらは答える



「そうか、それでは仕方ないのう…」

「すいません、それでは私はこれで失礼致します」

「うむ」



はぺこりと一礼すると、学園長室を後にした



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「喜八郎、とりあえず出て行け」

「随分いきなりだね…、何で?」



が学園長室を後にする頃の滝夜叉丸の部屋

横になっている喜八郎と、その前に仁王立ちしている滝夜叉丸



「今からがここに来るんだ」

「だからって何で僕が…」

「全く気が利かん奴だな、お前がここにいては私とがゆっくり出来ないだろう」

「そんな事言って、二人っきりになったらちゃんが危険だろ」

「何を言う、私とはもう公認の仲なのだから、何があっても不思議は無いだろう」

「わー、滝夜叉丸の変態ー」

「何だと?」



そんな言い争いをしている間に、は滝夜叉丸の部屋に到着してしまった



「滝くん、来たよー…って、何やってるの?」



襖に手を掛けたままは訪ねる

見ればそこには喜八郎に掴みかかっている滝夜叉丸



「いや、別に何でも…」

「助けてちゃん、滝夜叉丸に襲われるー」

「…滝くん……そんな趣味が…」

「無い無い!!喜八郎余計な事言うな!!」

「だって突然僕に抱きついて来てさぁ」

「何をどうすりゃそう見えるんだこの状況で!!」



滝夜叉丸はへらりと笑う喜八郎にそう怒鳴ると、を見る



も何とか言ってやってくれ」

「え?えーっと…、あ、そうだ」

「「ん?」」

「町でね、お菓子買って来たの、三木くんも呼んで皆で食べない?」

「だってさ、滝夜叉丸」

………」



大きめの紙袋を二人に見せてにっこり笑う

にやりと笑い滝夜叉丸を見上げる喜八郎

滝夜叉丸はがっくりと肩を落とした



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「三木ヱ門呼んで来たよー」

「あ、喜八くん有難う〜」

ちゃん、お菓子いっぱい買い込んだんだって?」

「喜八郎だけならまだしん何でこんな奴まで呼ばなきゃいけないんだ…」



喜八郎に連れられてやって来た三木ヱ門

は町で買った菓子類を用意しながら上機嫌だ

その横では滝夜叉丸が膝を抱えていじけている



「どうしたんだあいつは」



三木ヱ門がびっと指指し喜八郎に尋ねる



「さぁ、僕には全然わからないなぁ」



喜八郎がわざとらしく首を傾げてみせる横で、は滝夜叉丸に呼びかける



「滝くん、お菓子なくなっちゃうよ?」

「放っといてくれ…」

「「じゃぁ遠慮なく、ちゃん、食べようか」」

「え?あ…」



三木ヱ門と喜八郎はの肩にそれぞれ手を置きながらにっこり微笑む

は、困った様に滝夜叉丸と三木ヱ門、喜八郎を見比べる



「待たんか貴様等!!!」

「何だ」

「元気じゃん」



その様子を見て勢い良くから三木ヱ門と喜八郎を引っぺがすと、滝夜叉丸はを抱き寄せ二人を睨み付けた



「私のにべたべたひっつくんじゃない!!もあまりこいつ等に近寄るな、何をされるかわからんぞ!!」

「滝夜叉丸ったら酷いなぁ、僕達は滝夜叉丸よりずっと誠実だよ、ねぇ三木ヱ門」

「全くだ」



喜八郎の言葉に大きく頷きながら、三木ヱ門は笑った



「まぁとりあえず食べようじゃないか、折角ちゃんが買って来てくれたんだしな」



そう言いながら三木ヱ門はの肩をぽんと叩き、その場に座らせた

それと同時に喜八郎は滝夜叉丸の肩を同じように叩きその場に座らせる

滝夜叉丸は未だ釈然としていない様だったが、大人しく喜八郎に従った



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「このふ菓子美味しい…」

「でしょ?それ買うのに30分くらい並んじゃったんだから」

「こっちの草餅も上手いよ」

「あ、それは1日限定50個の草餅なんだって」



喜八郎や三木ヱ門に嬉しそうに説明する

その後ろで滝夜叉丸は一人暗い雰囲気をまとったまま菓子を口にしている



「もう、滝くんてば暗いよ」



限りなく暗い滝夜叉丸に近付くと、は小首を傾げて訪ねた



「皆で甘い物食べたら楽しいかと思ったんだけど…、迷惑だった?」

…」



自分に向けられた少し寂しそうな顔

滝夜叉丸はの両手をしっかり握るとそのままの体を引き寄せ抱きついた



「あ、滝夜叉丸が発情した」

「あいつ僕達が居る事完全無視だよな」



ほんの少し離れた場所で、喜八郎と三木ヱ門が菓子を口にしたままため息交じりに呟く



「滝くん?」

「久々に会えたというのにあんな奴等招くから…」

「久々って…、私が居なくてそんなに寂しかったの?」

「当たり前だろう」

「将来が不安だなぁ全く」



の言葉に即答した滝夜叉丸に苦笑しながらは呟く

そしてふわりと滝夜叉丸の頭を撫でると、可愛らしく笑った



「今度は二人で美味しいお菓子を食べに行こうね」



そう告げると滝夜叉丸から体を離す



「でも、このお菓子が全部無くならないと町に行っても無意味なのよね」



もはや別世界でお菓子を食べる喜八郎と三木ヱ門の方を指さしながらは滝夜叉丸に言う



「どうする滝くん」



少しばかり挑戦的な言葉に滝夜叉丸はを見上げると、次に菓子類に目を向けた



「っもちろん全て食い尽くしてくれる!!」



そう叫ぶや否や三木ヱ門や喜八郎に混じり食べ始めた



「うんうん、やっぱ甘い物って定期的に取らなきゃ駄目よね」



はお菓子を頬張る3人の男達を見ながら満足そうに呟く



「あ、私の分まで食べないでよね!!」



そしてすぐさま思い出したようにそう叫ぶと、3人と一緒になって大量の菓子に幸せそうな笑みを浮かべたのだった



- END -



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'04/12/20