「所で、貴方は何故サンコタケ城に?」



城へ向かう途中、会話の流れで何となく尋ねたの言葉に、青年はへらりと笑いながら答える



「んー…実は俺、とある城の次期領主なんだよね」

「はい……?」



そんな突拍子も無い答えに、からは思わず間の抜けた声が出る



「っはは。何て冗談だよ、冗談」

「そ、そうですよね、冗談ですよね…。性質の悪い冗談はよして下さいよ…心臓に悪いです」



そんなを見て男は楽しそうに笑う



「悪かったって、今はまだワケあって俺が何者なのかは言えないからさ」

「そうですか…」

「悪いね」

「いえ、依頼人の事を詮索するような真似をした私が悪かったです」

「へぇ…、学生とは言え結構ちゃんとしてるんだね」

「どうも…」



こんな調子で爽やかに笑う青年と控え目に隣を歩くは、傍から見れば恋人同士の様にも見えた



「あいつ…私のに近付き過ぎだ……!!」

「落ち着いてよ仙蔵…」

「ったく…女一人でだらしねぇな…」



そんな二人の後をこっそり気付かれないように付けている三人は、とても気が気じゃないようだ



、そんな男とっとと置き去りにして戻って来るんだ…!!」

「置き去りって仙蔵……」

「お前忍者として色々と失格だぞ…」



まぁ本当の意味で気が気じゃないのは仙蔵只一人のようで、

後の二人は仙蔵が何を仕出かすかわからない所においては大分気を使っているようだった



「そうだ、今更だけど君の名前は?」

「すみません、まだ申し上げてませんでしたね。私はと申します」

「へぇ…か、随分可愛い名前だね」

「そうですか?有難う御座います」



「あの男…馴れ馴れしく呼び捨てにする気か!!」

「はいはい…落ち着いてね……気付かれちゃったらどうするの」

「俺もう帰りてぇんだけど…」



「あの…貴方は?」

「あ、俺?俺は秀吉」

「秀吉さんですね」

「別に呼び捨ててくれて構わないけど?」

「いえ、そう言う訳には…」

「はは、律儀な所も可愛いねぇ」



「もう我慢ならん…」

「わーー!!仙蔵!!ストップストップ!!その火種消して!!」

「何で俺等がこんな目に…」



始終そんな感じではあったが、目的のサンコタケ城まで着々と進んでいた



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「あの…でもどうして忍術学園に護衛を?」



途中、尋ねるに秀吉は笑いながら軽く答える



「あんまり大勢で行動すると危険だろ?だから優秀な忍者が一人いれば良いかなって思ってさ」

「それはそうですけどそれなら私より優秀な方も居ますよ?」

「うん。でもくの一では君が一番なんだろ?」

「何故くの一にこだわるんですか?」

「そりゃぁどうせなら女の子が良いじゃないか。男と二人きりで道中を共にするなんて嫌だからね」



「何だかあの二人仲良さ気だね…」

〜…」

「散々暴れた挙句今度は落ち込んでるし…」



こうして目的地まで残す所後わずかとなった時



「っ気をつけてください…」

「ん?どうしたの?」



表情を硬くしたはそっと秀吉の手を取る



「後をつけられています」

「……え…?」

「どうやら敵は…3……、5人…?」

…?」

「静かに、そのまま歩き続けましょう」



やっと事態を飲み込んだ秀吉はの言葉に従い歩き続ける



「ねぇ仙蔵…どうするの?」

「……様子を見る、と言いたい所だがそうも言っていられないようだな…」

「とりあえず散るか」



文次郎がそう言うと三人は一斉に四方へと散った



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「おっと悪い、草鞋の紐が……」

「危ない!!」



唐突に紐が千切れた草鞋のに気を取られ秀吉がしゃがんだ瞬間、は秀吉を突き飛ばす



「いって……」

「……くっ…」



付き飛ばされた秀吉が腰をさすりながら起き上がると、そこには腕から血を流したが居た



「お、おい大丈夫か!?」

「掠っただけです。それよりも私から離れないで下さいね!!」



そう言うとは懐から出した苦無を構え、木の陰に向けて投げ付けた

するとが攻撃を仕掛けた木陰から二人の忍者が顔を出し、へと一歩近付く



「くの一の癖に中々やるようだな…」

「相手を甘く見る様な方に褒められても嬉しく無いですね」

「ほぉ…生意気な口を叩くもんだ」



じりじりと距離を詰める二名の忍者を前に、が出方を伺っているその頃

仙蔵と文次郎と別れた伊作は自分を追って来た敵の一人と対峙中だった



さん平気かなぁ…」

「おいお前!!人の心配する程余裕があるのか!?」

「え?あぁすいません。余裕があるか無いかと聞かれればあるんだけど、流石に失礼だったかな」



伊作はへらりとそう言って笑うと、次の瞬間力強く踏み込んで敵の懐へと飛び込んだ



「ぐっ!?」



投げつけられた手裏剣を弾き、あっという間に背後を取ると長い針を取り出し敵の首筋に当てる



「一応聞いておくけど、貴方達は何者?」

「…そんな事に賊の貴様らに関係ないだろう」

「賊?良く解らないけど…、まぁ教えて貰えないなら仕方無いなぁ」



伊作は特に悔しがる様子も無く、そのまま針を敵の首へと突き刺した



「……っ…!!」

「大丈夫、ただの痺れ薬だよ。…まぁ一週間位はまともに動けないと思うけど」



その場に倒れ既に意識を失っている敵の背中を見下ろして呟くと、伊作は文次郎や仙蔵の元へと走った



*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・




「そうそう、やっぱ忍者はこうじゃねぇとな!!」



文次郎も伊作同様、敵の一人を相手にしている



「くっ…貴様俺達の邪魔をすると言うのか!?」

「邪魔だぁ?俺に言わせりゃ邪魔なのはお前等なんだよ!!」



文次郎はそう怒鳴りつけると敵の足を払い、バランスを崩した敵の頭を片手で掴んで引き寄せる



「なぁ、所であの男は一体何者なんだ?」

「…わざわざ答えてやるとでも思ってるのか?」

「いーや?聞いてみただけだ」



予想通りの敵の答えを聞き、文次郎はにやりと笑うと敵の鳩尾に拳を打ち込んだ



「…とりあえず縛っとくか」



文次郎は懐から取り出した縄で敵を木にくくり付ける



「あれ、片付いちゃった?」

「ん、何か案外大した事無かったな」

「そうだね」

「そんじゃまぁそろそろ仙蔵の所にでも行くか」

「うん、心配だしね」

「あぁ、心配だな………敵が…」

「そう、敵がね…」



二人は深いため息と共に仙蔵の元へと向かった



*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・



「全く…しつこい奴等だな……」

「くっそぉ!!ちょこまかと逃げやがって!!」

「おまけに何とも手際が悪い…」

「っざけんなよおらぁ!!!!」



敵は走って逃げる仙蔵の背中目掛けて分銅の付いた縄を投げ付けるが、仙蔵は後ろを振り返ることもせずそれをかわす



「粗野と言うか何と言うか…。まだ文次郎の方がまともな攻撃を仕掛けて来るぞ?」



仙蔵は独り言の様に呟いて、得意の宝禄火矢を敵目掛けて投げつけた

小さめの爆発音と共に敵の叫び声が響く



「ぐわぁっ!!!!」

「煩い、一々悲鳴をあげるな。に気付かれでもしたらどうしてくれるんだ!?」

「な、何の事……だ…一体…」



襟首を掴まれがくがくと揺さぶられながらも、敵は何とか仙蔵の言葉に突っ込みをいれる



「お前には関係ない事だ。それよりもお前…先程に切り掛かった奴の仲間だな?」

「…だったら何なんだ」

「仲間なんだな、そうか…仲間か……」



仙蔵は何やらぶつぶつと呟いて、やがてにこりと微笑んだ



「良し、殺す」

「なっ……!!」

「本当は切りかかった本人を殺りたい所だがそいつは今が戦っている最中だからな。手伝ったらは怒るだろうし…」

「な、何言ってるんだお前…」



敵は仙蔵の言葉が理解出来ず、うろたえている



「まぁ、運が悪かったと思え?」



そう言うと仙蔵は容赦なく敵目掛けて棒手裏剣を投げつけた



「……ひっ!!」



棒手裏剣は敵の顔すれすれを横切り地面に突き刺さる



「びっくりしたぁ、本当に殺したかと思ったよ」

「そんな訳あるか。…殺すと後々面倒だからな」

「お前面倒とかそう言う基準で物言うのどうにかしろよ…」

「何か問題があるか?」

「ったく…」



背後から現れた伊作と文次郎の声に振り返ることもなく仙蔵は答える



「まぁ…次は無いと思って間違いないがな」



仙蔵は気絶している敵に冷ややかな視線を浴びせて呟いた



「仙蔵、それよりさんが…」

がどうかしたのか!?」

「いや、既に敵二人とも片づけただけ………って…もういねぇし…」



遥か彼方に見える仙蔵の後姿を見た二人は、互いに顔を見合わせた後盛大にため息を吐いて肩を落とした



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「あれ?二人だけ?もっと居たと思ったんだけど…」



は縛り付けて地面に転がした二人の忍者を足蹴にしながら呟く



「ねぇ、貴方達は二人だけなの?」

「………」

「…その様子だと仲間がいるみたいだけど……気配無いしなぁ…」



はぐりぐりと敵を踏みつけたまま独り言を呟き、辺りへと神経を集中させる



「………!!」



そして微かに人の気配を感じて振り返り、は目を見開く



〜〜!!」

「っ立花先輩!?」



見れば猛スピードで仙蔵がこちらへ走り寄って来ており、は心底驚いた顔で仙蔵を迎えた



「せ、先輩がどうして此処に…?」

!!無事だったか!?」

「ぇ?あ、はい。…あの…無事は無事ですけど…」

「そうだ腕!!まだ止血してないじゃないか…早急に治療を!!」

「あ、あの…」



呆然とするをよそに仙蔵はテキパキとの腕の止血を始めてしまった



「なぁ…、その人一体何者?」



仙蔵の登場での雰囲気が戻った事に安心し、それまでの気迫があまりにも恐ろしくて物陰で小さくなっていた秀吉がひょこりと顔を出す



「あ、すみません秀吉さん。ぇと、この方は忍術学園の先輩で…」

の先輩兼"恋人"の立花仙蔵だ、以後宜しく頼むぞ」



仙蔵はの後ろから顔を出した秀吉に向かい、恋人の部分をやや強調してにこやかに微笑む



「何だ、って彼氏いたのか」

「あ、はい…一応……」

「……………」



親しげにを呼び捨てにする男と、自分の事を一応等と形容するへの抗議の気持ちで仙蔵は内心穏やかでは無いが、

仙蔵は決してそれを表情に出す事は無く勤めて冷静に男に向かい尋ねる



「それより…こいつらは一体何者なんだ?」

「あぁ、多分俺を連れ戻しに来たんだと思う」

「え…?連れ戻しにって……」

「おい、どういう事だ?」



思わず顔を見合わせて尋ねる仙蔵とに悪びれる様子も無く、秀吉は軽く笑いながら告げた



「最初にも言った通り、俺って若殿なんだ」

「へ…??だってあれは嘘なんじゃ…」

「いやぁ、信じて貰えてないみたいだったから嘘って事にしただけ」

「だから一体どういう事なんだ…?何故お前の護衛であるハズの忍者が私達を狙う?」



明るく笑う秀吉に多少イラつきつつも、仙蔵は尋ねる



「うーん…勝手に城抜け出したから連れ戻しに来たんだろうな。そんでを曲者と勘違いした…とか?」

「………」

「………」



唖然とすると仙蔵余所に、秀吉は語り続ける



「実はサンコタケ城に俺の好きな人がいるんだ、だからその人に会いに行きたかったんだけど…

一国の次期領主ともなるとこれが中々外に出して貰えなくてさ。で、うちの側近忍者ばっかりだから同じ忍者なら対抗出来るかと思って」



そう言いながら頭を掻く



「それで忍術学園にお願いしたって事…?」

「そう言う事。まぁ手紙には詳しい事は何も書かなかったけどね」

「学園長もそれで良く承諾したな…」

「あぁ、君達の学園長はうちの親父と俺が小さい頃からの知人なんだ」



秀吉がそう説明すると、仙蔵との背後に人影が二つ現れた



「そっか、じゃぁさんは学園長に騙されたって事?」

「まぁ俺は久々に楽しめたから良いんだけどよ…」

「善法寺先輩と潮江先輩まで来てたんですか…」

「俺たちはこいつに無理矢理連れて来られただけだ」

「まぁ仙蔵一人じゃ何するか解らないから心配で一応ね」

「失敬な、私は常に冷静だぞ」

「「………」」



仙蔵の言葉に思わず内心でつっこみながらも苦笑いする二人

そんな三人を見て、は思わず微笑んだ



「でも良かったです」

「何が?」

「ぁ、いえ…秀吉さんの城の忍者さん達、勢い余って殺しちゃってたら洒落になりませんから」



ほんわかとした空気を纏ったまま割とエグい事を口にするに、その場の四人の動きが少々固まる



「どうかしましたか?」

「何でも無いよ!!ぇっと、それよりさんはこれからどうするの?」

「どうするって…何がですか?」



そう問う伊作には尋ね返す

すると伊作の代わりに文次郎が答える




「お前は学園長とこいつに一杯食わされてただけだしな。…もう放棄しちゃっても良いんじゃねぇか?」

「ちょっ!?」

「そうだな。私もこの若殿とやらに付き合う必要は全くもって無いと思うぞ」

「ぇえ!?」



文次郎と仙蔵の冷たい言葉に秀吉は思わず慌てる

しかしは苦笑しつつもはっきりと言った



「とりあえず依頼は依頼ですし、ちゃんとお城まで送りたいと思います」



「そっか、さんがそう言うなら仕方無いよね。行こう」

「何だよ、俺達もこのまま付いてくのか?」

「流石私のだ…忍務を途中で放棄しないとは忍者の鏡だな!!」

「先輩ってば褒めすぎですよ。でも嬉しいです」

「あはは、また始まった…」

「こいつらの空気の読めなさは4年の滝夜叉丸以上だからな…」



の一言でどうにか目的地まで連れて行って貰えそうな雰囲気を察し、秀吉はほっと胸を撫で下ろしながらに声を掛けた



「悪かったな」

「はい?」

「ちゃんと最初から説明しておけばが腕を怪我する事も無かったのに…」

「いえ、別に気にしてませんよ。腕は先輩が手当てしてくれましたし」



先程仙蔵が手当てしてくれた腕を見ながら笑うに、秀吉もふっと笑う



「仲良いんだな」

「はい、それはもう」



秀吉の言葉に満面の笑みで答えるを微笑ましく思いながら、秀吉もに続いて歩き出した



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「秀吉様!!」

「姫!!」



ようやくサンコタケ城へと辿り着き、無事に再開した二人は互いの姿を見るなり抱きあい二人の世界へと入ってしまった



「はぁ…とりあえず良かったですねぇ」

「うん、そうだね。…でもこれってさんの試験も兼ねてるハズなのに私達まで来ちゃって良かったのかなぁ?」

「そういやそうだよな。いや、っつーかそれより一体どうすんだよこいつら」

「見事に二人の世界だな…」

「いや、お前等も毎日こんな感じだぞ?」



周りに薔薇でも咲かさんばかりの勢いの二人を少し遠巻きに見つめながら呟く仙蔵に、文次郎が待ったを掛ける



「いやいや、むしろこれよりもっと凄いよ」

「そうですか?でも確かに先輩に会うと嬉しくてつい周りが見えなくなっちゃう事はあるかもです…」



文次郎の言葉に伊作が更に付け足すと、は両手で頬を抑えながら恥ずかしそうに呟く



、私も同じ気持ちだぞ」

「先輩…」

…」

「……とりあえず学園に戻ろうか…」

「そうだな……」



こんな所でもバカップルっぷりを発揮する仙蔵とを眺めながら、伊作と文次郎は深いため息をつく

こうして一行は秀吉と姫に別れを告げ、揃って学園へと戻った



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「…と言うわけで、秀吉さんは無事にサンコタケ城へ送り届けました。
手違いで倒してしまった秀吉さんの護衛も手当てしたので、帰りはその方達に任せれば問題無いと思います」



学園に戻ってすぐ、は報告をしに学園長室へとやって来たがその隣には何故かぴったりと仙蔵が寄り添っている



「ふむ、ご苦労じゃったな」

「学園長、失礼ですが今回の件は少々無責任では?」

「はて、無責任とはどういう事かの?」

「一国の次期領主ともあろう若殿が護衛を捲く為に忍術学園の生徒を使うなんて身勝手極まりない。
しかもそれを黙認した上にに伏せて護衛にあたらせる等、にも彼の護衛にも失礼ではありませんか」

「立花、少し落ち着かんか」

「落ち着いてなど居られませんよ。が危険な目にあったんですよ?腕まで怪我して…」

「いえ先輩、あれは私の不注意だから…」

「しかし…」

「良いんです。今回の事で自分の甘さも認識出来たし、秀吉さんも姫様も嬉しそうだったのでそれだけで十分です」

「……流石は私のだ!!」



学園長に詰め寄る仙蔵を止めて微笑むを見つめ、仙蔵は両腕を広げを抱き締める



「…全く、あいつらには敵わんわい……」



自分の存在を無視して堂々と抱き合う二人を前に、学園長はため息交じりに呟いて部屋を抜け出した



「あぁそうだ」

「?」



二人きりになった部屋で、ふと仙蔵が切り出す



「後を付けたりしてすまなかったな…。を信じていない訳では無いが、心配で思わず…」

「いえ、私も学園を出た時から先輩に会えなくて寂しかったから、先輩が来てくれてとても嬉しかったです」

…!!」

「先輩…!!」



学園長室だと言う事も忘れて抱き合う仲睦まじい二人だったが、そんな二人にも慣れた学園は今日も平和に時を刻むのだった



- END -



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






'04/3/16