「あら、さん…、早かったわね」

「はい、本当は委員会があったんですけど、何か無くなっちゃったみたいで…」



放課後

約束通り職員室へとやって来たは、扉を閉めながら説明する



「そう…、まぁ良いわ、それじゃぁ早速だけど段取りを説明するわね?」



シナはそう言うとを自分の方へ手招きする

がシナへ近付くと、机の上にはいくつかの巻物が乗せられていた

そしてその中の二つを取り出しに告げる



「これが今回使用する偽者の巻物、偽者は帯が赤い物で、これが本物の巻物、こっちは帯が紫でしょ?」

「はい」

「貴女はこれらの巻物を、本物の巻物と一緒に今から事務室に持って行って頂戴」

「わかりました、でも…」

「どうしたの?」

「本当に私なんかが管理しても良い物でしょうか…」



本物と偽者の巻物を腕に抱えながら、は不安そうに呟いた

シナはそんなの様子に小さく笑うと子供に言い聞かせるように話かけた



「大丈夫よ、貴女なら問題無いわ」

「…だと良いんですけど」



は苦笑してそう答える



「それじゃぁ事務室に行ってきますね」

「えぇ、くれぐれも他の人に見つからないようにね」

「はい」

「あ、ちょっと待って」



部屋を出て行こうとしたを呼び止めたシナは、机の引き出しから一枚の小さな紙を取り出しに手渡した



「これは?」

「事務室の鍵を借りる為の借用書よ、これが無いと鍵が借りられないから」

「そうなんですか」

「そうよ、鍵は吉野先生が管理してるから、これを見せて貸して貰うと良いわ」

「わかりました、それじゃぁ失礼します」



は少しばかり緊張した面持ちでそう答えると、足音も無く部屋を出て行った



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「あ、すいません小松田さん」

さん、どうしたの?」



人気の無い廊下

が小松田を呼び止める

小松田は振り返りの姿を確認すると何時もの様に緊張感の無い顔で微笑んだ



「事務室の鍵を貸して頂きたいんですけど」

「事務室の鍵を?誰かに許可は取った?」

「はい、山本シナ先生から頼まれたので」



が小松田にそう答えると、小松田はにっこり笑った



「そっか、それじゃぁはいこれ」



そうして胸ポケットから事務室の小さな鍵を取り出しに手渡す



「後で返してくれれば良いからね」

「わかりました」

「それじゃぁ僕門に行かなきゃいけないから、またね」

「はい、失礼します」



小さく頭を下げ、小松田の背中を見送ると、は不敵に微笑んだ



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「あれ…?」

「あら、小松田さんどうかしましたか?」

「………さん……?」

「はい?」



門へ続く廊下

小松田はと出くわした

小松田は実に驚いた様子でを見つめている



「さっき…あっちの廊下で会ったよね?」



小松田が今来た方向を指差し尋ねると、は首を横に振った



「いえ、私は今まで山本先生の所にいたので小松田さんには会ってませんけど…?」

「………ほぇ?」



が答えると小松田は一瞬動きを止める

そして見る見る内に青ざめて行った



「こ、小松田さん?どうかしたんですか…?」



が恐る恐る尋ねると、小松田は涙目になりながらにすがりついた



「っぼ、僕、今さっきあっちの廊下でさんに会って…」

「私に…?それでどうしたんですか?」

「事務室の鍵を貸してくれって言うから…」

「………鍵を……………って、まさか小松田さん貸しちゃったんですか!?」



が同じように青ざめて小松田に聞くと、小松田は下を向いたまま小さく頷いた



「どうしてそんな簡単に貸しちゃうんですか!!そう言う事は先生の許可証を見せて貰ってから…」

「だ、だってちゃんと山本シナ先生に許可貰ったって言うから…」

「シナ先生にって…、その許可証は見せて貰ったんですか?」

「……貰ってない…けど………」

「っ兎に角事務室に行かなきゃ!!」

「え、あ…」

「小松田さんも早く!!」

「う、うんっ」



こうして二人が事務室へ向かったその頃



「もうそろそろ始まってるのかなぁ」

「あぁ、結構色々仕掛けてるから多分もう始まってんだろうな」



小平太と文次郎は食堂でのんびりお茶を飲みながらそんな会話をしていた



「ってかさぁ、って本当に鈍いよね、優秀なのに」

「そうだな、あれでくの一になるって言われてもピンと来ねぇな」

「平気かなぁ」

「さぁな…」



文次郎がぶっきら棒にそう答えると、食堂に仙蔵が入ってきた



「どうやら始まった様だな」

「あ、せんちゃん見てきたの?」

「あぁ、先程と小松田さんが廊下を全力疾走していた」

「全力疾走…って……どんな内容の試験なんだ…」

「わからん、しかし伊作の話じゃ私達には言えない内容だそうだ」



仙蔵は小平太の隣に腰掛けると自分の分のお茶を注ぐ



「って事は、人に知られちゃ駄目って事だから…」

「重要書類の護衛とかその辺だな」

「そうだな」



いとも簡単にの試験内容を言い当てた3人は、お茶を飲みながら同時にため息をついた



「小松田さんが絡んでいるとなると事態が悪化しかねないな…」

「でも平気でしょ、先生達も承知で仕掛けてるんだし」

「そりゃそうだろうけどよ…、随分と壮大な卒業試験だよな…」



文次郎はぽつりとそう呟くと、さして慌てた様子も無く自分の口を塞いだ



「っと…、これは一応内密なんだっけな」

「お前な…」

「もんじ口軽ーい」

「っせぇな、別に誰も聞いてねぇだろ」

「所が聞いてたりするんだな」



文次郎が言うと、食堂の入り口から伊作と長次が顔を出した



「駄目だよ文次郎、少しは発言に気をつけなきゃ、これが私達じゃなかったらどうするんだい」

「へーへー、以後気を付けますよ」

「伊作、の様子はどうだ?」



そう仙蔵が伊作に問い掛けると、伊作は苦笑しながら答えた



「結構面白い事になってるよ、ね、長次」

「………あぁ…」

「「「面白い事?」」」



伊作と長次の言葉に3人が首を傾げる



「えっとね、多分なんだけど、の試験内容は巻物の護衛らしいんだ」

「予想的中だね」

「うん、それで…」



伊作はきょろきょろと辺りを見回し、近くに人が居ない事を確認すると、小さな声で話し始めた



「小松田さんがの偽者に事務室の鍵を渡してしまって、がその事実を知って事務室に向かったんだけど…」

「あぁ、だから小松田さんとが廊下を疾走してたのか」

「それで、向かったんだけど、何?」

「えぇと、事務室に巻物は案の定無くてね、も小松田さんも真っ青」



伊作はそう言いながら悪戯っぽく微笑んだ



「簡単に想像付くな…その構図」

「てか、いさっくんそれ笑いながら言う事じゃないと思うんだけど…」



文次郎は顎に手をやりながら苦笑する

その横で小平太も同じように苦笑しながらお茶をぐいと飲み干した



「ねぇ、の偽者って、やっぱり5年の鉢屋なの?」



空になった茶碗を弄びながら小平太が尋ねると、伊作は長次と顔を見合わせた



「どうなのかな」

「さぁな…」



伊作は長次と短く言葉を交わすと、小平太の方に向き直る



「実際見た訳じゃないから何とも言えないけど、多分そうなんじゃないかな」

「そっか…、これから私達どうしよっか、せんちゃん何か考えある?」

「そうだな…、先生達の動きを見ながらを見守るしか無いだろう」

「つーかも良く気付かないよなぁ…、少し考えれば気付きそうなもんじゃねぇか」

「そうだね…、そんな重要な物を保管したら、普通は小松田さんに鍵持たせないよね…」



文次郎の言葉に4人は深く頷きながら、5人同時にため息をついた



「まぁこんな所で油売ってても仕方ねぇ、様子見に行こうぜ」

「賛成〜」

「そうだな」

「あ、私はこれから保険委員の方に行くから、」

「俺も…図書委員がある……」

「そうか、じゃぁまた何かあったら報告してやるよ」

「うん、よろしく、それじゃぁ後でね」



こうして5人は食堂前の廊下で別れ、それぞれ行動を別にする事にした



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「あ〜ぁ、先生達も意地が悪いよねー」

「だな、無事に卒業するには嘘を見破るか課題をクリアするかのどっちかしかねぇなんてよ」

「例え気付いたとしても私の用に何処かの馬鹿と組まされる可能性もあるしな」



文次郎の横でいかにも嫌そうな声で仙蔵がそう告げると、文次郎は頭を掻きながらあくびをした



「小せぇ事気にすんなよ、はげるぜ?」

「誰のせいだ全く…」

「ねぇ2人とも、あれってじゃない?」



ふと小平太が仙蔵の袖の裾を引っ張った



「ん?」



仙蔵と文次郎が小平太の指差す方向を見ると、そこには確かにの姿



「おーい〜!!」



小平太が大声でに呼びかけながら手を振ると、は勢い良く3人の元へ走り寄ってきた



「小平太!仙蔵!文次郎!!小松田さん見なかった!?」



は大変慌てた様子で3人に捲くし立てるように問う

3人は顔を見合わせると、同じように首を横に振った



「見てないよ?」

「そんなに慌ててどうしたんだよ」

「小松田さんがどうかしたのか?」



仙蔵が慌てるに向かい尋ねると、は1度呼吸を整えた

そして何かを言おうと口を開いたが、すぐに何かを思い出したように口をつぐんでしまった



?」

「どうしたんだ?」

「言ってくれなきゃわからないぞ」



の不思議な行動に3人が疑問符を浮かべると、は首を左右に振る



「ごめん、何でもないの、見てないなら良い、私急ぐから、またね!!」



は早口でそう告げると、あっと言う間に3人の間をすり抜け走って行ってしまった

の後姿を見届けた後、3人はそれぞれため息を付く



ってわかりやすいなぁ」

「まぁ言いかけて止めたのは一応合格、だな」

「しかし後を付けられている事に気付かないのは…な」



仙蔵はそう言うとふと天井を見上げた



「山田先生、ちょっとお尋ねしたいのですが宜しいですか?」



天井の一点を見上げたまま仙蔵が声を掛けると、上から音もなく伝蔵が降りて来た



「何だ?」

「何で巻物を護衛していたが小松田さんを追い掛けてるんですか?」

「何でお前等がそれを知ってるのかはあえて問わんが…、まぁ二重の策に嵌められたって所だな」



伝像は顎の髭を弄びながら苦笑して答える

仙蔵、小平太、文次郎の3人は伝蔵の言葉の意味が理解出来ずただただ頭に疑問符を浮かべた



「兎に角、お前達余計な口出しはするんじゃないぞ」

「「「はい」」」



伝蔵の言葉に大人しくそう返事をすると、伝蔵は満足に頷いてまたその姿を消した

完璧に伝蔵の気配が消えた事を確認すると、3人はぼそりと呟く



「もちろん口出し等するつもりは無い」

が無事ならそれで良いんだもんね」

「んじゃ、ぼちぼち小松田さんでも探してみっか」

「そうだな、山田先生の言っていた事は今ひとつ理解出来ん」

「二重の策って何だろうねぇ?」



小平太の言葉を最後に、3人はその場から消えた



−TO THE NEXT−



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さぁいよいよ訳がわからなくなって来ました!!

と言うか、前作からかなり時間が経ってしまったので自分何書こうとしてたのか忘れました;

メモ読んでも良くわかんないの。

仕方ないのでちまちままた構成し直します。

とは言え結果はわかっているので、結果までの過程が多少変わる程度だと思います。

そして今の時点で言える事は一つ、「リク通りにならんかもしれない」

駄目じゃん!!。・゜(ノД`

む、無理矢理頑張ります…___○_



'04/11/13



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いやそこはリクエスト通りになるようにしようよ、ってツッコミたいですよね。



再up日

'11/12/26