それはある日の朝の事

がいつもの様に食堂に向かおうと廊下を歩いていると、小平太の背中を見つけた

小走りで駆け寄ってぽんと肩を叩く



「小平太、おはよう」

「あ、、おはよう〜」



の声に振り返った小平太は、いつもより少し元気が無い様に見える

いつもなら飛びつかんばかりの勢いで返事を返してくるはずだが、今日は曖昧に笑って片手を軽く挙げる程度だ



「…何か元気無いけど、どうしたの?」

「え?嫌、別に何でもないよ?」

「本当…?」

「本当本当、お腹空いちゃってるだけだよ」



心配そうに訪ねるに苦笑しながらそう答えると、小平太はに訪ねた



も今から朝ご飯?」

「うん」

「それじゃぁ一緒に食べよ!」



そう言っての手を取ると、食堂へと歩き出した

はそんな小平太の言動に少し首を傾げながらも、大した事では無いと判断し、そのまま小平太に連れられ食堂へ向かった



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「ねぇ、そう言えば他の4人は一緒じゃないの?」

「あー、長次達、今ちょっと先生に呼ばれてるんだ」

「先生に?」

「うん、私はさっき話が終わったばっかり」

「そっか」



食堂についた二人はカウンター越しにおばちゃんの料理を受け取ると、適当な場所に腰掛けた

一応後から仙蔵達が来るかもしれないので、席は広い場所を使用する



「何だかいつも5人一緒ってイメージがあるから、小平太1人だと違和感があるね」

「それ先生にも言われたよ、だから私達、実習で離れた事ほとんど無いもん」

「へぇ…、でもそれだと他の生徒じゃ相手にならないんじゃない?」



が悪戯っぽく小声で訪ねると、小平太も同じ様に笑いながら答えた



「だから、大体私達5人対その他の生徒、ってなるよ」

「あ、それくの一でも似た様な事やったよ、私含める4人と、その他の生徒で鬼ごっこみたいなの」

「じゃぁ優秀なんだねー」

「それじゃぁ小平太も優秀って事になるじゃない」

〜…、それ私が馬鹿って事…?」

「まぁ、小平太は兎も角俺は優秀だがな」



突然背後から割って入った声にが振り返ると、其処にはお盆を両手にしながら得意そうに笑う文次郎の姿



「文次郎、おはよう、先生との話は終わったの?」

「おぅ、ついさっきな、仙蔵や伊作ももう来ると思うぞ」

「そっか、あ、ここ座る?」



は少し席を横にずらしながら文次郎を隣に招き入れた



「あ、もんじずるい!!大体俺は優秀って何だよ」

「っは、何言ってんだ、体力馬鹿のお前とは違って俺は筆記もちゃんと勉強してるんだよ」

「何だよ、1学期の成績は大体似た様なもんだった癖に!!」

「そりゃ前の話だろ、2学期はお前の方が20も順位下だったじゃねぇか」

「ちょっと二人共…」



激化する言い争いを止めようとが口を開いたその時、背後から急に肩を叩かれた



「あ、仙蔵、伊作、長次…」

「朝から随分と低次元な争いが聞こえると思えばお前達か」

「あ、せんちゃん達話終わったんだ?」

「あぁ、つい先程な」

「小平太は随分早かったな……?」

「うん、だってすぐに返事しちゃったもん」

「お前…少しは考えろよ……」

「まぁ小平太らしいと思うけどね」



そんな話を5人がする中、は一人何の事だか解らず頭に疑問符を浮かべている



「一体何の話?」



が5人に尋ねると、5人は一度顔を見合わせ困った顔で口を揃えた



「「「「「内緒」」」」」



5人に一斉にそう言われては、流石にそれ以上は何も聞けず、は釈然としないまま引き下がるしかなかった



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「ご馳走様でした」

「ご馳走様ー!!」

「あー喰った喰った」

「相変わらず小平太と文次郎には驚くね…」

「お前達の胃袋は底なしだな…」

「…………」



すっかり食べ終え、6人が一息付いていると、くの一教室の教師である山本シナがやって来た



さん、ちょっと良いかしら」

「山本先生…、何か用ですか?」

「えぇ、少し話があるの、私と一緒に来て頂戴」

「わかりました」



5人が見守る中、はそう返事をするとお盆を両手に立ちあがった



「それじゃぁまた後でね、」



はそう一言5人に言い残すと、そのまま先生と廊下へ消えた



「………承諾するかな?」

「するだろ」

「でも本当の事は何も知らされないんだよね?」

「やはり止めるべきか…?」

「……どうだろうな…」



の姿が無くなった事を確認すると、5人は顔を寄せ合いひそひそと話し合う



「私達はともかく…じゃ余りにも危険だよね…」

「強いつっても一応女だしなぁ…」

「心配だね…」

「後をつけると言うのはどうだ?」

「先生に止められると思うが……」



仙蔵の言葉に長次が答えると、仙蔵は軽く笑った



「止められる前に行ってしまえばこちらの物だ」



長く美しい髪の毛をさらりと手で払いながらそう告げる



「…そっか、そうだよね、別にまだ付いていくなって言われた訳じゃないしね」

「まぁ付いてってばれたらそんときゃそん時だな」

「でも私達だって自分のテストがあるんだよ…?」

「それは問題無い、男子と女子では日程が違うからな」

「男子は明日…、女子は3日後だ……」



長次の言葉を最後に5人は暫く考え込むと、一斉に顔を見合わせて静かに頷いた



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「さてさん、貴女を呼んだのはちょっと頼みたい事があったからなのよ」



誰も居ない職員室で、山本シナがにそう告げる



「頼みたい事…ですか?」

「えぇ、これはあまり大きな声では言えないんだけど、貴方を優秀なくの一として見込んでの事よ」



が緊張した面持ちで山本シナの顔を見ると、シナは優しく笑った



「そんなに緊張しなくても良いわ、ただ引き受けるかどうかは貴女次第だから、良く考えて欲しいの」

「はぁ…」

「とりあえず簡単に内容を説明しちゃうわね」



シナはそう言うと机の上の紙を一枚ひらりとに差し出した

は反射的にそれを受け取る



「読んで頂戴」



その一言では紙に目を通す



「………これって……犯行予告……?」



が小さく呟きながらシナの顔を見ると、シナは困った顔をして頷いた



「そうなのよ…、昨日の夜届いた物なの……」

「学園の極秘の巻物を頂くって……そんなものこの学園にあったんですか?」

「えぇ、それは昔の生徒の個人情報や現在の職業、そう言う個人のデータが細かく書き込まれてる巻物なの」

「あぁ…、そんなのあるんですね…」

「今は一応学園長先生の部屋に保管してあるんだけど…」



シナはそう言いながら片手を頬にあてながらため息を付いた



「わざわざ犯行予告なんか出すんだもの、余程自信があるのね」

「そうですねぇ…、何だか信じられないですけど……普通犯行予告なんか出しますかね…?」

「えぇ、だからこそ先生方も戸惑っているのよ、誰かの悪戯なんじゃないか、って」

「なるほど……、それで、私とこの予告に何の関係があるんですか?」



が紙をひらひらと弄びながら訪ねると、シナは真剣な表情でに告げた



「貴女には今夜事務室のお部屋の見張りを務めて貰いたいの」

「私が…、一人でですか?」

「そうよ、でもね…」



シナはきょろきょろと辺りを見回すとこっそりとの耳元で囁いた



「(実は本物の巻物は学園長室じゃなくて事務室にあるの)」

「(あぁ…、学園長の部屋のは偽者なんですか…)」



釣られてまで小声になりながらそう訪ねると、シナはにっこりと笑った



「そう言う事、だから先生方は敵を欺く為に学園長室の方を重点的に警戒するから、貴女には本物を見張って欲しいの」

「でも…私だけで大丈夫でしょうか…?」

「大丈夫よ、小松田くんよりは断然安心でしょ?」

「…そうですね、わかりました」

「引き受けてくれるかしら?」

「えぇ、良いですよ」



がそう答えると、シナはにっこりと笑ってほっと息をついた



「良かったわ、他の子は夜目が利かないから困ってたのよ」

「私も…あまり自信は無いですけど」

「大丈夫よ、何か余程の事が無い限り、事務室に敵が入ってくる事はないはずだから」

「そうですね、それじゃぁ私はこれで失礼します」

「えぇ、じゃぁ今夜6時頃私の所へ来て頂戴ね」

「わかりました」



は小さく一礼すると、職員室を後にした



「あ、

「伊作…」



職員室を後にして、教室へ向かう途中、廊下で伊作とばったり出会う



「話は終わったの?」

「うん、一応ね」

「何だった?」



そう訪ねてくる伊作に、は一瞬考え込むと悪戯っぽく笑いながら告げた



「……内緒…かな」

「それって朝の仕返し?」



伊作が苦笑しながら聞くと、は笑いながら答える



「そうかもね」

「そっか、まぁ良いけど……あ、そろそろ授業始まっちゃうね」

「そうだね、それじゃぁね」

「うん、頑張ってね」

「伊作もね」



二人は片手を上げて挨拶を交わすと、お互い逆方向に位置する教室へ向かい歩いていった



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その日の昼食時の事

朝と同じく小平太や文次郎の5人は食堂でご飯を一緒に食べていた



「あ、そう言えば、引き受けたみたいだよ」

「やっぱりかー…、これって別に断っても構わないんでしょ?」

「嘘だと見抜ければ、の話だけどな」

は結構抜けてるからな、余程の事が無い限り先生達の嘘には気付かないだろ」

「そうだな……」



5人は一斉にため息を付く



「でも他の奴等も全然気付いてなかったっぽいよ?」

「まぁ気付いてたって気づいてなくたって、俺はどの道受けるけどな」

「私も…、一応実践は役に立つしね」

「私は断るつもりだったんだが…文次郎と組めと言われた…」

「い組は2人1組なのか…」

「全く…迷惑な奴だ」



仙蔵はそう言いながらちらりと文次郎を睨む

文次郎は反抗的に笑いながらおかずの玉子焼きを口に運んだ



「そういや来ないね?」

「そうだな…」

「きっと先生の所じゃないかな?」

「恐らくな、今日の事についてでも話してるんだろ」

「まぁ本命は3日後だけどな」



がやがやと騒がしくなって来た食堂で、5人はそんな事を話しながら昼飯をつつくのだった



- TO THE NEXT -



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全くもうどんだけ時間掛かってるんだよお前ってな感じですが、ようやくスタートしました!!

こちら15000を踏まれましたゆかりサマのリクエストで、

「六年生逆ハーで、ヒロインは学園生徒で、普段は絶対に怒らないけれど、五人の為だと怒るって感じの子」

と言う物です。

このリクエストをどれだけ殺さず話に盛り込めるか…、とりあえず終わりまで後もう少し、お付き合い下さいませ。

えぇ、きっと3話くらいになります_| ̄|○

第一話について補足説明をするなら、6年生男子5人衆は兎に角他の生徒とは違い優秀だと言う事です(何

もう特別扱いでレッツゴーですよ。

自分でもありえないくらいリアリティ無い話になりそうです

でもそんなのもたまには…ね!!

はい、それでは次回作まで今暫くお待ち下さいv



どうでも良いけど "じかいさく" が痔か伊作に変換されました。痔か、痔なのか伊作(伊作ファンの方に土下座)



'04/09/02




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こんなの書いたのスッカリ忘れてました。

若気の至りって怖い…。



再up日

'11/12/26