「夏だ!!」



小平太が叫ぶ



「長期休暇だ!!」



文次郎が叫ぶ



「と、言う訳で」



伊作が笑って人差し指を上げる



「「「「「、海に行こう!!」」」」」



仙蔵、長次も加わり、5人は一斉に期待に満ちた眼差しでに呼びかけた



「嫌」



まさに一刀両断

は冷めた目できっぱりと断りを告げる



「…あぁ、そう言うとは思っていたさ」



仙蔵は不敵に笑いながら軽く両手を挙げる



「…………」



いそいそと長次が何かを持ち出した



「?」



が不思議そうに長次の持って来た物を見る



「!!」



そして一目見るなり青ざめた



「あ、あんた達なんでこんな物っ!!」



が勢い良く指をさした物はの日記

どうしてそんな物が仙蔵達の手に渡っているのか

今はそんな事を考えている場合では無い、兎に角奪い返さねば

は早速長次に掴みかかるが、長次は伊作へ日記をパスする



「おっと、結構マメなんだね」

「ちょっと、伊作!!」



飛び掛るをひらり交わして小平太へ



「へぇ、日記なんか付けてるんだ」

「いい加減にしてよ!!」



豪快に笑いながら文次郎へ



「どれどれ、七月十四日…」

「よ、読まないでよ馬鹿ぁ!!!」



パラパラと日記を捲って読み始める文次郎

すっと後ろから仙蔵が日記を取り上げる



「さて、これを返して欲しいだろう?」



五人は一列に並んでを見ながら意地悪く微笑む

仙蔵は列の真ん中での日記を片手に持ちながら美しく微笑んだ



「私達と海に行ってくれるね?」

「……っ解ったわよ!!行けば良いんでしょ!行けば!!」



は半ば自棄になって叫んだ

すると五人の顔が嬉しそうにほころぶ



「やった!!それじゃぁ早速準備しないとな!!」

「待てよ小平太、一体何時行くんだ?」

「そう言えば予定決めてなかったよね」

「…………」

「明日辺りで良いんじゃないか?」



途端にばたばたと慌しく相談を始めた五人を前に、は海よりも深くため息をついた



「最悪……」



こうしてしっかりと五人に嵌められ、の海行きが決定したのであった



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「おっはよー!!」

「声がでかい」

「なんだよ、くの一目指してる癖に朝が苦手なのか?」

「うるさい体力馬鹿」

…、怒ってる?」

「別に」

「……眠いのか」

「眠いわよ」

「確かに少しばかり出発するのが早かったな」

「少しじゃないでしょ」



正門の前に集合した六人

小平太は大きなスイカとパラソルを持参

文次郎は至って軽装、と言うかほとんど持ち物が見当たらない

伊作は流石と言おうか何と言うか、救急箱をしっかりと手にしている

長次は大きめの袋を担いでいる

仙蔵は紅い日傘を肩にして、後は手ぶら



「まだ夜が明けたばっかじゃない…」



呆れた様に呟くの手には小さめの巾着が一つ



「小さい事は気にしない気にしない!!」

「早めに行けばその分いっぱい遊べるだろ」

「あまり遅くなると暑くて歩くのも大変だろうしね」

「…早い方が良い」

「まぁそう言う訳だ、そろそろ出発しよう」



小平太や文次郎に促され、はまた一つため息をついた



「もう何でも良いわ…」

「よっしゃ!それじゃぁしゅっぱーつ!!」



小平太の元気過ぎる声に、六人はぞろぞろと海へ向かって歩き出した



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「流石に誰もいないね」

「そりゃこれだけ早けりゃな」



伊作の言葉に文次郎が答えながら辺りを見回す

確かに周りには人気は全く無く、空気もまだ何処と無くひんやりしている

これから後数時間も立てば一気に暑さを増すのだろう



「海に着いたらまず最初は泳いでー、スイカ割りしてー…」

「小平太、まずは場所の確保が先だ」




うきうきとこれからの予定を考えて指折り数える小平太に、仙蔵は苦笑しながら言う



「ねぇ、長次のそのでっかい袋は何が入ってるの?」

「………」



の問いに長次は無言で仙蔵を指差した

どうやら仙蔵の分の荷物も一緒に入っているらしい



「あぁ…、持たされてるの、大変ね」

「別に構わない」

「長次優しいからね〜」



呆れた様なの言葉に長次は気まずそうに視線を逸らした



「大体仙蔵ってば一人だけ日傘さしちゃって…」

「何だ、入りたいならそう言えば良いのに」



突然仙蔵がくるりと後ろを向いてを見る



「地獄耳…」

「さ、こっちに来ると良い」

「え?ちょっと、別に私は…」

「おい、仙蔵お前何強引に引き込んでんだよ」

「抜け駆けは許さないよ」



の肩をぐいと引き寄せ傘の中に入れた仙蔵に、文次郎と伊作が詰め寄る



「お前等と一緒の傘になんぞ入りたくない」

「そりゃ俺達も一緒だっつーの!」

「そう言う事じゃなくて…」

、離れてろ…」



仙蔵に掴みかかる文次郎の後ろで苦笑いの伊作

長次は一触即発の二人からを遠ざける



「あ、塩の匂い!!」



突然小平太が声を上げる



「え?塩の匂いなんかする?」



小平太の言葉には辺りの匂いを嗅ぐ

それに習い、文次郎や伊作も鼻を動かす



「全然わからないんだけど」

「俺も」

「私も塩の匂いなんかわかんないわよ?」

「私もだ」

「………」



を含めた五人は小平太を見る



「え〜?何で皆わかんないのさ〜」

「……犬だな…」

「…犬だね…」

「犬以外の何者でもないよね…」

「流石は犬だ…」

「…犬か……」



不思議そうに首を傾げる小平太に、達はため息混じりに呟いた



「な、何だよ皆して犬って!!」

「犬だろ、どう考えても」

「普通の人間には塩の匂いが解る範囲まで近付いてないはずだよ、距離的にもね」

「小平太って本当に野生動物っぽいよね」

「まぁ動物の勘で生きてるしな、こいつ」

「…………」



言いたい放題の言葉の数々に、小平太は頬を膨らます



「何だよ、文次郎だって大分野生入ってるじゃん!!」

「あ!?何でそこで俺が出てくるんだよ」

「あぁ、でも確かに文次郎も野性的だよね、色々と」

「うん、色々とね」

「野蛮だしな」

「動物的だな」



矛先が文次郎へと変わる

小平太は楽しそうに笑いながら文次郎を指差した



「やーい野蛮人〜!!」

「んだとぉ!?」

「はいはい、二人ともそろそろ海に着くんだから、喧嘩なんかしてる場合じゃないだろ」

「伊作は今日もお母さん役ね」

「そうだな」

「……見えたぞ」



ふと長次が進行方向を指差す



五人が一斉に長次の指差す方を見ると、きらきらと光る水面がわずかに見えた



「海だ!!」

「おー、中々良い眺めだな」

「海なんて久々だからね」

「そっか、アンタ達は臨海学校5年生なのよね」

「あぁ、去年の丁度今頃だったな」

「くの一は6年時なのか」



そんな事を話しながら、六人は間もなく着く海を見つめて歩いた



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「着いたーーー!!!」

「おい小平太!!遊んでないでこれ刺すの手伝えよ!!」

「仙蔵、御座持って来た?」

「あぁ、長次の袋に入ってるぞ」

「…これだ」



五人は浜に着くなり適当な場所にパラソルを差し、御座を敷く



「随分と用意が良いのね」



が少し皮肉を込めて言うと、伊作がにっこりと笑った



「そりゃが一緒なんだし、これくらいは準備しないとに失礼だろ?」



実に爽やかに笑いながら言う伊作に、は思わず照れて視線を逸らす



「一緒って…、あんなのほとんど脅しじゃない」

「まぁそう言うな、今日は退屈させねぇからよ」

「そうそう、いっぱい遊ぼう!!」

「よし、パラソルも御座も完璧だ」

「小平太、スイカを冷やすぞ…」

「ほいほーい」



長次はスイカを抱えた小平太を連れて海の方へ行ってしまう



「まぁ……別に良いんだけどね、どうせこれが最後なんだし…」



は御座に座り込みながら小さく呟いた



「何か言ったか?」

「別に」

「あ、あいつらちゃっかり遊んでやがる!!」



突然文次郎が小平太と長次を指差す

見れば小平太が海に浸かりながらスイカを追いかけていた

長次は膝の辺りまで海に浸かったまま小平太を見ている



「文次郎、私達も行こう」

「おう、仙蔵とも行くぞ!!」

「え?ちょっと待ってよ私まだ着替えてない…」

「そんなの皆一緒だ、別に服のままでも良いだろ」



文次郎が少し先で早くしろと手を振る



「仕方無いなぁ…」



がそう呟いて顔を上げると、伊作と仙蔵がにこりと笑った



「早くしないとスイカが流されちゃうよ」

「小平太も流されそうだしな」



そう言いながら伊作と仙蔵はにそれぞれ片手を差し出す



「………わかったわよ」



はため息まじりにそう呟くと伊作と仙蔵の手を取った



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「おい長次!!見てないで助けろよー!!」

「何やってんだ小平太!!スイカ見失うだろ!!」

「あ〜ぁ〜…、本当に何やってんだか」

「おい、さっさとあの馬鹿を止めに行くぞ」



苦笑しながら文次郎と小平太とスイカのやり取りを見ていた伊作に仙蔵が声を掛ける



「はいはい、も行こう」

「あ、うん、ちょっと先行ってて」

「わかった」



伊作と仙蔵は揃って海の中に入っていった

一応上半身は何も着ていないが、流石に海の中に入るのに袴のままは辛そうだ

しかしそこら辺は流石と言うべきか、二人は何の抵抗もなくすいすいと泳いでいった



「長次は泳がないの?」

「荷物を…」

「あぁ、そっか…、でも大丈夫じゃない?どうせ人いないんだし」

「そうか」

「うん、あのままじゃスイカ流されちゃいそうだし…、行こ」



の誘いに応じて、長次もゆっくり海の中を進みだす



「あ、その前に私これ脱いじゃおう…」



は思い出した様に呟くと、上に着ていた着物を脱いで長襦袢のみになる

そして軽くその場で腕を回すと一気に海に飛び込んだ



「お、泳ぐの上手いなー」

「あ?」

「ほら、こっち来る」



小平太が指差す方を向くと、が伊作や長次と一緒に泳いでくる



「小平太!!スイカスイカ!!」



伊作が慌てたように声を上げる

小平太が振り返るとスイカの姿が無い



「うっわ、何処行った!?」

「ここだ、この馬鹿者」



突然小平太の後ろから仙蔵が顔を出した



「ぎゃぁ!?」

「ぎゃぁじゃない、全く…」



仙蔵は軽く小平太を睨む



「何々、スイカは無事だったの?」

「…………」

、長次」

「何処かの馬鹿のせいで危うく流されるとこだったけどな」

「馬鹿とは何だよ、馬鹿とは!!」



六人は水面にぷかぷかと浮かびながら話し続ける



「それにしても…、アンタ達良くその格好で泳げるわね」



が五人を指差して言う

五人の格好は着衣泳宜しく下に袴を履いたままだ



「まぁこれくらいはね」

「小平太なんか上も着たままじゃねぇか」

「あ、そう言えば脱ぐの忘れてた」

こそそんな長襦袢で動き辛くないのか?」

「割と平気、それより浜に戻らない?スイカそのままじゃまた流されそうだし」

「そうだな…」



の提案で五人はまた浜へと戻って行った



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「はぁ〜…疲れた!!」



は御座に座り込むと、水に浸かって重たくなった長襦袢を脱ぎ捨てた



「「「「「!!」」」」」



すると今まで各々好きな事をしていた五人が一斉にを見る



「おゎー…」

「中々だな…」

「うん…」

「ふむ…」

「………」

「な、何よ」



五人の視線に思わず後ずさる



スタイル良いね!!」

「どっ、何処見てんのよ馬鹿!」

「良いじゃねぇか減るもんじゃなし」

「文次郎が見ると減る!!」

「まぁそう恥ずかしがらなくても…」

「こんだけ凝視されりゃ恥ずかしいわよ!」

「私達だって上裸だぞ」

「アンタは男でしょうが!!」

「………………」

「長次…見てないで何とか言いなさいよ」

「スイカは…食べないのか……」

「「「「「あ」」」」」



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「文次郎もっと右!!」

「行き過ぎだよ、もうちょっと左!!」

「だぁー!!うっせぇ!わかんねぇよ!!」

「文次郎なら得意かと思ったんだけどね」

「いや、あいつは意外とこういうのは苦手だぞ」

「…そうだな」



長次の一言でやっとスイカを割る事にした六人

既に時間は三時頃となっていた

文次郎が割る役で、伊作と小平太がサポートに回っている

長次、仙蔵、はパラソルの下でのんびりその状況を眺めていた



「うぉりゃぁーー!!!!」



文次郎が狙いを定めて思いっきり棒を振り下ろした



ドスッ



鈍い音がする

スイカには傷一つついていない



「あははは、文次郎の下手糞ーー!!」

「うっせぇ!」

「でも良かった、あのままじゃスイカ木っ端微塵だよ?」

「じゃぁ今度はお前がやってみろ」



文次郎は伊作に棒を渡す



「んじゃぁいさっくん目隠ししてー」

「よっしゃ、回すぞ」



くるくるとその場に二、三度回され、伊作はよろよろとスイカに向かう



「今度は伊作の番かぁ…」

「あいつは割りと上手いぞ」

「……………」



パラソルの下で三人が見守る中、伊作は仙蔵の言葉通り、綺麗にスイカを割って見せた



「おー、いさっくん凄い!!」

「っち」

「それじゃぁ皆で食べようか」

「伊作ー!!スイカこっち持って来てーー!!」

「やれやれ、やっとスイカが食えるな」

「…あぁ」



六人はパラソルの下でスイカを食べ始める



「あ、塩持ってくるの忘れた!!」

「んなもんいらねぇだろ」

「え?スイカには塩だよ」

「塩…、私は滅多に掛けないけどなぁ?」

「塩を掛けると甘くなる…」

「塩ならあるぞ、長次の袋の中に入れておいた」



仙蔵はそう言ってごそごそと長次の袋を探ると、塩を一瓶取り出した



「流石ね…」

「当然だ」

「ほら、も文次郎も掛けてみなよ、美味しいよ」

「あ、私も私もー!!」

「なぁ、これ喰い終わったらどうする?」

「もう…日が暮れるぞ……」



何時の間にか時間は流れ、気付けば辺りは夕陽色に染まりつつある



「随分時間経つの早いのね」

「何処かの馬鹿がスイカ流したりしてたからな」

「し、仕方ないだろ!!」

「でも、そろそろやる事無くなったし、帰る?」



伊作の言葉に突如仙蔵が待ったを掛けた



「伊作、何を言ってるんだ?」

「え?」

「夏、海、スイカ、と来れば後一つ、重大なイベントを忘れている」

「「「「重要なイベント?」」」」

「まぁ良い、兎に角スイカを食べ切ろう、話しはそれからだ」



仙蔵は一人満足そうに頷くと再度スイカを食べ始めた

残された五人も仙蔵の言葉に従い、残りのスイカを片付け始めた



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「よし、こんなものか…」



すっかり綺麗になった身辺を見て満足そうに呟く

辺りはもう既に薄暗い

五人はスイカを食べ終わった後、仙蔵に言われるがまま帰りの仕度を済ませた



「何?結局帰るの?」



が訪ねると仙蔵は得意気に胸を張る



「まだ帰りはしない、最後のイベントはこれからだ」

「最後のイベントって…、さっきから何なの?」

「それは……これだ!!」



伊作の言葉に、仙蔵は長次の袋から宝禄火矢を取り出して高々と上げた



「宝禄火矢って…、お前海でも焼く気か」

「まさに火の海!!なんちゃって」

「花火…」



ぼそりと長次が呟くと、仙蔵は長次を指差した



「その通り、夏、海、スイカ、と来れば花火だろう!!」

「なるほど…」

「ねぇ仙蔵、その花火って仙蔵の手作りなの?」

「当たり前だ、昨日の夜こんな事もあろうかと仕込んでおいた」



用意周到な仙蔵を見つめながら、五人は感心するやら呆れるやらでため息をついた



「ねぇ仙ちゃん、これってどうやって使うの?」

「まぁそう焦るな、これは導火線に火を付けて上に投げれば爆発して花火になる仕掛けだ」

「なるほど、じゃぁ早速やってみようか」

「おい、火種あるか?」

「ここに…」



こうして五人が準備し始める

はその光景をぼんやりと見つめながら小さく微笑んだ



「よーっし!!準備おっけい!!」

「一斉に投げりゃ良いのか?」

も、はいこれ」

「あ、有難う…」

「準備は良いな?それじゃぁ行くぞ」

「……あぁ」



「「「「「「せーのっ!!」」」」」」



勢い良く空に投げた宝禄火矢は、派手な音と共に弾け、色取りどりの花を咲かせた



「うわー!!凄い凄い!!」

「結構本格的じゃねぇか」

「圧巻だな…」

「当たり前だ、私の作った物なんだからな」

「…………」

…?」



小平太や文次郎が喜びながら、次々に宝禄火矢を投げる中、は花火を見上げて静かに泣いていた

伊作がそれに気付いて声を掛けると、花火を見たままぽつりと呟く



「綺麗だね」

「うん…」

「これで…最後なんだなって思うと……ちょっと悲しいね…」

…」



何時の間にか仙蔵や長次もの涙に気付いたのか傍に来る



「私達は今年でもう卒業だからな……」

「でもさ、別に一生のお別れじゃないよ!!」

「そうそう、卒業したって会いたきゃ会える」

が望めば何時でも…」

「だから、泣かないで?」



を元気付けようと口々に告げる五人

その優しさが嬉しくて、更に溢れてしまった涙を一気に拭うとは微笑んだ



「ごめん、有難う皆…」

「気にするな、私達だって別れが辛いのは同じだ」

「でも、絶対また皆で遊べるって信じてるからさ」

「その前に卒業出来るかどうかが問題だろ」

「文次郎、それは言わないお約束だよ」

「…………」

「さて、そろそろ本当に片付けて帰らないとな、すっかり暗くなってしまった」

「もっと遊びたかったのになー」

「お前がスイカ流したりするから…」

「文次郎、根に持ちすぎ」

「ゴミはこれで全部か…」



先程のしっとりした雰囲気は何処へやら

いそいそと帰り支度を始めた五人の後姿に、は問い掛けた



「卒業しても忘れないで居てくれる?」



小さな声でそう訪ねたの方を振り返ると、五人は互い互いに顔を見合わせ笑いながら告げた



「「「「「当然!!」」」」」







その日の夜

五人からやっと返して貰った日記には

今日一日の出来事が溢れるほど書き込まれた

一番最後のページに、五人がそれぞれの言葉でに思いを告げている事

がそれに気付くのは、まだ少し先の話し…





- END -




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'04/07/27