「殿様誰?」



は皆が引いた割り箸の余りである自分の箸を見て、自分が殿様でない事を確認して訪ねる



「私じゃないな」

「私でもないよー」

「残念だが私でもない」

「俺も違う」



伊作、小平太、仙蔵、文次郎が各々口を揃える

そして5人は一斉に長次を見た



「…………」



長次は黙ったまま自分の箸を皆に見せた

そこにはしっかりと"トノ"と言う文字が刻まれている



「長次が殿様か」

「…………」



伊作の言葉にこくりと頷く長次



「長次が殿様になるのって珍しいね」

「そうなの?」



小平太の言葉には意外そうに聞き返す



「こいつ滅多に殿様引かないし、引いても大した命令出さねぇからな」

「まぁ長次だからな」



文次郎の説明に頷きながら仙蔵が言う



「「「「「さぁ長次、命令は?」」」」」



5人は長次に尋ねる

長次は暫く黙ったまま考えるとふいに口を開いた



「…2番が………」

「「「「「2番が?」」」」」

「………4番の膝に…」

「「「「「4番の膝に…?」」」」」

「乗る…」

「「「「「乗る……」」」」」



長次の言葉を反芻しながら5人は自分の割り箸を見る



「………私2番なんだけど…」



が呟く

その途端5人がそれぞれリアクションを見せる



「え"ぇ"!?私1番だよ!?」

「うそっ、私3番だ…4番誰!?」

「っく…私は5番だ……」



小平太、伊作、仙蔵は自分の番号が4番で無い事を確認して心底悔しがった後一斉に文次郎を見た

文次郎はにやりと笑いながら箸を3人に見せる



「悪いが俺が4番だ」



得意気に笑う文次郎に一斉に非難の声が上がる



「何でよりによって文次郎なんだよー!!長次の馬鹿ーー!!」

「あ、でも長次もそれとなくショックみたいだよ?」

「……文次郎…貴様におかしな真似をしたらこの場で吹っ飛ばすからな?」

「…………」



小平太はその場でじたばたと暴れて命令を下した長次にまでキレる

伊作は苦笑しながら小平太をなだめる

仙蔵は思いっきり睨みを利かせながら文次郎に釘を刺し

長次はまさかに当たるとは思わなかった様でさり気なくショックを受けていた

文次郎は一人楽しそうに笑いながら文句を言う4人を見ている



「まぁ殿様の命令は絶対だし、仕方ねぇよなぁ?」



そう言うとぼんやり5人のリアクションを見学していたをひょいと持ち上げると自分の膝の上へと下ろす



「ひゃぁ!?」

「おー、何だお前軽いなぁ」



驚くを自分の膝の上に乗せると後ろから抱き締める



「な、何だか凄い身の危険を感じるんだけど…」



はそう呟きながら長次に尋ねた



「これ…何時までこの状態なの?」



の質問に小平太が恨めしそうに文次郎を睨みつけながら答える



「原則が文次郎のどっちかが殿様になるまで…」

「えぇ!?そ、それじゃぁどっちもお殿様にならなかったらずっとこのまま!?」



が声を上げると仙蔵が首を横に振る



「いや、または次に殿様になった人奴がか文次郎に命令を下せば解除される」

「……どう言う事?」

「つまりね、が1番を引いたとして、殿様が1番に命令を下せばそっちが優先になるって事」

「あ、なるほど…」



伊作の説明に納得するとはちらりと後ろの文次郎を見る



「あ?何だ?」

「な、何でもないけど…あんまり変な所触らないでよね…」

「心配すんな、俺もまだ命は惜しい」



そんなと文次郎のやり取りを血の涙を流さんばかりの勢いで小平太、伊作、仙蔵が見守っていると長次が箸を差し出した



「あ、長次………、っそうだよね!!早く殿様になるかなんかして二人を引き剥がさなきゃ!!」



小平太はいち早く長次の考えに気付き後の4人に呼び掛ける



「さぁ皆引いて引いて!!」

「あ、うん」

「そうだな、文次郎が調子に乗る前に…」

「…行くぞ……」



こうしてまた6人は箸を引く



次の殿様は…



「あ、また私だ!!」



小平太が嬉しそうに今引いた箸を皆に見せる



「良いか小平太、どうせだからを文次郎から奪う様な命令にしろよ」




当たりを引いて喜ぶ小平太に仙蔵はこっそり耳打ちする




「え…、でもが何番引いたかなんてわからないし…」

「大丈夫だ、良い作戦がある…」



仙蔵は小平太に何事かを教え込む



「あ、なるほど…」

「小平太の元へ行くのは悔しいが文次郎よりはマシだろう」

「そっか、わかった!じゃぁ早速その方法でやってみるね」



不思議そうに小平太と仙蔵のやり取りを見つめている4人を尻目に2人は顔を見合わせて意気込む

そして小平太はにやりと笑うと命令を下し始めた



「当たった人は私の膝の上でお酌して貰おうかな」



小平太がそう言うと4人は驚いた様に小平太を見る



「お前…それで長次や俺が当たったらどうすんだよ…」

「それはそれで面白いと思うけどね」

「仙蔵…小平太に何教えたの……」

「…………」



文次郎やの言葉にもめげず小平太は番号を選び始める



「どうしようかなぁ……何番が良いかなぁ……」



わざとらしく腕を組みながら小平太は暫く考えると、ふと顔を上げた



「それじゃぁ1〜…」



小平太がそう口にした途端伊作の表情がぴくりと固まる

それを見た小平太は内心にやりと笑いながら言い換える



「やっぱりやめて2番〜……」



次は文次郎の顔が引きつる



「あ〜……やっぱり3番かなぁ…」



ふとを見るとは恥ずかしそうに小平太に微笑んだ

の表情を見て小平太は心の中でガッツポーズを取る



「決めた!!3番の人!!!」



自信満々にそう言い切る



「え…3番……?」



はそう言いながら端を見ると、文次郎の膝から降りる



「さぁ早く早く〜v」



小平太がにそう言うとは苦笑する



「……小平太…………もしかしてそう言う趣味?」

「え?」



見ればは文次郎の膝から降りたままその場に座り込んでいる

そしてその隣では文次郎が肩を震わせて俯いていた



「え…何?3番って……だよね?……え?え??」



小平太は額に大量の汗を浮かべながらと文次郎を交互に見た



「私…2番だよ?」



はそう言うと小平太に箸を見せた

小平太はその場で真っ白になり動かなくなる



「え…何で!?……だって………だって2番って行った時文次郎嫌な顔したじゃん!!!」



涙目になりながら必至で訴えると文次郎がゆっくり顔を上げた

その額には青筋が浮かんでいる



の箸が見えたんだよ、あの距離だったから!!つーか何でてめぇはそう言う下らない命令を平気でだなぁ!!!」

「何だよ文次郎の阿呆!!文次郎が余計な表情しなかったら今頃は私の膝の上だったのにー!!!」

「んな馬鹿みてぇな事考えてっからこんな事になるんだよ!!大体仙蔵の言う事素直に受けんなっつーの!!」



文次郎と小平太がまた喧嘩を始めてしまう

伊作は苦笑しながら遠巻きに2人を見つめる

長次はすっかり殿様ゲームに飽きて一人で酒を飲んでいる

は伊作の隣で御つまみをちょこちょこつまんでは2人を眺めて笑っている

仙蔵はと言えばそんな2人を見つめて後ろで大爆笑だった



「せ、せんちゃん酷い!!図ったな!?」



腹を抱える仙蔵に小平太が訴えると仙蔵は目尻の涙を人差し指ですくいながら言う



「いや、計算外だ……こんな面白い事態になるとは私も思わなかった……」

「何が面白いんだよ!!俺がこいつの膝に乗ってお酌って!!ふざけんなー!!!」



文次郎は大暴れ

小平太は泣きまくり

仙蔵は大爆笑



「伊作……あの3人って………」

「うん…お酒飲むといっつもこうなるんだよね……」

「伊作は酔わないの?」

「私はあんまり飲めないから……」



と伊作は酒のせいで壊れ始めた3人を見守りながら額に汗を浮かべた



「あ、そう言えば長次は……」



がふと長次の方を見る



「あ……」



長次は既に部屋の隅で丸くなり寝ていた



「長次は…寝ちゃう派かぁ……」

「文次郎は怒り上戸…小平太は泣き上戸で、仙蔵が笑い上戸…」

「伊作…大変だねぇ」

「もう慣れたけどね」



未だに3人は狭い部屋で大暴れしている



「仕方ないなぁ…」



はそう言ってゆっくり立ち上がると3人の元へ近付く



!!お前も何とか言ってやれよこいつらに!!」



文次郎は喚き散らしながら仙蔵と小平太を指差す



〜、せんちゃんに騙されたー!文次郎が膝の上なんて嫌だよー!!」



小平太は泣きながら訴える



「…………っ」



仙蔵は畳の上で必至に笑いを堪えている



はそんな3人を見て深くため息を付く



「3人共、ちょっと立って」



がそう言うと3人は大人しく立ち上がる



「はい、後ろ向いてー」



素直に後ろを向く3人

は3人が後ろを向くと右手を上げて素早く3人の首を打ち込む

3人はそのまま倒れてしまった



「これで良し、と」

…何したの?」



伊作が長次に布団を掛けながら驚いた様子で尋ねるとは振り返り微笑んだ



「酔っ払いは早く寝かせちゃった方が良いでしょ?」



そう言いながら押入れを開け3枚布団を引っ張り出してそれぞれの上に掛ける



「よいしょっと…」

「あ、手伝うよ」



こうして伊作とは2人ですっかり眠りこけている4人の世話と後片付けを済ませるのだった



「全く…毎回こんなんじゃ伊作は本当に大変だね」

「まぁね」

「でも…凄い楽しかったかも」

「そう?」



伊作が聞くとは幸せそうに微笑んだ



「こんなに大勢で騒いだの初めてだもん」



の嬉しそうな笑顔に伊作は釣られて微笑む



「また皆で騒ごうね」

「うん!!」



こうして今日の宴会は幕を閉じた

片付けが終わった2人は適当に雑魚寝の状態に散らばり灯りを消す



「そう言えば…」

「どうしたの?」



暗闇の中がぽつりと呟く



「私と伊作、一度も殿様になってないね」

「…私は今までに1回も殿様を引いた事無いよ……」

「流石は不運委員長」

「……………」



- END -



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何で結局伊作ネタで終わってるんだろうか。

とりあえず書きたい事書けたので良し!!

王様ゲームネタは結構前に他ジャンルのサイト様巡ってて思いついたもの。

室町時代だし殿様にしてみたのですが別に何の意味も無かったかも(笑

ていうか彼等15歳なんですよね

忘れがちです。

でもこの5人となら宴会したいわ……(ヲィ

因みに殿様ゲーム、ルールとかいい加減なのでこれを参考にしちゃいけませんよv(しないし



'04/06/22