「あ、遅かったね、もう始める所だったよ」

「ごめんね、中々部屋抜け出せなくて…」



笑いながらを招き入れる小平太

は遠慮がちに部屋に入ると襖を閉める



「うゎ…もう皆お酒飲んでるの?」



は部屋に入るなり既に半分出来上がっている5人を見て驚いた



が遅ぇから待ってる間にちょっとだけな」

「私は止めたんだけど聞かなくて…」

「そんな事言って、いさっくんだって結構呑んでるじゃん」

「さぁもここに座ると良い」

「…………」



文次郎はご機嫌でまた一口酒を口に含む

伊作はほんのり頬を染めながら困った様に笑う

小平太は笑いながら伊作の肩を叩く

仙蔵がに話し掛けると

長次がぽんぽんと畳を叩いてここに座れと合図した



「それじゃぁお邪魔してっと…」



は丁度仙蔵と長次の間にちょこんと座る



「じゃぁも来た事だし最初っからやり直すか」

「はい



文次郎がそう言って皆のコップに酒を注ぎ始める

が伊作から酒を受け取ると小平太が立ち上がって元気良く叫んだ



「そんじゃぁ早速…、かんぱーい!!」

「「「「「乾杯〜!!」」」」」



小平太の声に5人の声が続く



「あ……これ美味しい…」

は結構イケる口か」



乾杯の後が呟くと仙蔵が少し驚いたように訪ねた



「あ、うん…家が米屋だからね」

「何々?米屋だと何で酒に強いんだ?」



仙蔵との会話に小平太が割って入る



「秋に米を収穫した後、自家製で米からお酒造ったりするから、小さい頃から飲まされてたの」

「へぇ〜、それじゃぁ呑み慣れてるんだ?」

「うーん…そうでもないけど、まぁ人並みにはね」



が苦笑すると小平太はそうかと納得し、文次郎や長次に絡みに行ってしまった



「長次も結構お酒強いよね?」



は隣で黙々と呑み続ける長次の顔を覗き込みながら微笑む

長次はちらりとを見た後こくりと一つ頷いた



「仙蔵達っていつもこんな事してるの?」



賑やかな酒盛りを眺めつつは仙蔵に訪ねる

仙蔵はコップを口に当てつつ上を向いて少し考えた



「別にいつもと言うわけではないな……」

「そうなの?」

「あぁ、大体の場合何となくその時の気分で開いたり……だな」

「そっかぁ」



と仙蔵がそんな事を話していると小平太の悲鳴が聞こえた



「わーーー!!!痛い!!痛いってば文次郎!!はーなーせーーー!!」



何事かと思い声の方を振り返れば文次郎が小平太に何やら技を仕掛けている

そして伊作はそんな二人をおろおろと見つめながら文次郎をなだめている



「お前も忍者の端くれならこれくらいすり抜けて見せろ」

「無茶言うなよー!!文次郎の馬鹿忍者!」

「ふ、二人ともあんまり騒いだら怒られちゃうよ」



酒のせいかいつもよりハイテンションな文次郎や小平太を見て仙蔵はため息を付く



「全く……おい、もう少し静かにしないかそこの馬鹿二人」



仙蔵の一言に文次郎と小平太が反応を示す



「んだとぉ?」

「馬鹿なのは文次郎一人だ!」

「おいこら」

「だってそうだろー?私何も悪い事してないもん」



は雲行きの妖しくなってきた二人に苦笑しながら言う



「二人とも落ち着いてよ………あ、そうだ」



が突然何かを閃いたらしく手を打った



「どうしたの?」



伊作が訪ねるとはにっこり笑って提案をした



「何かゲームしない?5人でやって盛り上がれる感じの!」



の言葉に5人はそれぞれ顔を見合わせるとにやりと笑い一斉に答えた



「「「「「それなら殿様ゲームだな」」」」」



は珍しく意見の揃った5人に驚く



「殿様ゲーム……?」

「うん、はやった事ない?」

「うん…初めて聞いた……」

「それじゃぁ説明しながらやった方が良いね、長次、其処の割り箸取ってくれる?」



伊作の言葉に素直に従い長次は割り箸を3膳伊作に手渡す



「えっと……よし、これで良いかな」



伊作は懐から出した苦無で割り箸に印を付け始めた



「とりあえず座らないと」



仙蔵はそう言うと円になって座るよう呼掛ける

仙蔵の言葉に従い5人はそのまま円の形になる様移動した



「じゃぁ用意は良いね?」

「うん」



伊作はに確認すると6本ある割り箸をに差し出した



「この中から一本引いてみて」

「えっと………はい、引いたよ?」

「先の方に番号が書いてあるでしょ」

「うん、三って書いてあるけど…」



は伊作に今引いたばかりの割り箸を見せる

其処には苦無で掘られた数字が確かに三と刻まれていた



「で、この中には一つ殿様用の割り箸があって…」



伊作は残りの5本の割り箸の中から"トノ"と掘られた割り箸をに見せる



「これが殿様用、これを引いた人は皆に一つだけ命令を下す事が出来るんだ」

「へぇ……」



が感心した様に頷くと小平太が伊作の手から殿様用の箸を奪いに突きつけながら笑った



「でも、殿様が命令出来るのは名指しじゃなくて番号でなんだよ」

「番号で?」

「うん、だから私がこれを引いて、長次に踊れ〜とか、そう言う命令は駄目なんだ」

「例えば、2番を引いた物は今すぐ腕立て伏せ50回…とかだな、もちろんもっと過激な物もありだが……」



仙蔵はそう言いながらにやりと笑う



「ルールはそれだけ?」

「あぁ、一応な、まぁ後は殿様の命令は絶対って事だけだ」



文次郎も仙蔵同様口の端で笑いながら割り箸を小平太から奪うとひらひらと揺らした



「それじゃぁとりあえずやってみようか?」

「うん」



伊作の言葉には頷く

かくしてを交えた6人は殿様ゲームを開始したのだった



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「はい、じゃぁ引いてー」



伊作の言葉に5人は一斉に各々割り箸を掴む



「「「「「せーのっ!!」」」」」



掛け声と共に割り箸を引き抜き一斉に番号を確認する



「あ、殿様だ!!」



小平太が嬉しそうな声を上げた

その隣で文次郎が舌打ちをするが小平太は気にせず命令を考え始める



「えっとー…どうしようかなぁ……」

「言っておくが名指しは禁止だぞ」



浮かれる小平太に仙蔵が釘を刺す

どうやら絡みの命令を下そうとしている小平太の考えを読んでの事らしい



「わ、わかってるよ!そうだな……あ、じゃぁ〜…」



小平太は人差し指を高く掲げながら言い放った



「4番を引いた人は3回回ってワンって鳴いた後私をご主人様と呼ぶこと!」



小平太の命令に6人は自分の番号を確認する



「4番誰?」

「私じゃないよ」

「私でもない」

「俺も…違う…」



伊作が周りを見渡すとそこには一人俯いた文次郎



「あ…もしかして文次郎4番?」



が苦笑しながら訪ねると文次郎は顔を上げて小平太に怒鳴った



「何でお前はそうロクでもない命令下すんだ!?つーか犬はてめぇだろうが!!」

「うるさいなー、私は犬じゃないってば!それとももんじ、殿様に逆らう気?」

「文次郎、漢なら潔く鳴け」



仙蔵は意地悪な笑みを浮かべて文次郎を見た



「くっそぉ…」



文次郎は悔しそうに呟き立ち上がるとその場でくるくると3回転

そして心底嫌そうに"ワン"と言うと小平太をにらみつけた



「これで宜しいでしょうかご主人様?」



語尾に怒りマークを幾つもつけながら小平太に訪ねる

周りでは伊作や仙蔵が口元に手をやって必至に笑いを堪えていた



「あっははははっははは!!」

「うるせぇ笑うなアホ!!」



腹を抱えて笑う小平太の頭を小突く



「ったく…とっとと次行くぞ、次!」



文次郎は皆から割り箸をひったくるとがしゃがしゃとかき混ぜ差し出した



「あ、命令された人が割り箸持つ係になるの?」



文次郎には訪ねる



「あぁ、不公平じゃないようにな」

「へぇ…結構考えてあるんだねぇ」



こうしてまた5人が割り箸を引く



「あ、またただの数字だぁ…」



が残念そうに呟くと仙蔵が笑う



「それは残念だな」

「殿様引いたの誰かなぁ?」

「私だ」



を見てにこやかに笑いながら仙蔵は手を軽く挙げる

途端以外の全員の表情が凍りつく



「仙蔵か…」

「やだな…せんちゃんの命令えげつないんだもん……」

「お前…もいるんだし軽いモンにしとけよ?」

「……何を言っても無駄だろうけどな…」



不安そうな4人の言葉に仙蔵は笑いながら言う



「失礼な、私がそんな酷い事をした事があるか?」

「「「「ある」」」」



間髪居れずにつっこむ4人には思わず笑う



「随分信用されてないね」

「…そのようだな」



仙蔵はため息を一つ付くとにやりと口元に笑みを浮かべた



「では早速命令させて貰おうか」



5人に緊張が走る



「そうだな…2番と5番は腕相撲、負けた方はこのアルコール度数30度の太古酒を一気飲みして貰おうか…」



5人は自分の番号を慌てて確認する



「あ……私2番だ…」



が呟く



「あ、私5番だ」



に続き伊作が呟く

と伊作はお互い顔を見合わせて笑うと肩を落とした



「腕相撲って…負けるに決まってるじゃない……」

「うーん……腕力結構なかったっけ?」

「それでも男の子には敵わないよ…」



二人はどうしようかと悩んだ挙句、助けを求めるように仙蔵を見た

しかし仙蔵は実に爽やかに笑い言い放つ



「手加減小細工一切ナシだ、もし妙な真似をしたら二人で43度の芋焼酎に変更だからな」



はため息を付くと仕方なく伊作と手を組んだ



「勝負見えてるのにやる意味あるのかなぁ」

「まぁ……仙蔵には逆らえないよ…」



床に伏せて手を組む

長次が二人の手を上から押さえる



「………」



長次が二人の手から自分の手を離す

それを合図に二人は力を入れた



「………っ」

「………あ、結構強いね」



仙蔵が恐いので一応全力で伊作を倒そうと頑張る

伊作はの以外な力に驚きながら笑った



「まぁもくの一の端くれだし当然っちゃ当然だよな」

「やはり伊作の勝ちか」

「でもいさっくん私達の中で一番力弱いし…」

「…………」



周りでそんな事を話していると遂にの腕が倒された



「うぅ……やっぱり無理だった…」

「でも十分強かったけど…」

「そうだな、こちらも良い物を見せて貰った」



仙蔵が不敵に笑う

は何の事だか解らず聞き返す



「良い物?」



仙蔵はにこりと笑う



の一生懸命な顔、中々良かったぞ」

「!?」



の顔が一気に赤くなる



「あー!せんちゃん何口説きモードに入ってんの!?」

「おいこら仙蔵、抜け駆けすんな」

「私は事実を言ったまでだが?」

「………罰ゲームはどうするんだ……」



わいわいと騒ぎ立てる小平太、文次郎、仙蔵の3人をなだめるように長次が訪ねる

仙蔵は顔を赤らめながらも不安そうに自分を見るを見て微笑んだ



「当然呑んでもらう」



そう言うと最初の約束通り焼酎をコップに一杯ついでに手渡した



「量は少な目にしておいたからな」

「…あ、有難う…」



は仙蔵からコップを受け取り暫く焼酎を見つめるとやがて一気に飲み干した



「おー、良い呑みっぷり」

「流石だね…」

凄ーい」

「面白みに欠けるが…まぁ仕方ないか」

「…………」



はコップから口を離す



「………結構辛い…」

「そりゃぁな…そんだけ呑みゃ辛いだろ」

「大丈夫?気持ち悪くなったら言ってね」

「そうそう、いさっくん保健委員何だから心配ないよ」

「平気…だと思う……それより今度は私が割り箸持つ番だよね」



はふらふらと皆から割り箸を回収する



「はい、それじゃぁ皆引いて」



の言葉に従い5人は割り箸に手を伸ばした



「「「「「せーの!!」」」」」



- TO BE CONTINUED? -



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そんなこんなで結局6年生で書いてみました。

5人ものキャラを動かすのって割と大変かもしれないと今更後悔

所で殿様ゲームって言ってるけど現代の王様ゲームの事ですよ

さてさて、また思いつきで始めちゃった文章なのでオチとか全然決めてませんが…

まぁきっとどうにかなるでしょう^^;

今回はもうギャグって事で強引に終わらせる気満々です(笑



'04/06/19