「なーたーくっ!!ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」



太公望と那曹ェ出会って数週間

那曹ヘ修行の為に崑崙山に居た



「何ぼーっと立ってるの?修行は??」



は太乙の友達で、那曹フ修行の面倒見ている

今日は少し用があり遅れる為、那曹ノは先に修行を始める様指示をしてあった

やがて戻って来たは、本来修行中であるはずの那曹ェぼーっと立っている事を不思議に思い訪ねた

すると那曹ヘの質問にある方向を指差し答える



「壊れた」

「ん?……あら、これはまた派手に壊したね」



那曹フ指差す先には特訓用に太乙が作った宝貝が見るも無残な姿で転がっていた

は苦笑しながら特訓用宝貝の残骸を拾い上げる



「那窓ュくなったね」

「まだだ、俺はもっと強くなる」

「そっか…、じゃぁ早い所太乙にコレ直して貰わなきゃね」



はそう言いながら、那曹ノ笑い掛ける

那曹ヘ無言での手から残骸を取り上げた



「あ、持ってくれるの?」

「俺が壊した」

「律儀だね、殷氏さんの躾の賜物かな」



ぶっきら棒に答える那曹ノは優しく笑いながら那曹フ頭を撫でた



「それじゃぁ行こっか」

「ん…」



こうして二人は太乙の金光洞へと戻っていった



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「太乙ー」

「やぁ、おかえり二人共」



洞府へ戻ったと那曹ヘ太乙のラボまでやって来た

二人を出迎える太乙は相変わらず宝貝作りに余念が無い様だ



「今日は偉く早かったけど、どうしたんだい?」



予定より早く帰って来た二人に不思議そうに訪ねる太乙

那曹ニはそんな太乙を前に顔を見合わせた

そしてが控えめに切り出す



「実はね…これ……」



そう言って那曹指差す

那曹フ手には元特訓用宝貝が乗せられていた



「うわー…、こりゃまた派手にやったねぇ」

「あはは、私も太乙と同じ事言ったよ」

「……次はもっとでかくて強いのを作れ」



那曹フ手から見るも無残な姿に成り果てた元宝貝を受け取ると太乙はがっくりと肩を落とす



「作れって簡単に言うけどねぇ、大きければ大きい程時間が掛かるもんなんだよ?」

「良いから作れ」

「こらこら那早A太乙は他の宝貝製作だってあるんだから無理言っちゃ駄目でしょ」

「………」



相変わらず太乙に対しては容赦なく無茶を言う那曹セが、にたしなめられると大人しくなる



「まぁ良いや、可愛い弟子の為だからね、なるべく早く次の物を用意するよ」



そう言うと太乙は那曹ノ笑い掛けた

に世話を頼んでから、無闇に攻撃される事も少なくなり多少太乙との会話も普通にする様になった



「だってさ、良かったね、那早v

「……フン…」

「那早Aお礼は?」

「………」



が訪ねると那曹ヘ一瞬太乙を見たがすぐに視線を逸らしてしまう



「照れない照れない」

「照れてない」

「またまたぁ、実は有難うって言うのが恥ずかしいんでしょ?」



は笑いながら那曹フ頭をわしゃわしゃと撫でる

そんな光景を微笑ましく見つめながら、太乙はに話し掛けた



、とりあえず今日は二人で休んでてよ」

「あ、良いの?」

「うん、頑張っても多分出来上がるのは明日になっちゃうからね」

「私も何か手伝おっか?」

「え?あー…」



太乙は手伝いを申し出たの横に居る那曹ちらりと見る

那曹ニ目が合ったが、那曹フ目が"殺す"と言っている

とてもを那曹ゥら引き離せる状況じゃない事を悟った太乙は乾いた笑いを浮かべた



「い、いや…私は一人で大丈夫だから那曹ニ休んでてよ」

「そう? まぁ太乙が平気って言うなら…」

「うん、那曹フ事よろしく頼むよ」

「任せて〜、それじゃ行こ、那早v

「あぁ」



は那曹ノ声を掛けるとラボを後にした

那曹の後に続きラボを出るが、入り口で立ち止まり振り返ると太乙を呼び止めた



「おい」

「な、何?」



突然呼ばれ驚きながら返事をする太乙を那曹ヘ暫く睨む様に見ていたが、やがて小さな声で呟いた



「………………悪かった」

「へ?」

「…………」



小さいながらも確かに聞こえた言葉に太乙は思わず間抜けな声を出す

しかし那曹ヘそんな太乙の次の声も待たずラボを出て行ってしまった



「…今……那早c」



太乙は那曹フ出て行った扉を眺めて呆けている

今の言葉が果たして "宝貝を壊して" なのか "の申し出を断らせて" なのかは解らない



「那早c…大人になったなぁ…」



それでも普段の言動から考えると奇蹟に近い那曹フ言葉に太乙は思わず親馬鹿丸出しで呟くのだった



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「あれ、那痩スしてたの?」

「…別に」



一足先に居間へ戻ったは遅れて来た那曹ノ訪ねる

しかし那曹ヘ明確には答えず、ソファに腰掛けているの隣に座った



「ね、今日これからどうしよっか」

「…………」

「宝貝治るのは明日みたいだし、今日はまだまだ時間あるんだよねぇ」



は楽しそうに那曹ノ語り掛ける



「散歩でもしに行こうか」

「別に…、何でも良い」

「良し、そんじゃぁその辺ブラブラ散歩へレッツゴーだ!!」



はソファからいきおい良く立ち上がり那曹見下ろした

那曹の視線に流されるように立ち上がる



「何か楽しい事があると良いね」



そんな事を言いながらは背中に背負ったリュックの様な宝貝のスイッチを入れる



「おいしょっ」



エンジン音と共に空へ浮かぶ

このリュック型の宝貝ももちろん太乙の発明だ

那曹フ風火輪の応用Ver.らしい



「良い天気だし人間界まで降りてみるのも良いかもねー」

「…………」



無口な那曹ニ共に気ままな空の散歩を楽しみながらは那曹フ横に並んだ



「どうする?人間界降りて殷氏さんに会ってく?」

「……今はまだ…良い」

「そっか」



結局人間界へ降りる事は止め、那曹ニは仙人界にある小さな野原に行く事にした



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「到着!!」



二人がやって来たのは小さな林のある静かな野原

主に修行で疲れた仙人達が気晴らしでやって来る為の場所だ



「桃持ってきたの、木陰にでも座って食べよう」

「ん」



は芝生にぺたりと座り鞄から桃やお茶の入った水筒を取り出す

那曹の隣に座り込みが用意するのを見ている



「こうやってゆっくりするのも久々だねぇ」



は那曹ノお茶を手渡しながら上機嫌だ



「はぁ…」



お茶を一口飲み、ほっと一息つく

那曹烽ィ茶を飲みながら割りとくつろいでいるようだ



「ねぇ那早A本当に殷氏さんに会わなくて良かったの?」



ふとが那曹ノ訪ねる



「何故だ?」

「だってこっち来て結構経つし…、淋しいんじゃないかなって思ってさ」



持って来た桃に手を伸ばしながらは笑う

那曹ヘの返答に更に聞き返す



「淋しい…、母上がか?」

「ううん、那曹ェ」

「なっ…」



が悪戯っぽく微笑みながら言うと、那曹ヘ一瞬赤くなり、視線をから外した



「俺は一人でも平気だ」

「あらあら」


子供の様に意地を張る那曹ノは苦笑する

しかし、那曹ヘすぐに言葉を続けた



「それに」

「ん?」

「こっちにはお前が居るから別に淋しく無い」

「…………」



那曹ニしては至って真面目に答えたつもりだが、は驚いた様に那曹見つめた



「どうした?」

「あ、いや…、何か意外な言葉を聞いたから……ちょっと驚いちゃって」



不思議そうにを見る那曹ノ、はわざとらしく笑いながら頭を掻く

那曹ヘ無知で、純粋だ

だからたまにこういう恥ずかしい台詞を普通に言ってのける



「でも、嬉しいなぁ」

「何がだ?」



はそう言いながら小さく笑う

那曹ヘそんなの言葉が理解出来ず聞き返した



「那曹ェね、私が居るから淋しくないって言ってくれた事だよ」



恥ずかしそうに笑いながらは桃を一口齧る



「私は殷氏さんの変わりにはなれないけど…、那曹ノとって必要な存在になりたいもん」

「何故だ?」

「んー、私は那曹フ師匠じゃないけど…、でも那曹フ事私も好きだから」



にこにこと笑うの言葉を聞きながら、那曹ヘ何かを考えている様だった



「どしたの那早H」

「…………」



いつもと少しばかり様子が違う那曹不思議に思い、は首を傾げる

那曹ヘ暫く無言で何かを考えていた様だが、やがてぽつりぽつりと話し始めた



「…俺、母上が好きだ」

「うん、知ってる」

「強い奴も好きだ」

「それも知ってる」



は苦笑しながら相槌を打つ



「母上の好きと強い奴の好きは違う」

「そうだね、それは別の感情だよね」

「お前は母上じゃない」

「うん、違うよ?」

「でも、俺お前が好きだ」

「えーと…」



那曹フ言う"好き"と言う台詞には小首を傾げる



「それって私の事お母さんみたいに思ってるって事?」

「違う、は母上と似てるが同じじゃない」



那曹フ言葉には混乱するが、那綜ゥ身も良く解っていないようだ

口の中でぶつぶつと反芻しながら首を傾げている



は母上じゃないから母上の好きじゃない。強い奴の好きとも違う。だったらこの好きはなんだ?」

「な、何だって言われても…」



那曹フ質問には戸惑った

言われてみれば"好き"なんて言葉には多くの意味がある

人は知らず知らずのうちに理解しているけれど那曹ヘ知らない

肉親への好き、友達の好き、仲間の好き、そして異性に対する"好き"…

全てを那曹ェ理解しないと今那曹ェに対して発した"好き"の正体が解らない

は少し考えるとやがて口を開いた



「えっと…、好きにはね、いっぱい種類があるんだよ」

「種類?」

「うん…、那曹ェ殷氏さんを好きなのは肉親に対する好き」

「…肉親だとアイツも入るのか」

「あー…うん、一応李靖さんもそうだね」



一気に不機嫌そうになる那曹見ては小さく笑う



「次は仲間や友達に対する好き」

「友達…」

「うん、多分この先太公望と合流したら那曹ノもたくさん仲間が出来るよ」

「太公望は強いから好きだ、これは強い奴の好きじゃないのか?」

「えっと…、例えば、那曹ヘ四不象の事好き?」



が訪ねると那曹ヘ無言で頷く



「四不象は別に強く無いけど、でも好きでしょ? それが友達とか仲間に対する"好き"なんだよ」

「弱くても良い事が仲間の好きと言う事か?」

「そうだね、守ろうとしたり一緒に話をしたり行動を共にする相手が"仲間"。嫌いな人とは仲間にならないでしょ?」

「…そうか」



今まで他人を強弱のみで認識して来た那曹ノは、その認識がそもそもの間違いだと教える必要があったのだろう

そう思い説明したのだが、那曹ヘ今のの説明で何となくその事を理解したらしい



「次は那曹フ言う強い奴が好きってやつだけど、これは那曹フ中で戦うと楽しい、楽しい=好きって事かな」

「あぁ、強い奴と戦うのは楽しい」

「だろうね」



はそう言って微笑んだ



「それでね、那曹ェ言う私に対する"好き"なんだけど、今までのどれかに当てはまらないかな?」



那曹ノとっては"仲間"であり、"友達"であり、那曹謔"強い"人物なのだ

と言う事は、那曹フ言う"好き"が上記のいずれかに当てはまっていればそれで説明が付く

那曹ヘの問いに暫く考え込むと顔を上げた



「当てはまらない」



キッパリとした否定の言葉だった



「うーん…、それじゃぁ……その…困ったな」



那曹フ答えには幾分か顔を赤くしながら頭を掻く



「何が困ったなんだ」

「えぇと…、"好き"にはね、もう1つ凄く大事な意味があるんだよ」

「大事…?それは何だ」

「説明が難しいけど…、殷氏さんが李靖さんを好きなのと同じ好き、だよ」

「母上がアイツを?」

「うん」



は那曹ェ理解出来る様、言葉を選びながらぽつりぽつりと話し始めた



「この"好き"はね、仲間や肉親への好きとは違って、心が惹き付けられるって言うか…、

ずっと一緒に居たいって思ったり、とか…、好きで好きで、好きの気持ちがいっぱいになる事…かなぁ…」



は随分と恥ずかしい事を言っている自分に益々顔を赤くする



「上手く説明出来ないけど…、一番手放したくない人に対する"好き"を"愛してる"って言ったりするんだけど…」

「手放したくない事が愛してる事か」

「簡単に言えばそう…かな」



那曹フ問いに確信を持って答える事は出来ない

本来"愛"や"恋"や"好き"なんて感情は人に教えて貰う物じゃない



「うぅ…、説明してるこっちが訳わかんなくなって来たよ」



は肩を落としため息交じりに呟く

那曹ヘ暫く動きを止めていたが、ふいにの手を取った



「那早H」

「愛してる」

「へ?」



何の事だか解らず間抜けな声を出すの手を控えめに握ったまま、那曹ヘ変わらぬ顔で言う



「お前が居なくなるのは嫌だ。だから、俺はお前を愛してる」

「………なっ」

「使い方違うか?」

「…え、や……違わない、と…思うけど……」



余りに真っ直ぐな那曹フ視線から逃れられず、は半ば放心状態で答えた



「…………」

「…………」



はそれっきり何も言えなくなり黙りこんでしまったが、那曹燗ッじ様に黙り込む

それでもの手は繋ぎとめたまま



「那早v

「何だ」

「私も…、那曹フ事、好きだよ」

「…」



暫く続いた沈黙を破って、が小さな声で呟いた



「仲間とか…、そういうんじゃなくて、一番…好き、那曹フ事……」

「…………」

「…那早H」



やっとの想いでが答えたにも関わらず那曹ゥらの応答が無い

が俯いていた顔を上げると、わずかに頬を染めた那曹ニ目が合った



「那早c顔……赤い……」

「…………」

「もしかして…照れてる……?」

「…………」



声を掛けても、顔の前で手をヒラヒラ振ってみても一向に那曹ヘ動かない



「故障…?」



色々と難しい話をし過ぎて思考回路が壊れてしまったのだろうか

そう思っては那曹フ顔を覗き込んだその瞬間、の体は那曹フ両腕にしっかりと捉えられていた



「那早c?」

「………」



は抱き締められたまま那曹見上げるが那曹ヘ無言のまま口を開かない

しかしやはり顔を赤くしている那曹見ては小さく微笑み自分の腕を那曹フ背に回した



「大好きだよ、那早v

「…俺も……好きだ」



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「ただいまー」

「あ、、那曹ィかえり!!」



と那曹ェ洞府に帰ると太乙は仕事に一段落付いたのか一人でお茶を飲んでいる所だった

カップを片手に二人を出迎えた太乙はふと那曹フ様子がおかしい事に気付く



「あれ?何か那聡ュし変じゃないか?風邪?那曹ェウイルスに感染するはずは無いんだけど…」

「何でも無い」

「でもそれにしては何だか様子が…」

「煩い、殺す」



那曹フ顔を覗き込み頭を捻る太乙に那曹ヘ乾坤圏を向ける



「こらこら那早A心配してくれてるんだからそれは無いでしょ」



は那曹ノ苦笑しながら言うと、太乙ににっこりと笑い掛けた



「でも本当に那曹ヘ何でもないから、太乙も心配しないで良いよ」

「う、うん…、まぁがそう言うなら平気なんだろうけど…」

「それじゃ私は部屋戻るね〜」



そう言うとは部屋へ戻ってしまった

那曹ニ二人きりになってしまった太乙は椅子に座ったまま恐る恐る那曹見上げる



「えーと…、今日は楽しかったかい?」

「……………あぁ…」



暫くの沈黙の後、そう短く答えると那曹熾秤ョを出て行ってしまった

いつもなら"お前には関係無い"等と言うハズだが今日は嫌に素直だ

顔も何となく赤かった気がする

太乙はますます首を捻りながら那曹フ背を見送ったのだった



-END-



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初、那船reamでした。

何だかもう…那曹チてどうすれば"らしく"書けるのか全然解りません;

以外に表情豊かで口数は少ないけど喋る時はちゃんと喋ってますよね。

アニメじゃかなり雷震子との喧嘩シーンなんかで喋ってたし…。

てか漫画の方でも胸キュンしちゃう様な無邪気な所もありますよね…。

対李高覇戦でダミー太乙撃っちゃった時の那曹フ顔と、崑崙山2で李靖の玲瓏塔に囲まれてる時の表情が超ツボです★

あぁ…、それだけ、これだけ好きなのにちゃんとキャラ立てして書けない私…

未熟者でごめんよ那早Aこれからも試行錯誤して微妙な那曹世に生み出す私を許して_| ̄|○

と、まぁそんなこんなであまり自信を持って世に出せない那船reamでした。

もっと精進します…;



'06/02/24