『光の華が溢れる街 特別な日に変えて行く 誰かの為に急ぐ人が 行き交う窓の外』



夕方

今日の禁城は忙しい

普段静かな城内をバタバタと人が走り回っている



様、そろそろ時間です」

「解ってる、すぐ支度を済ませるからお前達は先に行きなさい」

「はい、では失礼致します」



を呼びに来たの部下は一礼すると部屋を後にした



「………」



本来今日は祝うべき日なのだがの表情は暗い



「張奎…」



はぽつりと呟くと首を左右に振り立ち上がる



「急がなきゃ…」



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「それではこれより婚姻の儀を行います」



が会場に着くと既に多くの人が集まり司祭の話に耳を傾けていた



「新郎、新婦の入場です」



司祭の声が厳かに響き、会場内は暗くなる

やがて何処からともなく聞こえて来る音楽と共に本日の主役が現れた



「妻、高蘭英は病める時も健やかなる時も夫、張奎を愛する事を誓いますか?」

「えぇ…、誓います」

「では夫、張奎は辞める時も健やかなる時も妻、高蘭英を愛する事を誓いますか?」

「はい、誓います」



式は順調に進んで行く



「指輪の交換を…」



やがて終盤に差し掛かり



「それでは誓いのキスを…」



式は大団円の内に終了した



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『彼女と話す時の貴方 初めて見せる甘い顔 乾杯しよう出会えた事 プレゼント無いけど』





、来てくれてたんだ」



張奎がパタパタとに走り寄る

披露宴も終わり、今は二次会と言う事で張奎や高蘭英の極親しい人達がそれぞれ勝手に楽しんでいる最中だ



「当たり前でしょ、同胞の結婚式なんだから」



走り寄って来る張奎には呆れた様に笑う



「へぇ…、アンタでも正装してると大人っぽくなるのね」

「何だよそれ、これでもより年上だぞ?」

「1歳だけでしょ」



頬を膨らます張奎には意地悪く笑う

と張奎は同じ師匠の下で修行した同胞

年も張奎が一つ上と言う事もあり、二人は修行時代は互いに支え合って来た

そんな親しい間柄なので、結婚式だろうとの口調が変わる訳も無い



「そういやに会うのも久々だよね」

「そうだっけ?」

「そうだよ、ここ数ヶ月は顔見てなかった」

「うーん…、聞仲様と一緒に色々周ってたからねぇ…」



は腕を組みながら思い出すように言う



「何、相変わらず暴れ回ってんの?」

「ちょっと、人聞き悪い事言わないでよね、ただの斬り込み隊長よ」

「いや、それを一般的には暴れまわってるって形容するんだよ」



と張奎は凡そ結婚式内での話とは思えない会話を続ける



「あなた」

「あ、高蘭英」



と張奎がたわいもない話をしていると、先程正式に張奎の妻になった高蘭英がやって来た



「あぁそうだ、高蘭英にはまだの事紹介してないよね」



張奎はそう言うとを手で示しながら高蘭英に説明を始めた



「これ僕の親友の、同じ師匠の下で修行してた同胞なんだ」

「初めまして、です」

「初めまして」



張奎の紹介でと高蘭英は互いに頭を下げる



「同胞って言うとかなり長い付き合いになるの?」

「うん、結構小さい時から一緒に居るし、もう腐れ縁だよな」



高蘭英の質問に張奎が笑いながら答えると、も張奎の意見に同意した



「そうかもね、まさか師匠から独立しても一緒だとは思わなかったし…」

さんも聞仲様の下で働いてらっしゃるの?」

「えぇ、でも私は戦闘専門だから、あまり城内には居ないんですけどね…」



高蘭英の質問に答えながら、は苦笑する



「でも驚いたなぁ…、張奎にこんな美人の奥さんが出来るなんて」



は高蘭英と張奎を見比べてため息混じりに呟く



「美人だなんて言われると照れるわね」

「いやいや、高蘭英は美人で自慢の妻だよ」

「あらやだ、あなたってば」

「本当に仲良いんですね…、流石は新婚さんだわ」



惚気る張奎と恥ずかしそうに微笑む高蘭英にが悪戯っぽく言うと、高蘭英は苦笑する



「ごめんなさいね、この人ったら式の最中緊張でガチガチだった癖に今じゃすっかり溶けちゃったみたいで…」

「べ、別に僕は緊張なんか…」

「してたでしょ?指輪はめる時、あなた手震えてたじゃない」

「うっ…」

「はーいはい、お二人共痴話喧嘩はその辺にして、折角だから乾杯しましょうよ」



何時までも終わりそうに無い二人の会話を遮り、は召使を呼びグラスを用意させる

そしてそれぞれ張奎と高蘭英に渡し、優しく微笑む



「張奎、高蘭英さん、結婚おめでとう」

「有難うさん」

「有難う



そしての言葉と共に三人のグラスが軽い音を立てた



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知らず



知らず



暖めた気持ち



こんな時に見つけても



隠す場所が



無いからそのまま



気付かぬ振りをした―…





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『掛け替えの無い友達だよ 誰より私祈るから 恥ずかしすぎて言えないけど 二人の幸せを』

『だけど だけど 貴方と私の 昔話 大げさに 彼女の知らない頃の貴方 得意気に話した』



「でも張奎に先越されるなんて悲しいなぁ…」

「何だよそれ」

「だって張奎ってばいっつも聞仲様聞仲様って言ってるだけってイメージ強かったし」

「そ、そんな事…」

「まぁ高蘭英さんしっかりしてそうだし、張奎が引っ張って行って貰う方かな〜?」

…、何か今日は一段と毒舌じゃないか?」



張奎はゲッソリとした顔で遠慮の無いに訪ねる

は一瞬動きを止めたが、次の瞬間にはいつもの様に豪快に笑っていた



「まぁホラ、お目出度い席でお目出度い言葉ばっかりってのも飽きるじゃない?」

「そう言う問題じゃないだろ」

「それに張奎と私の仲だもん、今更美辞麗句並べても仕方ないじゃない」

「それはまぁ…そうかも」



は自分でも驚く程楽しそうに張奎を説き伏せる

張奎もそんなの言葉に上手く丸め込まれてしまった



さんて…、こう言うと聞こえが悪いかもしれないけど男らしいのねぇ」



張奎とのやり取りを見ていた高蘭英がぽつりと呟く

張奎とはお互い顔を見合わせ高蘭英を見て笑った



「そりゃまぁ私は聞仲様率いる軍の斬り込み隊長ですから」



はそう言って笑う



「あら、こんなに華奢なのに斬り込み隊長なんて凄いのね」

「そうですか?」

「えぇ、何だか女のアタシでも素直に格好良いって思っちゃうわぁ」

「有難う御座います、でもそんな鬼の様に強いとか言う訳じゃないんですよ?」



苦笑しながらそう弁解するに張奎は横から口を挟む



「え?でも昔弟子の中で男差し置いて一番強かったじゃん、何かもう千切っては投げ千切っては投げ、みたいな」

「コラ張奎!!余計な事バラさなくて良いの!!」

「だって僕も戦闘じゃ一回もに勝てた事無かったしさぁ」

「でもその代わり私はアンタにデスクワークじゃ敵わないでしょ」

「それもそっか」

「うふふ、本当に仲が良いわね」

「そ、そんな事ないです!!」

〜、そんな力一杯否定しなくても良いじゃん…」



三人がそんな事を話していると、一人の部下が高蘭英の所へやって来た



「高蘭英様、お師匠様がお呼びです」

「あら、残念だけど行かなきゃ…」



呼びに来た部下に"すぐ行くわ"と伝え、高蘭英はに微笑む



さん、貴女みたいな人と知り合いになれて嬉しいわ…、これからも宜しくね?」

「こっちこそ高蘭英さんみたいな綺麗な人と仲良くなれて嬉しいです、張奎の事…お願いします」

「ふふ、任せて頂戴」



の言葉に笑みを浮かべ、高蘭英は張奎に話し掛ける



「それじゃちょっと行って来るわね」

「僕も行くべきかなぁ?」

「良いわよ、貴方は貴方で挨拶があるでしょ」

「そうだね、それじゃぁお師匠様に宜しく」

「えぇ」



張奎と短い会話を交わすと、高蘭英は去って行った


「すっかり夫婦の貫禄があるね」

「そうかな?」

「うん、張奎は尻に敷かれるタイプだね」



は悪戯っぽく笑う



「そ、そんな事無いぞ、ちゃんと亭主として威厳を持って…」

「はーいはい」



は張奎の言葉を流しながら向こう側の高蘭英を見つめて呟く



「それにしても素敵な人だね、張奎には勿体無いよ」

「何なんだよさっきから人を馬鹿にして…」

「あら、昔からこんな感じでしょ」

「そりゃそうだけどさぁ…」



張奎は膨れながらぶつぶつと呟く

はそんな様子を見て苦笑すると召使いが持ってきたグラスを二つ受け取った



「ほら張奎」

「ん」



受け取ったグラスを張奎にも渡し、は片手を差し出す



「結婚おめでとう」

「うん、有難う」



張奎は祝福の言葉に嬉しそうに笑う

はそんな張奎を見て微笑むとグラスの葡萄酒を飲み干した



「そう言えばアンタ他の人への挨拶は良いの?」



空になったグラスを置いたが尋ねる



「あぁ、そろそろ行かなきゃだな」

「そうね、私ばっか相手してる場合じゃないでしょ」



辺りを見回しながら答える張奎にが言うと、張奎は笑った



「良いんだよ、は大切な親友だから」

「…………」



張奎の笑顔をきょとんと見つめたままは動きを止める



?」

「え?あ、何?」

「…何か今一瞬意識飛んで無かった?」

「気のせいでしょ、それより早く行かなきゃでしょ」

「気のせいって…」

「気にしないでいーの、さっさと行かないと高蘭英さんに言いつけちゃうよ?」

「解ったよ、それじゃぁ後は適当に楽しんでって」

「うん、ご両親にも宜しくね」


こうしてに促され張奎は他の人に挨拶をしに去って行った

そして一人になったは空のグラスを再度持ち上げ呟いた



「……駄目だなぁ……私…」



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『恋の華よその蕾のまま 深く 深く 眠れ』





『恋の華よその蕾のまま 深く 深く 眠れ』





『恋の華よ目覚める時には 春が 春が 訪れる』





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『優しく 帰り道を照らす 月は 何かを 言いたげで』





「はぁ…、張奎幸せそうだったなぁ……」



はこっそり後にした会場を背にてくてくと一人で歩いている

ふと月を仰ぎ、幸せそうな張奎の顔を思い浮かべた



「…張奎……」





『お前も 一人 泣いているの? 強がりじゃ ないよね』





足を止めたの頬にきらきらと光る雫が伝う



「好き…だった……ずっと…ずっと…貴方が好きだった……」



両手で顔を覆いながら震える声で呟く

周りには誰も居ない

見ているのは夜空に浮かぶ月だけ

はそんな月を見上げて目を閉じ、小さく祈った





『強がりじゃないよね』





「張奎…今まで有難う……どうか…どうか幸せに………」





『輝いているのは―…』



-END-



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島谷ひとみの「Poinsettia」で、張奎Dreamでした!!

この曲を聞いた時これはもう張奎しか居ないと思いましたね。

何せ張奎には素敵な奥さんが居るからW

悲恋物って悲しいから普段あまり書かないけど、このDreamは割りと楽しく書けました。

でも言いたい事は歌詞が代弁してくれちゃってるからそれに文章付けるのは大変ですね。

歌詞Dreamの難しさを知りました^^;



'06/01/24