「ん…」 ぴくりとソールの身体が動き、眉間に皺が寄る 「………」 意識を取り戻したソールがゆっくりと目を開けると、そこには見覚えの無い真っ暗な空間が広がっていた ぼやける意識の中で上半身を起こし、未だに曖昧な意識を覚ます為にソールは目頭を押さえて座ったまま頭を軽く振る そして再度辺りを見回すが、何度見てもやはり見覚えの無い場所と言う事に変わりは無かった 「此処は…」 混乱したままの頭でどうにか理解出来たのは、かろうじて地面にだけは草木が生えており、道らしきものがあると言う事だけだった しかし、自分が今何処に居るのかと言う疑問は全く晴れない 一つ思い当たる事があるとすれば、医務室で聞いたホムンクルスの言葉だけだ 「…これが…"夢の中"とやらなんでしょうか」 思わず独り言を呟きながら、ソールはゆっくりと立ち上がり改めて辺りを見回した 真っ暗な空間は無限に広がっているように思えたが、先程確認した通り地面には道のような物がいくつか通っている ソールは少し考えた後で、とりあえずその場を離れこの不思議な空間を探索する事にした 「ん…?」 暫くの間宛ても無く歩いていると、ふと遠くの方に人影を見つけてソールは足を止めた 自分以外の気配が無かった空間に突如現れた人の姿に警戒しながら、そっと近付き様子を伺う そして自分に背を向けて座っているのが一人の少女である事を確認したソールは、驚かせない様に静かな足取りで少女に近付いた 「すみません、少し宜しいですか」 俯いて座っている少女の背中に向かってソールが声を掛けると、少女の身体が驚いた様にびくりと跳ねた そして恐る恐ると言った様子でゆっくりと振り返った少女の顔は、予想通り見覚えのあるものだった しかし、ソールを見上げる少女の目にはたった今まで泣いていたのか大粒の涙が溜まっている 「ど、どちら様…ですか…?」 急に現れたソールに警戒しているのか、少女は涙を浮かべたまま強張った表情で尋ねる 相手が泣いていると言う想定外の事にソールは一瞬言葉を詰まらせたものの、努めて冷静な口調で少女の問いに答えた 「私はソール・グラマンと言う者です」 「ソール、さん…?」 「はい。驚かしてしまったようで申し訳ありません」 「ぃ、いえ…」 「失礼ついでにもう一つ良いですか?」 「…?」 「昨日、此処でホムンクルスに会いませんでしたか?」 「ホムンクルス…?」 「えぇ。これくらいの、小さなふわふわした生き物なんですが…」 少女の疑問に対し、ソールは自分の膝辺りを示しながらホムンクルスについて説明する すると少女は納得したように頷いて、改めてソールに向かって首を縦に振った 「会いました。…昨日かどうかは解りませんが……」 「解らない?」 「はい…、此処には時計も無いですし、ずっと暗いままで時間の感覚が無くて…」 「なるほど…。しかしホムンクルスに会ったのであればやっぱり貴方がさんで間違い無いですね」 ソールが改めて少女の顔を見ながら呟くと、少女は戸惑った様に首を傾げた 「あの、どうして私の名前を…?と言うかソールさんはどうして此処に…」 「あぁ、すみません。まずは順を追って説明をした方が良さそうですね」 状況を把握出来ず疑問符を浮かべているを見下たソールは、ぽつりと呟くとの隣へ移動して腰を下ろした 「さて、何処から話しましょうか…」 何も知らない様子のに今の状況をどう説明すれば良いのか、ソールは暫く考え込んだ後でが空から降って来た所から話を始めた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ある日、突然支部前の広場にが現れた事 それをホムンクルスが見つけ、自分が呼ばれた事 呼び掛けても揺すっても起きる気配が無かった為ひとまず医務室へ運んだ事 その後も一向に目を覚ます気配が無かった為勝手ながら色々調べた所、コルセイトの人間では無いと言う事が解った事 それどころか200年以上も前の人間である可能性が出てきた事 ホムンクルスが夢の中でに会ったと言う証言を確かめる為、不本意ながら強制的に眠らされて此処に来た事… ソールはに対しそれらを解りやすく掻い摘んで説明した 「…と、まぁそんな訳です」 「私の身体が…200年後に…?」 はソールの説明を聞いたものの、今一つ実感が沸かないと言った表情を浮かべて呟く その様子から見てもが現状を理解していない事は一目瞭然であり、現在のコルセイトに現れたのもの意思と関係無い事は明白だった 「もし貴女が本当に200年以上前の人間だとして、何故コルセイトの人間で無い貴方が現在のコルセイトに現れたのか、 貴方の意思で無いならば誰が貴方をコルセイトに送ったのか、そもそも此処は何処なのか…。 色々謎が多いので少しでも状況を整理出来ればと思ったのですが…、その様子だと貴女に聞いても仕方無さそうですね」 溜息交じりに呟いたソールの言葉に、怒られていると思ったのかの肩がびくりと震える 「ぉ、お役に立てなくてすみません…」 「あぁいえ、別に貴女を責めている訳では…」 日頃から自身の言動が誤解されやすい事については自覚していたものの、ソールは改めて自身の言動を振り返る 「こちらこそ失礼しました。私は別に貴方に対して怒っている訳でも、ましてや怖がらせたい訳でも無いのですが…」 もし今此処で話しているのが自分では無くアウィンだったら、こんな誤解など与えずと上手く打ち解け話す事が出来たのだろう ソールは自身の不器用さを同期であるアウィンと比べ、その不甲斐なさに珍しく肩を落とした 「ぁ、あの…、ごめんなさい。私が勘違いしてしまっただけで、その…ソールさんは怖く無い、です。だから、えぇとその…」 落ち込んでしまったソールを見たは、慌てた様子でどうにかフォローしようとソールに声を掛ける ソールはそんなの行動をきょとんとした顔で見つめると、やがて苦笑を浮かべた 「お気遣い有難う御座います」 「ぇ?あの…」 「もう気にしていませんから、そんなに必死にフォローして頂かなくても結構ですよ」 「ぁ、はい……」 「では気を取り直して再度確認しますが…、貴女は自分が此処に来てからどれ程の時間が経過したか解らないんですよね?」 ソールの苦笑で多少は警戒と緊張が解けたのか、はソールの問いに素直に頷いて答える 「そう、ですね…。解らないです」 「では、ホムンクルスと私の他に此処で誰かに会った事はありますか?」 ソールの問いに、は今度は首を横に振る 「なるほど…。それではもう一つ、…答え難いかもしれませんが……」 「……?」 そう言い辛そうに前置きを入れるソールの言葉の続きをは小首を傾げて待つが、ソールは二の句を継ぐのを躊躇った 時間と言う概念が無く誰にも会う事の無いこの空間で、彼女は先程の様にずっと一人で泣いていたのだろう その事を考えれば、が此処に来た理由が簡単に話せる事では無いと言う事は想像するに容易かった しかし例えにとって話し難い事だったとしても、此処まで来たからには理由を聞かずに帰る訳にはいかない ソールは不安そうに自分を見つめているの目を真っ直ぐに見つめ返しながら、やがてゆっくりとした口調で問い掛けた 「貴女が、何故次元の狭間であるこの場所に来る事になったのか…、心当たりがあればそれを教えて下さい」 静かに、しかしハッキリと投げ掛けられた質問に、は一瞬目を見開き動きを止める 「ぇ……」 明らかに動揺した様子のは、何かを言おうと口を開くが言葉にはならず、 傷付いた表情を浮かべると自分の心臓を押さえつける様に両手を胸の上で握り締め視線を地面に落とした 「………」 「………」 俯いて黙り込んでしまったの言葉を待ちながら、ソールはじっと目の前のを見つめる 時折言葉を紡ごうと口を開いては噤むと言う事を繰り返しているの姿は酷く儚げで、今にも消えてしまうのでは無いかと思えた それでもソールは"言いたくなければ言わなくて良い"とは決して言わず、の口から真実が語られるのを待ち続けた 「……、…」 「………」 「………っ」 そして長い長い沈黙の末、は一言一言を搾り出す様にぽつりぽつりと語り始める 「……彼は…、中央の人、でした…」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ それは"良くある話"と言えばそれまでの、とても有り触れた出来事だった コルセイトの北にある今は忘れられた街 はその街の宿屋の一人娘だった ある日、その宿屋へある団体が泊まりに来る 彼らは中央から派遣された未踏遺跡の調査員で、数ヶ月の間調査の為に宿屋へと宿泊するとの事だった その調査班の中に居た二十歳の青年とは、歳が近かった事もあり互いを意識するようになるまで大して時間は掛からなかった 二人の交際は順調だったが未踏遺跡への調査は思ったように進まず、ある日唐突に調査打ち切りの通達が調査班に届く そして彼の所属する調査班は、中央からの指示でそのまま別の遺跡の調査へと送り込まれる事となった 「そしてあの日…、彼は更に北にある遺跡へ調査に出て……、そのまま帰って来る事はありませんでした…」 遺跡の崩落に巻き込まれ調査班が全滅したと聞かされたのは、彼が遺跡へと向かってから一週間後の事だった は握り締めていた両手を顔へと移し、溢れる涙を押さえながら項垂れる 「知らせを受けた時の事はあまり覚えていません…。ただ、泣いて泣いて衰弱するまで泣いて……、気付いたらこの場所に…」 「……なるほど…」 こうしてから語られた内容にソールは納得した様に呟いて一つ息を吐くと、小さく嗚咽を漏らすに声を掛けた 「辛い事を聞いてしまいすみませんでした」 「ど、して…ですか……」 「何がですか?」 「どうしてこんな所まで来て…、私の過去なんて……。ソールさんには、関係無いのに…」 「………」 そう弱々しく呟かれた"関係無い"と言う言葉には、多少の八つ当たりも込められていたのだろう 彼女の言う通りの過去や此処に来た経緯は、ソールには無関係と言えば無関係だった しかしの口から出た拒絶の様なその言葉に、何故かソールは微かな胸の痛みと共に苛立ちを覚え思わず言い返す 「確かに貴女の過去の出来事は私には関係ありません。ですが…、これからの事には少なくとも関係していると思っています」 「……これから…?」 「そうです。貴女の身体は今現在こちら側にあるんです。いつまでも医務室に寝かせておく訳には行きませんし目を覚まして貰わないと困ります」 「っそれなら…、外に運んで貰って構いません…」 「外に運んでどうするんです?野晒しにしておけとでも?」 「別にそれでも良いです…。だから…、だから私の事は放っておいて下さい……」 「放っておけないから此処に居るんですよ。ホムンクルスも他の人も、皆貴方を気に掛けています」 「………」 半ば自棄になっているを説き伏せるようにソールが淡々と言葉を返すと、は言葉を失くし黙り込んでしまった 「…貴女は、此処から出たいと思っていないんですか?」 再びの泣き声だけが響く中ソールが静かにに尋ねると、は俯いたまま微かに首を振る 「…解りません……。私には、どうしたら良いのか…解らないんです…」 そう弱々しく呟くと、は顔を上げて両手で涙を拭った 「此処がどんな場所なのか、どうして私が此処に来たのか…、どうやって来たのかも解りません…」 「………」 「でも、時々声が聞こえるんです…」 「声…?」 「はい…。微かになんですけど、"助けて" "寂しい"って…」 「………」 「誰の声かは解りません…。でも、もしそれが彼のものだったらと思うと……」 そんなの悲痛な言葉に、ソールはそれ以上何も聞けず両手を握り締めた が恋人の死に捕らわれている事は理解出来た しかし、いつまでもこんな真っ暗な場所で一人泣き続けている事が良い事だとは思えない やはりどうにかしてこの場所から出る方法を探した方が良いだろう 「…さん、」 ソールがその事をに伝えようと口を開いた瞬間 突然ソールの視界がぐにゃりと歪み、目の前の景色が一気に遠ざかって行った ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 再びソールが目を覚ました時、まず最初に視界に飛び込んで来たのは自分を取り囲む見慣れた面々だった 「あっ、ソールさん!!」 「良かった、ちゃんと目を覚ました…」 「あらあら、ロジーは心配性ですね」 「でも結構深ーく眠ってたみたいだし。私もちょっと心配しちゃいました」 エスカ、ロジー、クローネ、ニオがそれぞれソールを取り囲んでいる ソールが視線を動かしそれらを確認した後で上体を起こすと、そこは床の上では無くの寝ているベッドの隣のベッドの上だった 「あぁ…、一応運んでくれたんですね」 てっきり床に転がされたままだと思っていたソールが独り言のように呟くと、ロジーが苦笑する 「流石に放置はしておけませんよ」 「有難う御座います。お礼と言っては何ですが、先程一目散に逃げた事については今回は問わない事にします」 「す、すいません…」 「まぁそれはさておき…。私はどれ位眠っていたんですか?」 「えっと、3時間位です」 「3時間ですか…。随分寝てしまったんですね」 「まぁ失敗作とは言え曲がりなりにも対竜用の香だもんな…」 「でもエスカちゃん、その失敗した竜眠香まだまだたくさん持ってたよね」 「はい、まとめて作っておいたら便利かなーって思ったのでまだまだたくさんあります!!」 「そうやって横着していつもと違う事やろうとするから分量間違えたりするんだろ」 「ぅ……」 そんなロジーの手痛い突っ込みを受けたエスカは、話題を変えようとソールに話を振る 「そ、それでどうでしたかソールさん!!さんには会えましたか!?」 「えぇ、会えましたよ」 「本当ですか!?」 「はい。あちらでは時間の概念が無いらしく、ホムンクルスと会ったのが昨日だとは認識していませんでしたが」 「そうそう。向こうだとお腹も空かないし時間の流れが把握し難いんですよ」 ソールの説明に頷いて、ニオは付け加える様に言葉を続ける 「次元の狭間の中ではお腹が空く事もないし眠くもならないし歳もとらないし…」 「そう言えばニオも2年間位向こうに居たんだよな」 「はい。私の場合はまだ2年だったから良かったけど…」 「さんはもっとずっと長い間向こうに居るんですよね…」 ニオの言葉を聞いたエスカが独り言のように呟くと、ロジーがソールに向かって声を掛けた 「ソールさん、向こう側でのさんの様子はどうだったんですか?」 「様子ですか。私も大した事は話してないので何とも言えませんが…」 ソールはロジーの問いに答えながらベッドを降りると、とのやり取りを思い返し僅かに顔をしかめる しかしエスカ達がそんなソールの表情に変化に気付く前に、ソールはいつもの調子で淡々と夢の中での出来事を4人に話し始めた 「…と、まぁ私が聞けたのはこれくらいです」 「恋人の死を受け入れられなくて昏睡か…」 「今でもその人の事を想って泣き続けてるなんて辛過ぎます…」 ロジーとエスカがの境遇についてを口にする中、ニオは腕を組んで何かを考え込んでいるようだった 「ニオ どうかしたのですか?」 そんなニオにクローネが尋ねると、ニオは"もしかして"と切り出した 「さんが聞いた声って、私がたまに聞いてる声と同じかもしれないです」 「そう言えば…、ニオさんたまに声が聞こえるって言ってましたもんね」 「でもニオは前"女の子の声"って言ってなかったか?それが本当ならさんの恋人では無いよな…」 腕を組んで首を傾げるロジーの言葉に、ソールは軽く首を振る 「いえ、さんは"誰の声か解らない"と言ってました。解らないからこそあちらを離れるのが躊躇われるそうです」 「なるほど…」 ソールが説明すると、納得して頷くロジーの横でエスカが嬉しそうな声を上げた 「じゃぁ、ニオさんに聞こえている声とさんに聞こえている声の正体が同じだって解れば、さんは目を覚ますかもしれないんですね!!」 両手をぐっと握り元気良く意気込むエスカに、ソールとロジーは思わず顔を見合す 「いや、まぁ可能性としては0じゃないかもしれないけど…」 「そんな簡単に行く話では無いと思いますよ」 ロジーとソールが若干呆れた様子でエスカを諭すと、ニオがそれに反論するように口を開いた 「でも、コルセイトの人間じゃないさんの身体が此処に現れた事を考えるとやっぱりコルセイトには何かがあると思います」 「そうですよ。私達がスラグの墓所で聞いた声も、ニオさんとさんが聞いた声も、きっと関係あるはずです!!」 エスカはニオの意見に大きく頷くとソールに問いかける 「ソールさんはさんの事、助けてあげたいと思わないんですか?」 そんなエスカの問いに、ソールはベッドの上で静かに眠り続けるを見下ろして小さく息を吐いた 「いくら私達が助けたいと思っても、本人が望んでいなければ無駄でしかありません」 「でも…」 「確かに身体がこちらにある以上放置しておけませんが、さんはコルセイトの人間と言う訳でもありませんしそこまでする必要は無いのでは?」 ソールの口から淡々と吐かれる言葉は何処か刺々しく、エスカとロジーは首を傾げる 「あの、向こうでさんと何かあったんですか…?」 先程受けた説明はに会った事とが次元の狭間に来た経緯だけだったが、それ以外にも何かありそうなソールの様子にロジーは恐る恐る尋ねる するとソールは視線をからロジーに向けて無表情のままで答えた 「別に何もありません。ただ"無関係なんだから放っておいて欲しい"と言われただけです」 「………」 あくまでも表情は変えずに答えるソールの言葉に、ロジーはそれ以上突っ込む事が出来ず黙り込む 何となく誰もがそれ以上この話題を続ける事が気まずい雰囲気になる中、ふとクローネが口を開いた 「それなら、まずはさんを起こす方法だけでも 見つけたらどうでしょうか」 「クローネ、それってどう言う事?」 「起こす方法を見つけた上で さんに改めて本当に "次元の狭間" に ずっと居たいのか聞くのです」 エスカの問いに答えながら、クローネはソールを説得するように続ける 「もしかしたら 方法を探している間に さんも心変わりするかもしれませんよ」 「確かにいくら助けたいって言っても現状じゃ無理なんだし、まずは方法を探らないとか…」 「そうですよ!!今はその場に居たくても、声の事が解決して次元の狭間から出られるって解ったら出たくなるかもです!!」 「私もエスカちゃんの意見に賛成です。向こう側に居る間、いつもは平気でもお姉ちゃんに会った後は凄く寂しくて帰りたいって思ったし…」 クローネの意見にロジー、エスカ、ニオもそれぞれ頷いてソールに視線を送る 「………」 4人に一斉に決断を迫られたソールは、暫く黙り込んだ後で一つ溜息を吐き出して"全く…"と呟いた 「皆さんがそこまで言うなら私に止める権利はありませんし、その方向で良いんじゃないですか」 ソールは呆れた様にそんな言葉を吐き出すが、実の所ソール自身も乗り気な様子にエスカ達は顔を見合わせて微笑んだ 「あぁ、でもその前に…」 方針も決まりいよいよこれからと言う所で、ふいにソールが思い出したように声を上げる 4人が疑問符を浮かべてソールを見ると、ソールはエスカとロジーに向けて言葉を続けた 「エスカさんは先週の調査の報告書、ロジーさんは来月の予算の提案書の作成を済ませてから取り掛かって下さいね」 「あぅ…、忘れてました…」 「…俺もだ」 「私も今日は寝てしまった分も含め業務に専念しますので、この件は明日また改めて話し合う事にしましょう」 「解りました ニオ 私達も今日は戻りましょう」 「そうですね。それじゃぁエスカちゃん、ロジーさん、頑張ってね」 「頑張ります!!」 「あぁ、また明日な」 こうして時を越えた不思議な出会いの解明は明日に改める事となり、 ニオとクローネはリンゴ園へ ソール、エスカ、ロジーの3人もそれぞれ業務へと戻って行った -NEXT- |