ちゃ〜んvvv」

「っ嫌ぁ〜〜!!!!」



セブンブリッジ高校の野球部グランドの片隅で今日も繰り広げられる鬼ごっこ



「何で逃げるのよぅ、何も恐い事しないのに〜」

「な、中宮先輩が走って向かって来るのは充分心臓に悪いですってばぁ!!」



逃げるを追いかけながらセブンブリッジの名物こと中宮紅印は訪ねる

追いかけてくる紅印から必死に逃げながらは答える



「失礼しちゃうわね〜、私は可愛い後輩と親睦を深めようとしているだけなのに!!」

「だったら他のマネージャーの子と深めて下さいー!!」



逃げるはセブンブリッジ高校1年の野球部マネージャー

一方追いかける中宮紅印は同じ高校の3年で野球部キャッチャー



「嫌ぁよぉ、他の女の子は全然アタシの好みじゃないもの」

「こ、好みとか言って中宮先輩は男の人が好きって言ってたじゃないですかー!!」



は全力疾走しながら背後の紅印に問い掛ける

紅印は余裕な顔で必死に逃げるを楽しげに追いかけながら答える



「安心して良いわよ、実はアタシどっちでもOKなのww」

「安心出来ません!!迷惑です!!お願いですからその辺で適当な男の人と遊んでください〜!!!」



そんな傍から見ていれば気の毒と思いつつちょっと楽しそうな追いかけっこは今に始まった事では無い

が野球部にマネージャーとして所属したその日からずっと続いている

毎日毎日追いかけられては逃げて、追いかけては逃げられて、の繰り返し

紅印にとっては最近それが部活開始の前の日課になっているようだ



「あら、迷惑だなんて随分酷い事言うのね…、流石のアタシも傷付いちゃうわ…」



ふとの言葉を聞いて紅印は立ち止まり、俯いて顔を両手で覆った



「あ、ご…ごめんなさい……」



はそんな紅印の様子に慌てながら逃げるのを止め、紅印に近寄る



「その…大した悪気があった訳じゃなくてですね…」



が紅印の顔を覗き込みながらフォローになっていないフォローを入れる

すると突然紅印の両手がの両手を掴んだ



「っ!?」



は驚いて逃げようとするが握られた両手は動かない

紅印はゆっくり顔を上げるとににっこりと微笑んだ



「許してあげないv」



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「あ〜ぁ、とうとう紅印に捕まっちゃったのかぁ」

「剣菱助けてあげないのカ?」

「え〜、だって助けちゃったら俺が紅印に怒られるし〜」

「剣菱ハより己の保身を大事にするネ」

「びみょ〜に人聞き悪いなぁそれ」



グランドの一角でと紅印の思いかけっこを見学していた王と剣菱はのんびりと雑談を楽しんでいる



「は、離して下さい!!」

「もう、何でちゃんはアタシをそんなに嫌うのよ」


暴れながら紅印の腕から逃げようとする

しかし紅印はそれを許そうとはしない

半ば涙目になりながら離してくれと願うに紅印が訪ねると、は小さな声で答えた



「キライいとかじゃなくてですね…」

「嫌いじゃなくて…なぁに?」

「…イヤなんです……」



は何もかもを諦めたかの様にそう呟いた

紅印は自分の腕の中でがっくりと肩を落としているを見下ろしながらふと足を止めた



「アタシの何がイヤなのよ、アタシはただ可愛い後輩で遊んでるだけなのに〜」

「ですから…その遊びが……イヤなんですってば…」



はまるで走馬灯を思い返すように遠い目をした

そう、は紅印が嫌いとかではなく、捕まる度にされて来た事自体が恐怖なのだ



「髪の毛いじってお化粧して色んな洋服着せる事の何処がいけないのよ」

「私は中宮先輩の玩具じゃありませんし…お化粧にもお洒落にも興味無いんですから…」

「だって勿体無いじゃない!!こんなに可愛いのに貴女と来たら髪の毛は伸ばしっ放しだし目の下に隈なんか作っちゃって…」



紅印はを後ろから羽交い絞めにしたまま指での頬をなぞる



「〜〜〜〜っ!!」



は全身に鳥肌を立てているが紅印はそんな事気にせず続ける



「世の中には美しくなりたくてもなれない人がいっぱい居るのに貴方は何でそう自分に無頓着なのかしら」

「私は中宮先輩の様にはなれないし、なりたいとも思ってませんから〜…」

「だからアタシが変えてあげるって言ってるのよ」



紅印はさも当たり前の様にそう言い切ると、の耳元に唇を寄せた



「さぁ、今日はその一切お手入れされてない髪の毛をどうにかしましょうねv」



そんな事を言いながら意味も無く息を吹き掛けられ、はがっくりと肩を落とした



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「剣菱、紅印部室に言っちゃったケド良いのカ?」

「ん〜…、びみょ〜に良くないんだけど……どうしよっかなぁ…」

 奪取 紅印 激怒」

「だよねぇ…」



雀の言葉に剣菱は首を縦に振る



「俺びみょ〜に怒られるの嫌だし、今日は一人で投球練習しよ〜っと」

「朕もそろそろ練習するヨ、さぁ土本、一緒に行くネ」

「練習 開始」



すっかり取り残されてしまった4人は紅印を呼び戻すのを諦めそれぞれ練習を開始した



「中宮先輩…練習しなくて良いんですか……?」

「良いのよ、たまには自主練習した方が剣ちゃんの為だもの」



部室の窓から練習を開始した4人の姿を確認しながらが訪ねると、紅印は事も無し気に答える



「先輩…自分の都合で人を動かすの得意ですよね…」

「ふふ、褒め言葉として受け取って置くわ」



紅印はを椅子に座らせ、楽しそうにハサミや櫛を用意している



「………………」



一方は抵抗する事を諦め大人しく椅子に座っている



「さて、用意は出来たしサクサクっと始めちゃいましょうか」



紅印は白い布をの肩に掛けると腕をまくった

は返事の代わりにため息を1つ付く



「さ〜て、ちゃんにはどんな髪型が似合うかしらねぇ…」



紅印は座ったの後姿を見ながら腕組みをして考える



ちゃんはどんな髪型が好き?」

「…別に今のままで良いんですけど…」

「そりゃ今のままでも充分可愛いものね、でもこれじゃあまりにも普通だわ」



紅印はそう言いながらの髪の毛をサラリと撫でる

の髪の毛は極普通のロングヘア

髪の毛の色も一切染色していないので真っ黒だ



「真っ黒い髪の毛も似合う事は似合うんだけど…、これじゃぁちょっと重た過ぎるのよねぇ…」



紅印は何やらぶつぶつと呟いての髪の毛を弄ぶ



「良し、決めたわ」

「はい?」

「今日は止めましょう」

「本当ですか!?」



突拍子も無い紅印の中止宣言には思わず立ち上がる

そんなの嬉しそうな行動を見ながら紅印は微笑んだ



「本当よ」

「それじゃぁ私部活に戻りま」

「明日の昼頃うちにいらっしゃい」

「ぇえ!?」



紅印が道具を仕舞う中いそいそと部室から退出しようとしたの耳に入った言葉には動きを止める



「え…あの……中宮…先輩……?」



さび付いた機械音でも発しそうな仕草で何とか顔を紅印に向けると、は恐る恐る訪ねた



「冗談…ですよね?」



むしろ冗談であって欲しい

のそんな願いを打ち砕く様に紅印は笑顔で答えた



「ホ・ン・キv」



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「あれ、もう紅印から開放されたの?」

「あ…鳥居先輩……」



部室からフラフラと出てきたに剣菱が訪ねると、はげっそりとした顔で剣菱を見上げた



「私…中宮先輩に遊ばれてますよねぇ……」

「へ?」

「何で私ばっかりが標的に…」

「あの………?」

「私は何も…何も目立つ事してないのに…なんでよりによって中宮先輩に目付けられたんでしょう…」



は独り言を呟きながら剣菱を通り過ぎると、フラフラと他のマネージャー達の元へ歩いて行った



「あら剣ちゃん、何してるのそんな所に突っ立って」

「あぁいや…、なんかがびみょ〜に死んだ目してたから…」

「ふふふ、あの子ったら本当に面白いわねぇ」



この世の不幸を全て背負ったかの様なの後姿を見つめながら、紅印は上機嫌に呟いた



「なぁ紅印…」

「なぁに剣ちゃん?」

「お前…本気でちゃんの事好きなのか…?」

「えぇ本気よ、モチロン本気v」



剣菱の問いに何のためらいも無く答える紅印に、剣菱は汗を浮かべる



「だったら何であんなが嫌がる事するんだ?」

「え?だってあの子本気で嫌がってなんかいないもの」

「え〜…?」

「あら信じてないわね?」



紅印はクスクスと片手を口に当てながら笑う



「アタシはあの子の弱みを握ってる訳じゃ無いんだから、嫌なら断れるのよ、いつだって」

「そりゃそーかもしんないけど…、って上下関係に律儀だし…」

「アタシも最初そう思ったんだけど、あの子この前普通に他の先輩のお誘い断ってたのよ」

「びみょ〜に意外だね」

「でしょ?だからアタシはきっと嫌われてないのよ」

「でもだったら何であんなに全力で紅印から逃げるのかねぇ?」



ふと出た剣菱の疑問

これには紅印は小首を傾げた



「何でかしらねぇ?」

「びみょ〜に謎だね」

「そうね…、まぁ明日聞いてみれば良いわ」

「ん?明日は部活無いよ?」

「知ってるわよ、だからアタシの家にを呼んだの」



しれっとそう言い放つ紅印

剣菱は暫く紅印を無言で見つめた後、苦笑交じりに呟いた



も大変だなぁ…」



-TO THE NEXT STORY-



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自己満足の紅印姐様Dream第二弾!!

もう私の紅印姐様ラヴは留まる所を知りません。

何でこんなに好きなんだろう…_| ̄|○

決してカマキャラが好き!!って訳じゃないんですよ?

…多分メイクとか落とした時の男前な紅印姐様に惚れたんだなぁ…

オフィシャルでは真面目にホモ設定っぽいけど。・゜(ノД`

こんなんなら私も男になるー!!(末期


'05,08/10