「ねぇ絵理」

「んー?」

「実はね、私遊馬崎くんの事が好きなんだ」

「ぇ、うん。だからもう知ってるって。って言うか何これ?デジャブ?」



1月23日

とある晴れた日の事

いつも通り乙女ロードに集合した二人は遊馬崎が来るまでの間を何気ない雑談で潰していた

そんな中数ヶ月前と全く変わらない切り口で話し始めたに、狩沢は呆れながらも少し同情した面持ちで答える



「何、未だにゆまっちに本気にして貰えてない感じ?」

「うん。会う度に好きって伝えてるのに、遊馬崎くんてば"そうっすか"って超平然と流す…」



両手で顔を覆いながら、は深いため息と共に狩沢に愚痴る



「いやぁ、ゆまっちもある意味本当に頑固よねー…」



が遊馬崎に惚れ込んでいるのはもはや誰もが知る事実だ

そしてそんなのひたむきな愛を遊馬崎がのらりくらりとかわしている事も周知の事となっている

しかし実の所遊馬崎もを好いて居るのだが、それに気付いていないのは本人のみだった



「そしては本当に鈍いっつーかなんつーか…」



そんな二人のじれったい関係を一番間近で見ている狩沢は、とはまた違った意味でため息を吐く



「でもね、私気付いたのよ」

「気付いたって、何に?」



ばっと顔を上げるに狩沢が首を傾げながら尋ねると、は胸を張って得意げに答えて見せた



「やっぱりね、何でも無い平日に告白してもドラマチック感が足りないと言うか本気にし難いと思うの」

「つまり…、どゆこと?」



何が何だか解らないと言った表情の狩沢の首はもう一段階傾げられる



「つまり、遊馬崎くんの誕生日である1月23日の今日この日にプレゼントと共に想いの長けをぶつければ流石に遊馬崎くんも本気にすると思うの!!!!」



顔を覆っていた両手を仄かに赤く染まる頬に移動させながら、は一人盛り上がる

一方狩沢はそんなの高らかな宣言にはっと思い出したような顔で手を打った



「ぁそっか、今日って23日だっけ」

「ちょっ、絵理酷い。もしかして忘れてたの?」

「いやいや、もちろん覚えてたけど今日が23日って感覚が無かったんだよね」



両手を振って弁解した後、狩沢は腕を組んで難しい顔をする



「でもどうしよう、プレゼントは用意してたんだけど家に置いてきちゃった…」

「今から取りに行く?」

「んー…、それだと時間掛かるし、ゆまっちもう来ちゃうよねぇ」

「うーん…、まぁでも別にプレゼントって気持ちの問題だし、今日はおめでとうって言葉だけ掛けて物は今度でも良いんじゃない?」

「…にしては意外と冷静な意見ね」

「失礼だなぁ、私は遊馬崎くんの事を除けば至って普通の感覚の持ち主だよ」

「自覚あるんかい」



テンポ良く突っ込んだところで、狩沢はそう言えば、とに尋ねた



「ねぇねぇ、は何あげるの?」

「私?それはもちろん」

「"あ・た・し"って言うのは寒いから却下ね」

「ゎ、解ってるよぅ」



狩沢の牽制にぎくりと表情を見せた後、は鞄の中から両手に乗るサイズの箱を取り出した



「とりあえず、メインはこれ」

「何これ?」

「大容量HDD」

「うゎ、この子ガチだよ」

「いやだってもう遊馬崎くんの喜びそうな物なんて思い浮かぶ端から持ってそうな物ばっかりでさー」

「まぁ確かに私も悩んだけどね」

「そう言う絵理は何買ったの?」

「フィギュア用クリアスタンド20セット」

「うん、絵理も人の事言えないって…。それにしても遊馬崎くん遅いねぇ」

「ぁ、何かちょっと遅れるって。メール来てたの気付かなかったわ」

「ちょっとってどれ位?」

「残念ながら"ちょっと"としか書かれて無いから解んない」

「そっか。早く来ないかなー」



解り易くウキウキとした表情で遊馬崎を待つの横顔に、狩沢はふっと笑みを漏らす



「そう言えばさっきメインのプレゼントがHDDって言ってたけど、サブも何かあるの?」



先程が取り出したHDDを指差し尋ねる狩沢に、は満面の笑みで答える



「それはもちろん私!!」

「………ねぇ

「ん?」

「まさかとは思うけど、今日ゆまっちが此処に来た瞬間この場でそれ渡して告白しようとか思ってる?」

「ぇ?うん、そうだけど?」



狩沢の質問にきょとんとした表情で答えるに、狩沢は片手で顔を抑える



「駄目だって、それじゃ今までと何も変わらないでしょ。いつも通りスルーされて終わっちゃうよ!!」

「そうかなぁ?」

「そりゃそうよ。本当に実らせる気あるの?」



いつもの遊馬崎への態度も今回の告白方法も、捻ると言う事を知らないはある意味純粋だと狩沢は頭を抱える




「良し解った、こうなったら私が協力してあげる!!」

「へ?」

「良いから、騙されたと思って今日は私の言う通りに行動してみなさい」

「りょ、了解です」



狩沢の勢いに圧倒されたのか、はたじろぎながらも素直に頷いた



「良い?まず今日ゆまっちが来たら…」



こうして狩沢のアドバイスは遊馬崎が到着するぎりぎりまで続き、は懸命に狩沢のアドバイスを頭に入れたのだった



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「いやーおまたせしましたっす」



十数分後、ようやく二人の元に到着した遊馬崎がいつも通りの笑みを浮かべてやって来た



「もー、遅いよゆまっち」

「すいません、午前中受け取り予定だった荷物が遅れるとか言うんで待ってたんすよ」

「へー、何頼んだの?」

「アルター新作のフェギュアっす」

「あぁ、あそこのクオリティ高くて良いんだよねー」

「そうなんすよ、ちょっと値は張るけどその技術は確かっす!!」

そう狩沢に熱っぽく語る遊馬崎は、ふと狩沢の隣で黙り込んでいるに目を向けた

「どうしたんすか?今日は大人しいっすね」

「ぇ!?ぁ、あぁ、ごめん、ちょっと今頭の中いっぱいいっぱいで!!」



脳内が先程狩沢に受けたアドバイスでいっぱいだったは遊馬崎の声でようやく我に返る



「何か考え事っすか?」

「ぅ、ううん。何でもないの。っと、それより遊馬崎くん誕生日おめでとう!!」

「ぁ、ゆまっちおめでとー」

「あぁ、そう言えば今日って23日っすか。完全に忘れてたっす」

「実は私も今日が23日って忘れててね、プレゼント買ったは良いんだけど家に忘れて来ちゃったのよ」

「絵理も遊馬崎くんも会社員じゃないから曜日感覚とか曖昧になりがちだよね」

「確かに最近はアニメもHDDに取り溜めて一気に消化ってスタイルになってますしねぇ」

「そうそう。だからごめんねゆまっち、プレゼントは今度で良い?」

「もちろんっすよ、気持ちが嬉しいんで」

「でも代わりに今日はカラオケ奢っちゃうよ!!てな訳で早速行こ行こ」



狩沢は言うが早いか遊馬崎との背後に回り二人の背中を押した



「カラオケちょっと久しぶりかも、何処行く?」

「うーん、今日は平日だし混んでないだろうから普通にカラ館で良いんじゃない?」

「そだね、遊馬崎くんもそれで良い?」

「はいっす」



の問いに遊馬崎はいつもと変わらない様子で答える



「………」

「ん、どしたのゆまっち」



しかし何処となく違和感を覚えたような遊馬崎の様子に狩沢は尋ねるが、遊馬崎は小さく首を振ってはぐらかした



「いや…、何でもないっす。ところで今日は門田さん達とは合流しないんすか?」

「えっと、渡草っちは17時過ぎでドタチンは18時なら大丈夫だって連絡があったよ」

「さっき遊馬崎くんを待ってる間に、露西亜寿司も予約しておいたんだ」

「そうなんすか、そう言えば最近あんまり行ってなかったっすね」



そんな話をしながらカラ館に辿り着き、部屋に入り荷物を下ろした所でが二人に声を掛けた



「ちょっとお手洗い行って来るね」

「はいはーい」

「いってらっしゃいっす」



パタパタと小走りでが部屋を出ると、遊馬崎は狩沢に向かって問い掛けた



「狩沢さん、何か今日ちょっと変じゃないっすか?」

「そう?あぁ、でも普段ならゆまっちが来た瞬間に"遊馬崎くんおめでとう!!愛してる!!!!"位は言いそうだもんね」



遊馬崎の質問に対し狩沢は素知らぬ振りで答えて見せる



「そうなんすよ。今日はやけに大人しいと言うか余所余所しいと言うか…、兎に角何か変っす」

「まぁ毎回毎回スルーされてるんだし、流石のも学習して自粛したんじゃないの?」

「うーん…、に限ってそんな事無いと思うんすけどねぇ」

「おぉ、酷い言い草」

「良いんすよ、そんなとこが可愛いんすから」

「…ゆまっちってやっぱりの事ちゃんと好きなんだよねぇ」

「そりゃそうっすよ」



からかう様な狩沢の口調にも遊馬崎は全く動じずに素直に頷く



「そう言う癖に相変わらずの告白はスルーじゃない」

「スルーしたくてしてる訳じゃないんですけどねぇ」

「?」



狩沢が遊馬崎の言葉に疑問符を浮かべていると、その言葉の意味を聞く前にが戻って来てしまった



「何かお手洗い混んでたー」

「ぁ、おかえり」

「あれ?まだ歌ってなかったの?」

「あぁ、うん。ほら、渡す物あるでしょ?」

「ぇ?あ、そうそう。えっとね…」



狩沢の言葉では思い出したように自分の鞄を開け、遊馬崎は首を傾げる



「あの、さっき渡しそびれてたんだけど、これ…」



はそう言っておずおずと綺麗にラッピングされた箱を遊馬崎に差し出した

それを受け取り、遊馬崎は 更に首を傾げる



「これは?」

「誕生日プレゼント。色々考えた結果何か色気も何も無い物になっちゃったんだけど…」

「開けても良いっすか?」

「うん」



が頷いたのを確認し、受け取った箱の包みを開いて出てきた物を見て遊馬崎は目を輝かせる



「こっ、これは外付けHDD(2TB)じゃないっすか!!」

「うん…、どうかな?」

「ゆまっちさっきも撮り溜め派って言ってたし丁度良かったんじゃない?」

「いやぁもう感激っすよ!!でもこんな高い物大丈夫なんすか?」

「へ?遊馬崎くん値段知ってるの?」

「はいっす。丁度買おうと思って色々調べてて、しかも正にこれにしようかと思ってたんでドンピシャっすよ」



そう言って両手放しで喜ぶ遊馬崎に、はホッとした表情を浮かべる



「良かったぁ、もう買っちゃってたりもっと良いの持ってたりしたらどうしようかなってちょっとドキドキしてたんだ」

「いやいや、最近アニメ豊作っすからね、容量はいくらあっても足りない位っすよ」

「良かったねぇ

「うんっ」



は狩沢の言葉に心底嬉しそうに微笑むが、にこにことしたままその場を動かない

そんなを見て益々違和感を覚えたのか、遊馬崎は怪訝な顔をしてを見つめた



?」

「よし!!それじゃぁと私でゆまっちの為に歌います!!ほら、マイク持って!!」

「ぇっ、あ、あぁうん!!」



遊馬崎の視線にが固まっていると、すかさず狩沢がフォローするようにマイクをに手渡した

少しぎこちなかったも歌い始めると概ね普段通りのテンションに戻り、遊馬崎も特に気にしていない様で三人はやがていつもの様に盛り上がった



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「あれ?渡草っちもう着いたって」



数時間後、ふいに狩沢が携帯を手に遊馬崎とに向かって声を掛ける



「ホント?結構早かったね。どうしよっか、まだ門田さん来るまで時間あるしこっち呼んじゃう?」

「んー、そうねぇ…」



の提案に狩沢が考え込んでいると、再び狩沢の携帯が鳴った



「ん…?」



しかし電話の主は遊馬崎で、狩沢はきょとんとした顔で遊馬崎を見た後で何かを悟った様に席を立つ



「ごめん、私ちょっと電話ついでに渡草っち呼んで来るからちょっと待ってて貰える?」

「ぇ?うん、解ったよ、宜しくね」

「いってらっしゃいっす」



二人に送り出されて部屋を出た狩沢は、渡草の待つワゴンへと向かいながら、面白くなって来た、と楽しそうに笑った



「さてと…」



狩沢が部屋を出た後、遊馬崎は持っていたマイクを机に置きとの距離を詰めて座り直す



「…っ」



遊馬崎の突然の行動を不思議そうに眺めていたは、すぐ隣に座った遊馬崎との距離に思わず身を固くした

解りやすく硬直しているの顔を覗き込み、遊馬崎は静かに尋ねる



…、今日は一体どうしたんっすか?」

「ぇ?な、何が…?」

「隠そうとしたってバレバレっすよ?」

「ぅ…」

「いつもならもっとテンション高めに突撃して来るのに今日は全然大人しいじゃないっすか」



遊馬崎が尋ねると、は顔を赤くして遊馬崎から目を反らす



「そ、そうしたいのは山々なんだけど…、色々あってちょっとそう言うのは控えようかな…って」

「控える?何でっすか?」

「な、何でって、その…、遊馬崎くんにも迷惑みたいだし……」



後ろめたい気持ちになりながらも、は必死で言い訳をする様に伝える



「迷惑?そんな事誰が言ったんすか?」

「ぇと、誰にも言われて無いけど、遊馬崎くんいつも軽く流すから、迷惑なのかなって…」



そう呟くように答える間も、は遊馬崎と視線を合わせない

合わせないと言うよりは、遊馬崎が何故か少し怒っている様に見えたので合わせられないと言った方が正しかった



「………」

「…はぁ」



黙り込んでしまったを前に、遊馬崎はやがて大きくため息をついて肩を落とす



「ゆ、遊馬崎くん?」

「……は…」

「ぇ?」

は、普段あんなに好き好き言ってくる癖にこうして二人きりになった時には絶対そう言う事言わないじゃないっすか」

「……ぅ…」

が本気かどうかなんて、いつもの雰囲気からじゃ本気に取り難いっすよ」

「………」

「だから、がちゃんと面と向かって1対1で言ってくれるまでは黙っておこうって決めてたんっす」



少しだけ悔しそうな顔でため息混じりに告げる



「だって、二人の時は…恥ずかしくて……」

「…まぁそれだけ意識してるって事だと思うとそれはそれで可愛らしくて良いんすけどね」



そう言うと、遊馬崎はの両手を取って悔しそうだった表情から一変してにこりと笑った



「ゅ、遊馬崎…くん?」

「そう言う訳なんで、此処まで来たらちゃんと聞かせて下さいっす」

「っ、ぅ…ぇっと、えーっと…」

「どうしたんっすか?やっぱりいつもの告白はお遊びなんすか?嘘なんすか?」

「ちっ、違うよ!!遊びじゃないし嘘なんかじゃないよ!!好きだもん、大好きだもん!!毎日遊馬崎くんの事考えてるし
会う度に本当に苦しくてテンション上がって頭の中ぐちゃぐちゃになる位好きだもん!!!!」



遊馬崎に捕まれたままの両手をぐっと握り、は半ば自棄になって叫ぶ様に告げる

そんな必死なの姿に遊馬崎は満足そうに頷くと、そのままの腕を引いてを抱き締めた



「いやぁ、こんなにも盲目的に愛されるのは嬉しいもんっすねぇ」



感慨深げに呟いて、遊馬崎はしっかりと抱き締めたの肩に顔を埋める



「ふぇっ、ちょ…ゆま…!?」

「俺もが好きっすよ。ずっとこうして抱き締めたいと思ってたっす」

「嘘!?」

「嘘じゃないっす。むしろ気付いてないの位っすよ?その証拠に狩沢さんも渡草さんも戻って来ないじゃないっすか」

「ぇ?ぁ…、確かに戻って来てないけど……。で、でもそれじゃぁ何で今までスルーしてたの!?遊馬崎くんから言ってくれたって良かったのに…!!」

「残念ながらそれには山より高く海より深ーい理由があってですね…」

「理由…?」



抗議する様に尋ねられたの言葉に、遊馬崎は顔を上げると深刻そうな表情でを見つめる

真剣な遊馬崎の面持ちにがごくりと息を呑むと、遊馬崎は次の瞬間にへらりと笑った



「毎回スルーされてがっくり来てるの顔が可愛かったんでちょっと苛めたくなっちゃったんっすよ」

「なっ…」



さらりと言ってのける遊馬崎の発言には驚きながらも可愛いと言う発言に更に顔を赤くする



「本当に気付いて無かったんすか?」

「…気付いてたらあんなに猛アタックしないよ……」

「それもそうっすよね」

「うぅ〜…、両想いのはずなのにずっと空回ってたとか馬鹿みたいだ…」



自分以外の人間は遊馬崎の気持ちを知っていたと聞き、はがくりと肩を落とし嘆く

遊馬崎は項垂れたの頭を撫でながら、まぁまぁと話し掛けた



「良いじゃないっすか、俺はのそんなちょっと抜けててお馬鹿な所が可愛くて好きなんっすから」

「…そうなの?」

「そうっすよ」

「……それならまぁ…良い、のかな?」



抜けているだのお馬鹿だのと、どちらかと言えば良い意味には聞こえない台詞だが好きと言う言葉に流されては少し照れた様子で考える

その様子を眺めながら、遊馬崎は微笑んだ



「さて、あんまり待たせちゃ悪いしそろそろ行きますかね」

「そっか、そうだよね。絵理と渡草さん待ちくたびれてるかも…」

「ぁ、でもその前に」

「ん?」



いそいそと鞄などを手にして退出の準備を始めるを呼び止めた遊馬崎の顔が、一瞬だけに近付いた



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「狩沢さん渡草さんお待たせしたっす」

「よぉ、おめでとさん」

「ありがとっす」

「おかえりー!!どうだった?どうだった?って言うかあれ?は?」



二人の待つワゴンへとやって来た遊馬崎に狩沢は目を輝かせて詰め寄るが、の姿が見えない事に首を傾げる



「それが部屋を出ようとしたらちょっとクールダウンしてからじゃないと動けないとか言って猛ダッシュでトイレに逃げて行ったっす」

「いや、それ滅茶苦茶動けてるじゃねぇか」

「いやいやそんな事より結局何がどうなったの!?告白したの!?されたの!?」

「したし、されたっす」

「きゃぁぁぁぁぁ!!そ、それで!?返事は!?もちろんOKだよね!?ね!?!?」



狩沢は遊馬崎の返答に前のめりな勢いでぐいぐいと質問攻めにする



「あぁ、お前等やっとくっついたのかよ」

「はいっす。まぁ以外の人にとったら今更っすよね」

「ホントだよー、特に私なんて毎っ回の愚痴とか惚気とか聞いてずっとじれったいなぁって思ってたんだからね!!」

「それはお騒がせしたっす」



頬を膨らませる狩沢に遊馬崎が苦笑していると、ふらふらとした足取りでがワゴンへと戻って来た



!!良かったねぇ、おめでと!!!!」

「絵理…、有難う〜、私もう幸せすぎてホントに死ぬかと…」

「あはは、死ぬなんてそんな大袈裟な」

「大袈裟じゃ無いもん…。でもこれも全部絵理のアドバイスのお陰だよー」



狩沢の手を取りぶんぶんと上下に振るのそんな台詞に、遊馬崎は疑問符を浮かべる



「アドバイス、って何すか?」

「あぁ、えっとね、今日一日いつものテンションは封印して大人しくしてなさいって言ったの私なのよ」

「はい?」

「そしたらゆまっちの事だから多分の様子がいつもと違う事が気になって、何かしら言ってくるかなーって思って」

「………」

「まさかこんなに上手く行くとは思って無かったけど、ずっとさっさとくっついちゃえって思ってたからようやくスッキリしたわー」

「…狩沢さんには敵わないっす……」



狩沢は笑いながらそう説明すると、驚いている遊馬崎と幸せそうなに向かって可愛らしくウインクして見せる

遊馬崎はまんまと嵌められた事にがっくりと肩を落としながら肩手で顔を覆った



「まぁ何はともあれハッピーバースデーゆまっち!!」

「遊馬崎くんおめでとー」

「今日は誕生日とくっついたのでダブルでめでたいな」

「有難いような悔しいような…」



にこやかに祝福する三人を前に遊馬崎は盛大にため息を付くと、ふと思い出したように顔を上げた



「ところで門田さんは?」

「「「ぁ…」」」





- END -