とある金曜日の夜
静雄の携帯に新羅から一通のメールが届いた
"話したい事があるから明日うちに来れないかな?"
特に予定も無いので承諾の旨返信すると、すぐに新羅からの返信が送られて来る
"あぁそうそう。明日は君一人で来てね"
そんな新羅からのメールに静雄は怪訝な顔をするも、一応短く"解った"と一言だけを返す
静雄が新羅とそんなやり取りをしている横で、今度はの携帯がメールの着信を告げる
メールの送り主はセルティで、明日暇なら一緒に出掛けないかとのお誘いだった
「静雄さん、セルティさんからお誘いがあったんですけど行っても良いですか…?」
が静雄に尋ねると、静雄は頷きながら自分も明日は新羅に呼ばれた事を伝えた
恐らくは新羅がセルティにを連れ出すよう頼んだのだろう
そこまでするなんて、余程に知られては不味い話なのだろうか
そんな事を考えていると、難しい顔していたのを気にしたのかが首を傾げて静雄の顔を覗き込んだ
「静雄さんどうかしました?」
「いや…。明日は何処に行くんだ?」
「ぇっと、セルティさんのバイクで横浜の方に連れて行ってくれるみたいです」
メールを読み返しながら答えて、は嬉しそうに笑う
「横浜?」
「はい。この間中華街に行ってみたいって話をしたので、多分それでだと思います」
「そうか、まぁ気をつけてな」
行きたい所があるなら自分に言えばいくらでも連れて行くのに、とは思うものの
自分以外との交流を持つ事もにとっては大切な事だろうと静雄は自分に言い聞かせる
「静雄さんは横浜に行った事はありますか?」
「あー…、何度か行ったけどほとんど通り過ぎる程度だったような…」
「それじゃぁ、今度一緒に行った時は私が静雄さんを案内出来るように道とか色々覚えて来ますね」
静雄の言葉を受けて無邪気にそんな事を言って見せるが余りにも可愛らしく、静雄は思わず押し黙る
「…静雄さん?」
「あぁ悪い。…そうだな、道案内楽しみにしてるわ」
再度心配そうに声を掛けられ、慌てながらも冷静を装って答えるとは自分の両手をぎゅっと握って意気込んでみせた
「はいっ、任せて下さい」
「……、じゃぁそろそろ寝るか…」
「そうですね。ぁ、これ片付けて来ちゃいますね」
そう言ってが今まで使用していたテーブルの上のコップを二つ持ってキッチンへと消えると、静雄は片手で顔を抑えて深い溜め息をついた
「…………」
心を落ち着ける為に煙草に火を付けてゆっくりと煙を吐き出すと、ふいに以前新羅に言われた言葉を思い出した
"君の中であの子はちゃんと一人の女性で、そんな彼女が君は好きなんだ"
あの時はそんなハズは無いと言う気持ちの方が多く、正直半分は無自覚だった
しかしあれから数ヶ月が経った今では、そんな曖昧だった気持ちは確信へと変わっていた
が好きだ
この気持ちはその昔、近所のパン屋のお姉さんに抱いた恋心以上にハッキリとした物だと静雄は感じていた
小学生の頃から比べればもう随分と大人になったのだから、その頃の淡い気持ちと今の気持ちが同じ訳が無い
あの頃の気持ちは憧れの意味の方が強かったし、だからこそ今でも良い想い出として自分の中に残っているのだろう
しかし今自分の中にあるへの気持ちはその頃のそれとは違い、綺麗な感情ばかりでは無かった
を守りたいと思う気持ちの底には、誰にも触れさせたくないと思う醜い嫉妬の感情がある
暴力が嫌いだと言う割にを泣かせる奴は容赦なく叩き潰せる自信があったし、を楽しませたり笑わせるのは自分だけで良いとすら思う
普段自分の怒りすらまともにコントロール出来ないのに、それ以外の感情も制御しなければいけないのは正直辛かった
それでも、これまでは何とか今まで通りに過ごせていた
ただ最近では、先程のようにが無自覚に可愛らしい事を言った時に思わず抑えきれなくなりそうな自分に自己嫌悪する事が増えたような気がする
「洗って来ましたよ〜」
「おぅ、ありがとな」
「いえいえ」
が戻って来たところで、静雄は煙草を揉み消して立ち上がる
そしてそのまま就寝準備に勤しむの姿を見下ろしていると、ふいにが顔を上げて視線が合った
出来ればそのまま身体を引き寄せてその小さな身体を抱き締めてしまいたい
いつも通り接しているつもりなのについついそんな願望が頭を過ぎり、静雄は我に返る
「っと…、今日はどっちがどっちだ?」
「今日は私がソファの日ですよ」
「そうか」
「はい、静雄さんはベッドですからね。動かしたら駄目ですよ?」
「解ってるって。あの日以来ちゃんと約束守ってるだろ?」
1日置きにベッドで寝ると言うルールで再度約束を交わしたあの日以来、静雄はの言う通り寝ている間に勝手に入れ替わる事はしなくなった
理由はが怒ったのももちろんだったが、新羅に余計な一言を吹き込まれたからと言うのが一番の理由だ
一緒の布団になんて寝たら、理性でもって制御した所でキレやすい自分の事だ、何をしでかすか解ったものでは無い
「そうですよね、静雄さんがベッドでちゃんと休んでくれて嬉しいです」
「…………」
にこにことそう言って笑うの姿に毎度の事ながらツボを突かれ、静雄は無言での頭をくしゃりと撫でる
は恥ずかしそうに笑いながらも気持ち良さそうに目を細めた
「それじゃぁおやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
電気を消して布団に潜り込み、煩いままの自分の心臓を落ち着けるように静雄はゆっくりと息を吐き出した
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「やぁいらっしゃい、待ってたよ」
次の日
約束通りに家を訪ねた静雄を新羅が迎える
「わざわざ連れ出してまで話したい事って何だよ?」
「まぁまぁ、折角の休みを邪魔したのは悪かったけどそんなに怒らないでよ」
やや不機嫌さが滲み出ている静雄を宥めてソファに座らせると、新羅は机の上の書類を静雄に手渡した
「実はこの間ちゃんを診察した時のカルテをちょっと整理してたんだけどね、重大な事に気が付いたんだ」
「重大…?」
「うん。このカルテは君がちゃんを拾って来た日のものなんだけど、これを見て何か気付く事はないかい?」
新羅に言われて静雄は手渡されたカルテを眺めるが、何が何だか解らない
「俺がこんなもん読める訳ないだろ」
「違う違う。内容じゃなくて、此処だよ、此処」
カルテを突き返そうとする静雄に、新羅がそう言って指差したのは日付の部分だった
「ほら、日付がさ」
「ん?あぁ…、もうそんな経つんだな」
新羅の指差した日付は丁度半年程前のものだった
「で、これが何だよ?」
「何って、記念日じゃないか」
「…はぁ?」
当たり前の様に胸を張る新羅を、静雄は理解出来ないと言った表情で見つめる
「だから、明日の日曜日は、君がちゃんと出会って丁度半年の記念日だろ?」
「お前…1年ならともかく半年で記念日って……」
休日に人をわざわざ呼び付けた理由としてはあまり納得行くものでは無かったらしく、
静雄が呆れたように呟くと新羅は"解ってないなぁ"と逆に呆れ顔で呟いて首を振った
「君達が極普通の出会い方をした普通のカップルなら出会って半年なんて記念でも何でもないかもしれない」
「………」
「でもちゃんの場合は紆余曲折が色々あった上で、ようやく此処最近は平穏無事に過ごせるようになった訳だよね?」
「あぁ…」
「ここら辺で記念日をお祝いしておけば、ちゃんだって今後も静雄の家に居て良いんだって思えるんじゃないかな」
にっこりと笑って問い掛ける新羅の得意げな顔を見ながら、静雄は首を捻る
「そんなもんか?」
「そんなもんだとも。本当はついでに愛の告白もしちゃえば良いと思うけど、それはまだ無理かな?」
「…っ……」
「わー、静雄ギブギブ!!ごめんなさい!!僕が悪かった!!!!だから大菱形骨を掴むのはやめて下さい!!!!」
余計な一言により静雄に手を掴まれた新羅が慌てて叫ぶと、静雄は新羅の手を解放して舌打ちをした
「ぃ、一生物を掴めなくなる所だった…」
「次余計な事言ったらぶち折るからな」
「で、でもさ。真面目な話、さっきの反応を見る限り静雄はもう自分の気持ちを自覚したって事だよね?」
「………」
「何て言うか、僕もずっとセルティに片思い状態で一緒に暮らしてたから良く解るけど…、かなりキツくないかい?精神的に」
静雄の此処最近の悩みをずばりと言い当てながら、新羅は腕を組む
「別に普段はそうでも無いんだけどさ、ふとした瞬間に我慢出来なくなりそうになったりとかするよね」
「…………あぁ…」
「僕の場合なんてそれが20年もだよ…。でも静雄の場合ちゃんも現時点で君の事が大好きなんだから我慢しなくて良いと思うんだけどねぇ」
「は?」
「ん?」
「………」
「………」
何気なく呟いた新羅の言葉に、静雄の動きが止まる
そんな静雄に合わせて新羅も動きを止めて首を傾げると、恐る恐ると言った感じでゆっくりと尋ねた
「ぇ、まさか君…、気付いてないの…?」
「何がだよ」
「いや、だから、ちゃんは静雄の事が好きって…」
「…まぁ、嫌われては居ないだろうけどよ」
「いやいやいやいや!!嫌われて無いとかそう言うレベルじゃないからね!?ちゃん君の事好きだから!!ラブだから!!」
思いも寄らない静雄の言動に、新羅は思わず立ち上がり静雄に詰め寄る
「なっ…」
「いや、顔赤らめるとか今更過ぎて意味不明だよ!?て言うかまさか本当に気付いて無いとは思わなかった…」
新羅は立ち上がったまま、今度こそ本当に呆れた顔で静雄を見下ろし溜め息をついた
静雄はそんな新羅の前で驚いたような顔のまま固まっている
「あのさ、前も言ったと思うんだけど、ちゃんは君と一緒の布団で寝ても良いとすら考えてるんだよ?」
「あれは別にそう言う意味じゃ無いだろ…」
「そう言う意図が無かったとしても無意識下ではそう言う事なんだよ。しかもこの間なんてデートしたんでしょ?」
「……別にそう言う訳じゃ」
「いや、違うとは言わせないよ?休日に二人きりで動物園に行ってデートじゃなければ何なのさ」
「それは…、が行ってみたいっつーから……」
「うん、だからそれを世間一般では"デート"って言うんだよ。街中で100人に聞いたら130人がそう答えるよ」
そう力強く説き伏せる新羅に、静雄は珍しく突っ込む事も出来ず新羅の暴走を眺めていた
「良し解った、ちょっと今から買い物に行こう」
「何をだよ?」
「そりゃもちろん記念日に相応しいプレゼントだよ。さぁほら立って立って!!」
新羅はそう言うが早いか珍しく白衣を脱ぎ捨て、やや強引に静雄の腕を引いて外へと繰り出した
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新羅が静雄を引きずって外出したその頃
とセルティはちょうど横浜に到着した所だった
「さぁ着いたぞ」
セルティがそう言ってバイクを止めたのは人通りの少ない路地裏で、バイクを降りた二人は大通りに向かった
やがてランドマークタワー付近に来ると、はきょろきょろと辺りを見渡した後セルティに話し掛ける
「池袋と違って何だか広いですね。風もちょっと強いです」
「確かに、池袋と比べるとビルも人も少ないかもね」
「ぁ、セルティさん船ですよ!!あれ?でも川なのに船?」
「、此処は川じゃなくて海だよ」
橋の上から見える海を見つめて首を傾げるにセルティは笑いながら教える
「そうなんですか、それじゃぁこの水はしょっぱいんですね?」
生まれて初めて見る海が珍しいのか、は小学生の様な質問をセルティに投げ掛ける
セルティはそんなを微笑ましく思いながらも、質問に明確な回答は出来ない為一緒に首を傾げた
「多分ね。まぁ私は確かめられないから正確な事は解らないけど…」
「ぁ、ごめんなさい変な事聞いて…」
「気にしなくて良い。そうだ、夏になったら新羅や静雄も誘って4人で海に行こうか」
「本当ですか?楽しみです!!」
首の無いセルティにとんだ質問をしてしまったとしゅんとするにセルティが提案すると、は嬉しそうに笑った
「それじゃぁとりあえず中華街の方に行こう」
「はぁい」
こうして、二人は再び中華街方面へと歩き出した
色々な話をしながら暫くして辿り着いた中華街の入り口で、は大きな門を見上げて感嘆の声を上げる
「此処が中華街…!!」
目をキラキラとさせながら辺りを見渡すの様子を見て、セルティは思わず小さく肩を震わせる
「(可愛い…)」
「此処は池袋のサンシャイン通りと同じ位人がたくさんですね」
「そうだね、迷子にならないように気をつけるんだよ」
「大丈夫ですよ、任せてください」
「でもこの間静雄と動物園に行った時ははぐれたんだよね?」
「な、何でそれを…」
セルティが少し意地悪く指摘すると、は慌てた顔でセルティを見上げた
「静雄から聞いた」
「うぅ…」
首は無いものの、確実に悪戯な表情を浮かべているだろうセルティを見ながらは顔を赤らめる
「まぁ迷子になる位夢中だったって事かな」
「はい…、動物が皆可愛くてついつい…。携帯があって助かりました」
「合流した後にまた迷子になったりしなかった?」
「はい、一回はぐれた後は静雄さんが手を繋いでくれたので大丈夫でした」
セルティの質問に嬉しそうに笑って答えるの横を歩きながら、セルティは驚いたように一瞬動きを止める
「静雄が…手を……?」
「はい。平日だったんですけど結構家族連れが多かったので…。何か変ですか?」
「いや、ちょっと驚いただけだよ。でも相当楽しいデートだったんだね」
「そ、そんな、デートだなんて…」
セルティの言葉には再び慌てて首を左右に振るが、そんなを見てセルティは無い首を傾げる
「いやいや、手を繋いで動物園を回るなんてデート以外の何物でも無いぞ」
「そうなんですか?」
「もちろん、街中で100人に聞いたら130人がそう答えるよ」
セルティが大きく頷きながら力強く言い切ると、は恥ずかしそうに両頬を押さえながらも嬉しそうに笑った後でふと足を止めた
「ぁ、セルティさん、パンダですよ!!」
足を止めたのはお土産屋さんで、マスコットの大きなパンダのぬいぐるみを見つけたが指を差す
「ホントだ。凄い大きいな、本物みたいだ」
「ゎ、あっちには小さいぬいぐるみがたくさん…!!」
パンダを発見したはフラフラと吸い寄せられるようにお店に入り、セルティもその後へと続いて二人は暫く店内を物色して周った
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一方こちらは、池袋のとあるジュエリーショップにやって来た新羅と静雄
「と言う訳で手っ取り早くジュエリーショップにやって来たのは良いんだけど、男二人だと何だか気まずいねぇ」
「………」
暢気に笑いながらそう言ってみせる新羅の後ろで、静雄は不機嫌そうに佇んでいる
しかしそれでもキレて暴れ出さないところを見ると、静雄もそれなりにへのプレゼントを買う事については乗り気のようだった
「なんて冗談は置いといて。アクセサリーはベタだけどやっぱり王道だよね」
「まぁな」
「でもこれだけ色々あるとどれが良いんだか迷っちゃうね。あれなんてセルティに似合いそうだし、ぁ、これも良いなぁ」
まるで自分が買い物に来たかのように嬉々として店内を物色し始めた新羅の後を追いながら、静雄は店内をぐるりと見渡した
隙あらば高価な商品を売りつけようと笑顔で擦り寄ってくる店員も、流石に静雄には近付いてこない
静雄は目の前でキラキラと美しさを主張するアクセサリーを暫く眺めた後、はしゃぐ新羅を置いて店を出た
「………」
店を出てた所で煙草に火を付け、新羅が出てくるのを待つ
何となく行き交う人々を眺めながら、静雄は煙と共に溜め息をついた
「酷いなぁ、黙って出て行っちゃうなんて」
やがて小さな袋を提げてご機嫌な様子の新羅が店から出て来る
「悪ぃ、何か性に合わなくてよ」
「まぁ男にはあまり居心地の良い空間では無いよね。でも良かったのかい?何も買わなくて…」
新羅はそう言いながらセルティ用に購入した紙袋を掲げて見せる
「いや、…何か違う気がするんだよな」
「何が?」
「こんなギラギラした感じじゃないっつーか、自己主張激しく無いっつーか…」
どうも高級な宝石とが結びつかないらしく、納得の行かないような様子の静雄を見て新羅はふっと微笑む
「確かに、ちゃんて高価な宝石よりお花とかぬいぐるみの方が似合う感じするもんね」
静雄はそんな新羅の言葉に同意するように無言で頷くと、煙草をポケット灰皿に押し込みながらふと思いついたように顔を上げた
「そういやこの間動物園でやけにパンダに執着してたな…」
先日の動物園でのの様子を思い出しながら、静雄はふっと笑う
「パンダ…? まぁ『上の動物公園と言えばパンダ』みたいなとこはあるけどねぇ」
「あれってよ、見る為に一々列に並ばないといけないだろ?」
「あぁ、凄い人気だもんね」
「4回並んだ」
「あはは、ちゃんよっぽどパンダが気に入ったんだね」
若干脱力気味に呟く静雄の言葉を聞いて、新羅は含み笑いを堪え切れずに噴き出す
「お疲れ様だったね、でもそれに4回も付き合ってあげたなんて偉いじゃないか」
「まぁ動物は別に嫌いじゃないし比較的空いてたからそんなに待って無いしな」
静雄がそう答えると、新羅は静雄の横顔に向かってにやにやと意味ありげに笑って問い掛けた
「まぁ好きな子の喜ぶ顔が見れるならそれ位は余裕だよね?」
「……次はぶち折るって言ったよなぁ…?」
「ちょっ、やだなぁちょっとした冗談だよ冗談!!そんな事より結局ちゃんへのプレゼントはどうするんだい!?ぁ、パンダのぬいぐるみとかどうかな!?」
新羅が静雄に掴まれそうになった腕をギリギリかわしながら早口で捲し立てると、静雄は動きを止めて首を捻った
「ぬいぐるみか…、なんつーかピンと来ないな…」
「うーん…。まぁ決まらないならとりあえず色々見てみようよ、ハンズにでも行けばきっと何かあるさ!!」
静雄はそう提案する新羅の言葉に頷き、二人は東急ハンズ方面へと歩き出した
前を行く静雄の後に続きながら、新羅は上手く誤魔化せた事に内心で胸を撫で下ろしたのだった
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