「…顔、おもしろい事になってるわよ」



罪歌による騒動の翌日

いつもの通り9時に出社した波江は、事務所に入るなり明らかに不機嫌そうな臨也を見てそう声を掛けた



「何かあったの?」

「………」



腕を組んで尋ねる波江の質問に答える代わりに、臨也はPCのモニタを無言で指差す



「…?」



臨也の背後に回った波江がモニタを覗き込むと、そこに映っていたのは公園内で静雄の怪我を手当てをするの姿だった



じゃない。これ、一体どう言う状況?」

「…昨日大量の斬り裂き魔が発生したのは波江さんも知ってると思うんだけどさ」

「えぇ。発生したと言うか発生させた、の間違いでしょ」

「まぁね。それで俺はシズちゃんが無様に倒れる姿を写真に収めたいと思って、罪歌に操られて無い人間を数名送り込んでおいたんだ」

「で、上がってきた写真を見てみれば無様に倒れてるハズのこの男がと良い雰囲気だから機嫌が悪いって訳ね…」

「と言うか俺はどうしてがこの場に居るのかが疑問なだけだけどね」

「疑問って顔じゃ無かったわよ」

「そう?波江さんの気のせいだと思うけど」

「…大体、は今この男と一緒に働いてるんでしょう?だったら一緒に居る位不思議な事でも何でも無いじゃない」



面倒臭そうにそう呟く波江に、臨也はモニタを見つめたままで答える



「俺の狙いはあくまでもシズちゃんだけだし、この日が家に帰ったのは確認済みだったんだけど」

「素直にを巻き込みたくなかったって言いなさいよ…。まぁでも帰宅後に家を出る事だってあるんじゃないの?」

「それがさ、はご丁寧に携帯を置いて出てるんだよね。この図を見る限り単純に忘れたとは思えないし…」



波江はぶつぶつと呟きながらモニタを睨み付ける臨也を見下ろして小さくため息をつくと、その場を離れて書類の整理を始めた



「要するに、貴方フラれたんじゃない?」

「……フラれるも何も付き合ってた事実関係が無いよ」

「だったら尚更ね。が選んだのは貴方じゃなくて彼だったって事でしょ」



淡々とした口調で語られる第三者から見た客観的な意見を聞き、臨也の眉は僅かに顰められる



「まぁ良いじゃない」

「何が?」

「貴方は人間の全てを愛しているのであって、特定の誰かを愛している訳じゃないんでしょう?」

「それが何?」

「それならが何処の誰と付き合おうと貴方には関係無い事よ。余計な詮索しないで放っといてあげたら?」



容赦無く浴びせられる言葉に、臨也はようやくモニタから視線を外すと椅子ごと身体を波江に向けた



「自棄に突っかかるけど、そう言う波江さんこそ弟くんをもう少し放っといてあげたら良いんじゃないのかなぁ」

「馬鹿言わないで。誠二はストーカー女に言い寄られただけの被害者だもの、今のと同じよ」

「なるほど、君の目には俺が愛しの弟を奪い去った張間美香に見えている訳だ」

「そうね」



臨也の問い掛けに波江が頷くと、臨也は両肘を机に乗せ手を組んで笑う



「だけど最終的に張間美香を受け入れたのは彼自身の意思だよ。波江さんがどんなに否定しようとね」

「なぁに?だからも最終的には自分を選ぶとでも言いたい訳?」

「まさか。でもまぁ…、そうだね。選ぶも選ばないもそもそも選択肢が最初から一つしか無ければ良い訳だ」

「はぁ?」

「解らないかなぁ。俺にとってシズちゃんはどう足掻いても邪魔者でしか無くて…、邪魔者は始末しなきゃねって話だよ」

「何が言いたいのかサッパリだわ」



何かを企む様な臨也の笑みを横目で見ながら、波江は呆れたように言い捨てた

臨也はそんな波江の様子など気にしていない様子で、先程の不機嫌ぷりからは一転し楽しそうな笑みを浮かべる



「幸い"良い物"が手に入る予定だからね…。上手く行けば流石のシズちゃんも死んじゃうだろうなぁ」



不穏な台詞を一人呟きながら、臨也は嬉々としてPCデスクに身体を戻した



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「おはようございます」

「っす」

「うぃ、おはよーさん」



同じ頃、事務所に出社したと静雄は先に来ていたトムに挨拶をする



「つーか二人揃って出勤とはねぇ。朝から見せ付けてくれるなぁおい」

「っ違いますよトムさん、昨晩は静雄さんと新羅さんの家に行ってたんです」

「新羅って静雄の友達のあの白衣の兄ちゃんだよな」

「そうっす」

「何かあったのか?」



新羅が医者である事も知っているトムは、首をかしげて尋ねた後でふと思いついた様に顔を戻す



「まさか出来ちゃっ」

「「トムさん!!」」

「はっはっは、冗談冗談」



トムが最後まで言い切る前に二人が揃って突っ込むと、トムは誤魔化すように笑った



「で、実際は何だったのよ」

「…あの、昨日の夜に南池袋公園で騒動があったんですけど」

「あぁ知ってる知ってる、今朝ニュースで結構騒ぎになってたもんな」

「それに静雄さんが巻き込まれて怪我しちゃったんで新羅さんに診て貰って、そのまま新羅さんの家に泊まったんです」



がそう説明して静雄を指差すと、トムは静雄の姿を上から下へと眺めた



「まぁコイツが巻き込まれて怪我すんのは今に始まった事じゃないけどな」

「確かに…」

「でも今回は傷の数が結構多いな。大丈夫なのか?」

「あぁ、別にもう痛くないんで…」

「そっか、なら良いんだけどな。そんじゃ今日はまず溜まった取立てから行くぞ」

「うす」

ちゃんは留守番頼むね、何かあったら電話してくれれば良いから」

「了解です。トムさんも静雄さんも頑張って下さいね」

「あいよ。んじゃまた後でなぁ」

「行って来る」

「うん、気をつけてね。行ってらっしゃーい」



こうして、が見送る中静雄とトムは事務所を後にした



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「さてと」



一人きりになった事務所では机に向かい帳簿を広げる

そして債務者の貸付額や返済額などが記載されているデータと帳簿を照らし合わせながら、は昨夜の事を思い返した



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「移動しようか、とは言ったんだけど…、何処行こうか」



公園を出たは、何となく駅に向かう道を歩きながら隣に並ぶ静雄に問う



「そうだな…」



静雄がの問いに対する答えを考えていると、目の前から見慣れたバイクがやって来た



「よぉ、そっちは大丈夫だったのか?」

「"あぁ、私が駈け付けた時にはもう全部終わっていたよ"」



そう答えるセルティの前には、贄川春奈が影でバイクに固定されている



「ぁ…、贄川春奈…」

「"知っているのか?"」

「はい…。贄川周二ってライターにセルティさん会ってますよね?その人の娘さんです」

「"あぁ、あの東京ウォリアーの…"」



セルティはに言われて思い出したように手を打った



「"でもどうして私がその男に会った事を知ってるんだ?"」

「ぇっと、それについてを今から説明しようと思って何処かゆっくり話せる場所を探してたんですけど…」

「"そうだったのか、それならうちに来ると良い"」

「良いんですか?新羅さんは…」

「"大丈夫、多分新羅も貴女の話が聞きたいだろうし"」



そう答えるセルティのPDAを読み、は静雄に意見を求めるように見上げる

そんなの視線を受けて、静雄は一瞬セルティを見つめた後でを見下ろして答えた



「まぁセルティが良いって言うなら良いんじゃねぇか?」

「じゃぁ…、お言葉に甘えてお邪魔しちゃおうか」

「"決まりだな"」

「あぁ、悪いな」

「"気にするな。そうだ、流石に2人は無理だけどちゃんだけでも後ろに乗って行く?"」

「ぇ?」

「そうだな、その方が安全だしそうしとけ」

「でも…」



はセルティの申し出を受けるべきか断るべきか迷ったものの、ふとこの後の展開を思い出しこくりと頷いた



「それじゃぁ…、お願いします」



そう言って頭を下げるにセルティは影で出来たヘルメットを渡し、はそれを被ってバイクに跨る



「"じゃぁ静雄、また後で"」

「おぅ」

「大丈夫だとは思うけど、一応気をつけてね」

「お前こそ転げ落ちるなよ」

「だ、大丈夫だよ。ちゃんとセルティさんにしがみついておくもん」



からかう様に笑う静雄に、はそう言ってセルティの腰に回した両腕に力を込めた



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暫くして新羅の家に辿り着いた静雄は、玄関先でチャイムを鳴らす



「静雄さんお疲れ様、大丈夫だった?」



扉が開き静雄を出迎えたのはで、は静雄の顔を見るなり開口一番にそんな事を尋ねた



「大丈夫って…何がだよ?」

「襲われたでしょ?此処に来るまでの間にナイフ持った人に…」

「あぁ…、そういやそうだな」



廊下を歩きながら静雄はの言葉で先程襲い掛かってきた男をぶっ飛ばした事を思い出し、感心したように呟いた



「……お前、本当に色々知ってるんだな…」

「少しは信じて貰えた?まぁこれからもっとちゃんとした説明するから」



がそう言ってリビングへの扉を開くと、既に新羅とセルティがソファに座って待機していた



「こんばんは静雄くん」

「"待ってたぞ"」



新羅とセルティに迎えられ、静雄とも向かい側のソファに腰を下ろす



「さて、早速だけど大体の経緯はさっきちゃんに聞いたよ。何でもちゃんは異星人で過去も未来も知ってるとか」

「お前それ信じたのか?」

「うーん…、正直半信半疑ではあるね。でもセルティと言う妖精が存在するんだ。異星人が居たって不思議では無いと思うよ」



静雄の質問に答えながら、新羅は自分で自分の言葉に頷いてみせる



「で、ちゃんが異星人って言うのが本当だとして、どうして僕達の過去や未来を知ってるのか…。その辺りを説明して欲しい所だね」



そう言って新羅がを見てにこりと笑うと、は小さく頷いて口を開いた



「これから話す事は推測がほとんどで何が真実なのか私にも良く解らないんだけど…、3人は『平凡少女』ってアニメを知ってる?」

「アニメ?いや、僕は知らないけど…、セルティは?」

「"名前だけなら何回か掲示板で見かけた様な…、でも詳しくは知らないぞ。静雄は?"」

「いや、知らねぇな」

「ですよね。じゃぁ新羅さん、ちょっとパソコンで"平凡少女"って入れて調べてみてくれますか?」

「いいよ。えーっと、へい、ぼん…しょうじょ…っと」



新羅は傍らにおいてあった自分のノートパソコンの検索ページに文字を打ち込む



「結果の一番上に公式サイトってありますよね」

「うん、これだね」

「で、そのキャラクター紹介を開いて貰うと解ると思うんですけど…」

「キャラクター紹介…と。あれ?これ、って…」

「"ん?どうしたんだ?"」



に言われた通りにキャラクター紹介のページを開いた新羅は、画面に映っていると言うキャラクターの名前と顔を見て首を傾げた

そんな新羅の様子にセルティが尋ねると、新羅は静雄とセルティに画面を向けて画面内のある一角を指差した



「ほらこれ、ちゃんだよね」

「"…本当だ、髪型はちょっと違うけど……"」



画面に映ると目の前のを交互に見比べながら、新羅とセルティは顔を見合わせる

は驚いた表情の新羅とセルティの視線に頷いて、改めて口を開いた



「私はこの世界じゃなくて、この世界で言う所の二次元からこっちに飛ばされて来たらしいんです」

「異世界が二次元とはまた予想外だね…」

「それで、こちらの世界では私が二次元だけど、私が居た世界では貴方達が二次元の存在なんですよ」

「ん?つまり僕達もこう言ったアニメやらの創作の産物って事?」

「そうです。こっちの世界だとデュラハンの名前から付けた"デュラララ"ってタイトルの小説が元でアニメ化も漫画化もされてて…」

「凄いじゃ無いかセルティ!!君が主人公だって!!」



の説明を聞いた新羅は嬉しそうにセルティに言うが、は慌てて訂正する



「あぁいや、主人公はセルティさんって言うより帝人くんよりなんですけど…」

「"帝人が?"」

「何て言うか、田舎から上京してきた冴えない男の子が池袋と言う町で色々刺激的な事に遭遇する的なストーリーと言うか…?」

「"なるほど"」

「何だ、僕とセルティのラブラブで甘い日常を綴ったストーリーじゃ無いんだね…」

「"へっ、変な事言うな!!大体そんなもの誰が読みたがるんだ!!"」

「ぐはっ」



がっくりと肩を落とす新羅の言葉に慌てながら、セルティは新羅の脇腹に手刀を打ち込む



「"と、とにかくだ。ちゃんは自分が元居た世界でその物語を見ていたから色々な事を知っているんだな?"」

「はい。ぁ、でも私が知ってるのはほんのちょっとの過去と、これから大きな出来事が起こって終わるまでの間だけですけどね」

「………」



がセルティに向かってそう言うと、それまで黙って話を聞いていた静雄がおもむろに口を開いた



「なぁ」

「ん?」

「アイツも今の話は知ってるんだよな?」

「うん、知ってるよ。でも詳しい内容は一切話してないし、臨也も本当なのかを確かめる以外は特に何も聞いてこなかったけど」

「…そうか」

「何か気になる事でもあるの?」

「いや…、」



の問いに静雄が言い淀むと、新羅が脇腹を押えながら会話に入って来た



「でも不思議だよね」

「何がだ?」

「だって折原くんの性格を考えたら未来を知ってる人間をそのまま野放しになんてする筈無いからね。
通常なら知ってる事を洗いざらい吐かせて最大限利用してやろうとするかなーって思ったんだけど…」

「"確かにそうだな…"」



新羅の推測に静雄の代わりにセルティが納得したように頷くと、新羅はの姿を改めて眺めてにこりと笑った



「それをしないって事は、折原くんは君の事が好きなのかもしれないね」

「へっ!?」

「"ぇ?"」

「………」



そんな突然の発言に驚くセルティの横で、静雄は黙り込んだまま複雑そうな表情を浮かべる



「な、何で急にそんな…」

「いや、だってちゃんが腕を怪我した時結構慌ててたみたいだし、その時の治療費もすぐに払ってくれたし…」

「ぁ、そう言えば治療費……って臨也払っちゃったんですか!?」

「うん。知られたら君は怒るだろうから内緒にしとく様にって言われたけど、どうせいずれバレる事だし良いよね」

「"いや、でも仮に臨也がその、ちゃんが好きだとして。好きだからってそんなチャンスを棒に振るか?"」



もしも過去や未来を知る人間が本当に存在するならば、その利用価値は計り知れない

ましてや常によからぬ事を企んでいる臨也にとって、の知る情報を利用しない手は無いだろう

自分ですらそう思うのだから、あの悪意の塊とも言える臨也がの悪用を考えない訳が無い

そんなの存在を"好きだから"なんて理由で放置するとは思えずにセルティが尋ねると、新羅はアッサリと首を縦に振った



「そりゃもちろん、好きな人の為なら自分の利益なんてどうでも良い事さ」

「"そう…なのか?"」

「もし僕が同じ立場でセルティが未来の事とかを知ってたとしても、僕は別にそれをセルティから聞き出そうなんて思わないよ」



胸を張って答える新羅の言葉にとセルティは顔を見合わせて首傾げる



「"いや、好きだろうが何だろうが情報を聞き出す位は良いんじゃないのか?"」

「そもそも臨也って好きな相手なら平気で拉致とか軟禁とかしそうだし、私の事が好きって事は無いと思うんですけど…」

「解ってないなぁ二人とも。男って言うのは女性が思うよりずっとロマンチストで臆病者なんだよ」



セルティとの意見を聞き、新羅は苦笑しながら呟くと静雄に同意を求めた



「ね、静雄くん」

「俺に聞くな」

「でも臨也がちゃんを好きなのは多分本当だろうなって思うだろ?」

「………」

「ほら、どうやら静雄くんも僕と同意見みたいだよ?」



沈黙を肯定と見なした新羅がに悪戯っぽい笑みを浮かべると、は一瞬言葉に詰まった後でほんのりと頬を染めた



「ぅ……で、でもそんなのあくまでも推測だし、それにその…それが本当だったとしてもどうしようも無いし…」

「"どうしようも無いって?"」

「だって私この世界の人間じゃないから…、いつ元の世界に戻るか解らないし……」

「そう言えば静雄くんが来る前にそもそもどうしてこっちに来てしまったのかも帰る方法も解らないって言ってたよね」

「はい…。でも多分…、私が知ってる部分の出来事がこの世界で終わったら、私はまた向こうに戻るんじゃないかなって…」

「どうしてそう思うの?」

「単なる勘です。お約束な展開としてあるかなぁって…。まぁ私向こうでは死んじゃったみたいだから解らないですけど…」

「もし戻れなかったらどうするんだい?」

「一応その事も考えて、臨也の家を出て一人暮らしを始めたんです」

「なるほどね…」



新羅はの答えに納得したように頷くと、腕組を解いて立ち上がった



「大体の事は把握出来たし、とりあえず今日はこの辺にしておこうか。もう遅いし良かったら泊まって行くと良いよ。ね、セルティ」

「"そうだな、私の部屋で良ければ布団はもう一組あるから"」

「ぇ?でも…」

「静雄くんはこっちで傷の手当て。ちゃんの応急処置でも充分だけど、一応傷口見ておこうか」

「あぁ…」

「それじゃぁ二人共おやすみ」

「ぁ、はい…。おやすみなさい」

「"おやすみ"」



こうしてやや強引に新羅に促され、とセルティはリビングを後にしてセルティの寝室へと向かった―



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「………」



回想しながら書類を片付けていたは、ふと日付の判子を押そうとしたところで朱肉が切れている事に気が付いて顔を上げる



「ありゃ…」



探してみても換えのインクは見当たらず、良く見てみれば修正液や油性ペンなどの細々した物も所々足りていない

は折角なので近くの文具屋まで買いに行こうと立ち上がり、鞄を肩に掛けてから思い出したように再度椅子に腰を掛けた



「そういや携帯無いんだった…」



昨日は携帯を家に置いて家を出て、そのまま新羅の家に泊まった為出掛ける事をトムに連絡しようにも携帯が無い



「まぁすぐ近くに行くだけだし、大丈夫だよね」



誰にとも無く呟いて、は机の上に書き置きを残すと事務所を後にした



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