21歳

大学生

池袋在住

身長:平均

体重:平均

髪型:一般的なセミロング

髪色:一般的なブラウン

特技:特に無し

特徴:特に無し

悩み:特に無し

平凡過ぎて逆に非凡じゃないかと思える程の平凡さが、ある意味特徴的かもしれない

壮絶な過去も持ってない

大層な夢も持ってない

一般家庭に生まれ、小中高と近所の学校に通い、大したロマンスもなく今まで生きてきた

そんな一般的な彼女の趣味はアニメを見る事と漫画、小説を読む事

現在嵌っているのは『デュラララ!!』と言う作品

原作が小説のこの作品は2クールに渡りアニメ化され、先日無事に最終回を迎えた

大好きな作品が終わってしまう事は悲しかったけれど、この度コミカライズ版が出版される事となった

早速大学帰りに最寄の本屋でコミック版を購入しただったが、

家に帰る途中、車道に飛び出した子供を助けようとして呆気無くこの世を去る事になってしまった










『異次元トリップ』









「う…ん、」



ふと、先程思いっきり轢かれたハズのの瞼がゆっくりと開かれた

身体を起こして立ち上がるが、あれ程の衝撃があった割りに目立った外傷は見当たらなかった

それどころか助けたハズの子供も、自分を轢いた車も、買ったばかりの本も何処にも見当たらない



「…ぇ?」



は事故の衝撃で自分の頭がどうにかなったのかと軽く混乱する

とりあえず自分の状況を確認しようと辺りを伺うが、良く知っているハズの街並みに何処となく違和感を覚えた



「何処だ此処…?」



途方に暮れるが突っ立っていても仕方無い

は近くにあった電柱から、此処が間違い無く池袋である事を確認するとひとまず駅へと向かう事にした



「………」



そして何とか駅に着いた所で辺りを見渡してみる

PARCOがあって、ビックカメラがあって、池袋名物の良く解らないモニュメントもきちんと飾ってある



「あれ?」



しかし一点気になる部分を見つけ、は首を傾げた

現在、その昔さくらやだった場所には新しくドンキが出来ているハズなのに、そこは未だにさくらやの看板が掲げられていた

信じられないが、まさか過去にでもタイムスリップしたのだろうか

はそんな事を考えながら、更に確かめる為に東急ハンズ前へと向かった



「…?」



東急ハンズに向かうまでの道でチラホラと青や黄色の小物をやたらに見につけた人々が目に入る

『デュラララ!!』の世界ではカラーギャングと言う集団が出ていたけれど、まるでそれみたいだ



「"まぁ現実世界にそんな解りやすい人達居る訳ないんだけど…"」



そんな事を心の中で呟きながらゲームセンターの前を通り過ぎようとした瞬間、の耳に聞き慣れた声が飛び込んで来た



「やったよゆまっち!!ついに『平凡少女』の限定版フィギュアGETだよ!!!!」

「良かったッスね狩沢さん!!アームの弱さを逆に利用するなんて流石ッス!!!!」



は思わず漫画のように急ブレーキで足を止め、声の方を振り返る



「いやぁ〜、もうずっと欲しかったんだよね、クリスマスサンタコスVer.!!!!」

「狩沢さんは派ッスか?」

「そりゃそうよ、あの平凡過ぎてむしろ非凡ってところに最大級の萌えを感じるわね」

「自分はどっちかと言うと綾瀬様派なんすよねぇ」

「うーん、綾瀬は正統派美少女って感じだもんね〜」



狩沢絵里華と、遊馬崎ウォーカー

二人とも『デュラララ!!』の登場人物で、極度のオタクである事が特徴のキャラだった

その二人がつい先日まで視聴していたアニメと同じ声、同じ姿で目の前に存在している

ただ一つ違うのは、それが2次元的ではなく、実際に3次元として具現化していると言う点だった



「何これ…、夢……?」



は自分の頬を思い切りつねりながら目の前の光景を呆然と眺める



「痛い…」



残念な事に痛覚は至って正常に機能しているようで、は痛む頬を押さえてぱちぱちと瞬きを繰り返した



「ん?どしたのゆまっち」

「いや、何か視線を感じるような…」



ふいに遊馬崎が顔を上げるとょろきょろと後ろを振り向いた

そして、遊馬崎と、遊馬崎につられて振り返った狩沢と、二人を見つめていたの視線がばっちり合う



「………」

「………」

「………」



狩沢と遊馬崎の視線がに注がれ、二人の口がぽかんと開く



「なっ…ぇ……え??……?」

…ッスよねぇ……?どう見ても…どう考えても……」



狩沢は両手で持っていた先程取ったばかりのフィギュアと見比べながら、と同じように瞬きを繰り返す

遊馬崎は呆然としながらもおもむろにリュックから文庫本を取り出し表紙と見比べながら首を捻った



「狩沢さんに…ゆまっち……本物…??」



で今まで憧れていた世界のキャラを目の前にして驚きながらも気分が高揚するのを感じていた

すると、じっとを見つめていた狩沢と遊馬崎が同時につかつかと近寄って来る

がきょとんと二人の様子を伺っていると、右腕を狩沢に、左腕を遊馬崎に捕まれた



「ゆまっち!!」

「ラジャっす!!」

「わぁっ!?」



狩沢の掛け声と共にの身体が宙に浮く

何が起きたのか理解する間もなくあっという間には連れ去られ、路地裏に止めてあったワゴンに担ぎこまれてしまった

勢い良くワゴンに放り込まれ、これまた勢い良くドアが閉まる



「おいこらドアの開け閉めはもっと静かにしやがれ!!!!」



渡草が後部座席の狩沢と遊馬崎に向かって怒鳴る

そして狩沢と遊馬崎の間に座って居る見慣れぬ人物を見て首を傾げた



「ん…?そいつ誰だ?」



渡草がを指差し尋ねると、二人は目をキラキラとさせながら渡草に説明を始める



「凄いの!!『平凡少女』の主人公に超ソックリな子!!」

「見た目だけじゃなくて声もソックリなんっすよ!!いやソックリって言うかもう本人!?的なレベルで!!」

「ヤバいよ、私達ついに二次元の世界に行ける日が来たのかもしれないよ!!」

「信じてたッス!!いつかこんな日が来ると信じてたッス…!!!!」



左右で交わされるハイテンションな会話を聞きながら、は渡草を眺めていた



「おぉ…、本物の渡草だ…」

「!? 渡草っちこの子と知り合いなの!?」

「いや知らねぇよ!!」

「じゃぁ何で名前知ってるんっすか!!」

「いやだから知らねぇって!!」



渡草は二人に詰め寄られ左右を首に全力で振る



「っはは…、何これ凄い…、ホントに……?」



急に笑い出したに驚き、三人は動きを止めてを見る

は笑いながら両手を頬に当て、独り言のように呟きながら狩沢と遊馬崎を交互に見つめた



「凄い、凄いよ…、私本当に二次元に来ちゃったんだ…!!」

「二次元?」

「此処は夢も希望も魔法も萌えも無い、単なる三次元ッスよ??」



不思議そうにを覗き込む二人に向かい、は一頻り笑った後で三人をそれぞれ指差した



「狩沢絵里華、遊馬崎ウォーカー、渡草三郎、…だよね?」

「渡草っちだけじゃなくて私達も知ってるの?」

「もちろん!!今日は門田さんは居ないの?」

「いや、さっき仕事あがった所だから後で合流するけど…、何でアンタ俺達の事知ってんだ?」

「だって私、向こうの世界で貴方達の物語を読んでたんだもん」

「向こうの世界…?つまり君は別の世界からやって来たって事ッスか?」

「おいおい何ですんなり受け入れてんだよ」

「うん。未だに信じられないけど、多分そうなんだと思う…」

「いやいやお前も真面目な顔で何言ってんだ…?」



渡草の突っ込みを無視し、は自分の身に起こっていると思われる事実を話し始めた



「さっき狩沢さんが私を漫画の主人公にソックリって言ってたけど、もしかしたら私その本人かもしれない」

「やっぱり!?だってどう考えても似すぎだもんねぇ」

「私はその漫画がどんな感じなのか解らないけど、確かに私の名前はだし、平凡さが特徴な位何の取り得も無いし…」

「はっ、もしかして綾瀬って名前の友達がいたりするんすかね!?」

「うん。綾瀬しずくでしょ?私の小学校の時からの友達」

「凄い凄い、本当になんだ!?」

「いや待てよ、そいつが嘘付いてないって証拠は無いだろ?」

「うーん…、証拠は確かに無いんだけど……」



渡草の言う通り、がその物語の主人公であり、この世界における"二次元"つまりにとっての現実からやって来たなんて突拍子も無さ過ぎる



「ぁ」



はふと思い出し、鞄に入れっ放しだった携帯電話を取り出した



「おぉ!!これ作中でが使ってた携帯だよ!!」

「流石狩沢さんはファンっすねぇ、携帯までチェックしてるなんてオタクの鏡っす」

「そりゃそうだよー、私も同じの欲しくて探したんだけど、作中オリジナルで似たのはあっても同じの無かったんだよね」

「そうなの?私が見せたかったのはこっちなんだけど…」



携帯を開くと圏外になっているものの電源は付いている

はデータフォルダを漁り、ある写メを三人に見せた



「これ、この前しずくと一緒に撮ったプリクラのデータなんだけど…」

「うわーーーー、綾瀬様だ!!本物の綾瀬様!!」

「綾瀬ッス!!これは間違いなく綾瀬しずく様ッスよ!!」

「全然解らねぇ…」



が見せた写真に三者は三様のリアクションを取るが、狩沢と遊馬崎はこれで充分の話を信じる気になったらしい



「やっぱりは二次元から来たんだね!!」

「ついに時代は異次元空間と繋がったんっすね!!」



手を取り合って喜ぶ二人を前に、は改めて自分に起きた出来事を話し始めた



「実は私ね、さっき大学から帰る途中に子供を助けようとして車に轢かれたの」

「えぇ!?」

「大丈夫なんっすか!?」

「いや、私も流石に死んだなって思ったし、実際に死んじゃったと思うんだけど、何故か気付いたらこの世界に居たの」

「…そんな事言われてもやっぱ信じられないけどな……」

「私だってそうだよ…。でも此処は明らかに私が住んでた池袋とは違うし、狩沢さんやゆまっちが居るって事はやっぱり此処は私にとって二次元の世界だと思うんだ」

「ぁ、それなんだけどさ」



の話を聞いていた狩沢が首を傾げる



「私達の物語ってさっき言ってたよねぇ?」

「うん」

「それって"そっちの世界"では私達がアニメ化してる二次元的存在って事??」

「そうそう、狩沢さん達は、『デュラララ!!』って作品のキャラクターだよ」

「面白い名前ッスね。主人公は誰っすか!?」

「ん?一応は竜ヶ峰帝人くん…かな」

「嘘ぉ!?確かに名前は派手だけどさぁ…」

「いやいや意外っすねぇ…、キャラ的には門田さんとか折原臨也辺りが有力かと思ったんすけど…」

「まぁ俺達は脇役だよな、どう考えても」

「で?で??どんなお話なの?」

「えーっと……」



キラキラとした表情で尋ねてくる狩沢を前に、はどう答えたら良いのか解らず言葉を濁す

大抵の場合、タイムスリップでも時空を超えても未来の事を話すのはご法度と言うのが定説だ

今のこの状況も、もしかしたら自分が発した一言が未来を変える事になるかもしれない

そう考えると迂闊に口出しするのは躊躇われ、は頭を抱える



「狩沢さん」

「何?」

「こう言う時空超えちゃった時とかのお約束として、未来の事は話しちゃいけないって、あるよね」

「ぁー、あるある」

「言われてみればそうっすねぇ…、うっかり過去の世界に飛ばされた主人公の一言で未来が変わって、的な展開は充分に考えられるっす」



の言葉に狩沢と遊馬崎は納得したように頷く

オタクの認識は次元を超えても共通なのかと、一人状況についていけない渡草は妙に感心していた



「ぁ、でもさ、狩沢さんが帝人くんの事知ってたって事は、ホロの看板運んでる時に正臣くんと帝人くんに会ったって事だよね?」

「そう言えばそんな事あったねぇ。て言うかそんな部分まで知られてるんだ…」

「ぇっと、今どの辺りなんだろ…。最近起きた出来事とか教えて貰って良い?」

「そうっすねぇ、特に最近変わった事は起きてないっすけど、とりあえず帝人くんに会ったのは3日前位の話っす」



遊馬崎が指折り数えながらそう答える



「って事は、まだまだ色々始まったばかりなんだね…」

「何々?これから何かあるの?」

「駄目っすよ狩沢さん、それを言っちゃうとが時空警察に狙われる立場になっちゃうかもっすよ!!」

「そっかそっか、何か残念だけど規律だもん仕方ないよね」

「いやお前等それで納得出来るのが凄ぇよ…」



渡草がため息混じりに呟いたその時、ワゴンの助手席のドアが開いて門田が乗り込んで来た



「ぁ、ドタチン!!」

「その名前で呼ぶな!!………ってか、誰だアンタ…?」



いつもの様にあだ名で呼ばれ、狩沢に向かって注意しようとした門田は、自分を呼んだのが狩沢でない事に気付き目を丸くした



「ん?何かどっかで見た事が…」



門田がの顔をまじまじと見ながら首を捻ると、遊馬崎がの肩越しに顔を出した



「門田さん門田さん、っすよ!!平凡少女の!!!!」

「あぁそうかか。言われてみれば似てるな…、って言うか……似すぎてるな…?」



遊馬崎に言われて違和感が解けた門田は再度じっくりとを見ながら怪訝な顔をする



「おぉ…、間近で見るとドタチンってやっぱり格好良い……」

「なっ…」



は好きな作品のキャラである門田に対しミーハー心丸出しで詰め寄る



「帽子取らないの?髪下ろした所が見たいんだけど…!!」

「おぉ、ってば積極的ぃ」

「ずるいっすよ門田さん、俺には全然興味持ってくれなかったんすよ?」

「だって、ゆまっちは私よりしずくが好きなんでしょ?」

「いやいやいやいや、そりゃ綾瀬様だって好きっすけど、でもだって充分可愛いっすよ!!」

「そんな真面目に面と向かって褒めないでよ…」

「えーゆまっちずるいずるい。私だってに激萌えなんだからね?このフィギュアに一体いくら掛けた事か…!!」

「おいちょっと待てお前達、状況が見えん」

「あー、何かこの女は二次元から来たんだってよ」

「はぁ?」



それぞれ好き勝手に盛り上がる中、門田は渡草の言葉を聞き呆れた顔で聞き返す



「ドタチン、信じてないの?」

「そんな事信じられる訳ないだろう…」

「でも本当の事っすよ!!因みにの世界では俺達の物語がアニメとして放送されてるらしいっす」

「俺達のって…、主人公は誰だ?」

「あの…えっと、帝人くんです」

「………そうか」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「と、言う訳でぇ、は本当に『平凡少女』ので、どう言う訳か交通事故にあったのをきっかけに私達の世界に飛んで来ちゃったんだって」

「なるほどな…、信じ難い出来事ではあるが話を聞く限り信じるしか無さそうだ…」

「私も自分で信じられないけど、今此処に居る事実は否定出来ないからねぇ」




腕組みをして難しい顔をしている門田の前で、は何処か他人事のように呟く



「ぁ、ねぇねぇ狩沢さん、そう言えば『平凡少女』ってどんな話?」

「えっとねー、平凡に平凡を極めた女の子が普通に学生生活を謳歌する話」

「それって自分で言うのも何だけど、話として楽しいの…?」

「結構人気だよ〜?ねぇゆまっち」

「そうっすね、の普通さとを取り巻く人達とのリアルな人間模様が結構地味にツボって視聴者は多いっす」

「うわ、何か変な感じ…」

「だよねだよねぇ、私もの世界に行ってその不思議な感じ体感したいなー」



相変わらず盛り上がる後部座席の三人とは対照的に、運転席の渡草と助手席の門田はその光景を眺めていた



「まぁ、とりあえずだ」

「ん?どしたのドタチン」

「こいつが本当に二次元からやって来たとしたなら、今のこいつには行く宛てが無いって事だよな?」

「確かにそうっすねぇ、こっちの池袋にの家があるとは思えないっすから」

「て事は、まず今後お前はこの世界でどう生きるのか、何処で暮らすのかを決めなきゃいけないだろ」

「ドタチン冷静〜」

「格好良いっす」



門田に言われては初めて気が付いたように顔を上げる



「そっか、私って考えてみたら行く宛ても無いしお金も無いし何にも無くなっちゃったんだっけ…」



あまりにも衝撃的な出来事の前に色々と忘れていたが、確かに門田の言う通りだ

は急に突きつけられた現実に今更焦りを感じ始める



「ど、どうしよう…。考えてみればこの世界じゃ私って不法入国者扱いだよね……?」

「知らない世界に飛んで来たのに最初にその不安が出なかった事が凄いと思うぞ」

「それは、まさかの出来事に何か浮かれちゃってて…。さっきまで、って言うか今でもちょっと信じられないし…」

「まぁ気持ちは解るけどな」



門田はの言葉に頷くと再度に尋ねた



「で、どうするんだ?」

「うーん…」



は両頬に手をあて暫く唸ると、ぽつりぽつりと独り言の様に呟き始めた



「私がどうしてこの世界に来ちゃったのかが解れば良いと思うんだけど、手掛かりは今の所何も無いし…、
元の世界に戻れる術があるのかも解らないし、そもそも戻った所で私って轢かれて死んだ訳だから綺麗な状態で戻れるのか謎だし…
でも漫画やゲームだと大抵元の世界に戻ると事故に合うちょっと前に時間が巻き戻ったりしてるんだよね。
まぁ元の世界に特に未練は無いし私としてはこのままこっちの世界で暮らせたら良いなとか思ったりするけど、
でも戸籍も何も無い状態じゃアルバイトすら出来ないし…」

「凄い、アニメの設定通りだねゆまっち」

が考え事する時にめちゃめちゃ長い独り言を呟くのは本当なんっすねぇ」



ぶつぶつと考え込むを見守りながら、狩沢と遊馬崎が盛り上がる



「ぇえと、ドタ…じゃなかった、門田さん」

「ん?」

「その…、今すぐは考えがまとまらないんだけど……」

「…あのなぁ」



色々と考えた結果"この場で結論を出す事が出来ない"と言う結論が出たらしい

は困ったような申し訳ないような顔で頭を掻いた



「まぁ暫くは俺達で面倒見てやるけど、ちゃんと自分でもどうするのか考えて決めるんだぞ」

「…良いの?」

「仕方ないだろ。此処まで関わった相手を見捨てられないしな」

「うわぁぁぁ、門田さんやっぱり素敵!!優しい!!常識人!!格好良い〜!!!!」



は両手を上げてそう叫ぶと、隣に座っていた狩沢に抱き付いた

抱き付かれた狩沢は特に抵抗もせず、むしろ嬉しそうにを抱きしめ返す



「ふふ、柔らかい〜」

「狩沢さんずるいッスよ、俺もに抱き付かれたいッス!!と言うかもういっそ自分から抱き付くッスー!!」

「ゆまっちそれセクハラだよ〜」

「あはは、全然良いよ〜」



狩沢に抱き付くの背中に遊馬崎が抱き付くが、は嬉しそうに笑う

門田と渡草がそんな良く解らない光景を眺めていると、門田がぽつりと呟いた



「と言うか今の流れでどうして狩沢に抱き付くんだ…?」

「…抱き付かれたかったのか?」

「いや…その……」



門田は誤魔化すように業とらしく咳払いをした後、ワイワイと盛り上がる3人に向かって声を掛けた



「遊ぶのはその辺にして、とりあえず今日は当初の予定通りカズターノの所に行くぞ」

「カズターノ…?ぁ、不法入国者のダフ屋だっけ」

「カズターノの事も書かれてるんだ!?」

「うん、ちょっとだけね。渡草くんに必要不可欠な人でしょ?」

「おうよ、聖辺ルリのコンサートに関してはカズターノに世話になりっ放しだからな」

「ぁ、って事は今から露西亜寿司に行く!?」

「あ、あぁ…。何で解ったんだ?」

「ん?そう言う展開なのをテレビで見たからだけど…」

「そうか…。何か予定が決められてるのは変な感じだな…」



が何の気無しに答えると門田が眉間に皺を寄せた



「もし俺がそれを聞いて"それじゃぁ露西亜寿司に行くのはやめよう"ってなったらどうなるんだろうな」

「ぇ…解らない……。でもそれは何かいけない気がする…」

「だよな。だったらもうこの先知ってる展開があっても口に出さない方が良い」

「うん…」

「まぁ言いたくなる気持ちは解るけどな」

「…解った。気をつける」



諭されてこくりと頷くに門田は更に付け足す



「他の世界からやって来て未来を知ってる事は、俺達以外には極力言うなよ」

「うん」

「知ってる奴に会ってもちゃんと初対面を装うんだぞ」

「うん」

「ドタチンて本当パパっぽいよねぇ」

が門田さんの娘に見えるッス」

「お前達もむやみやたらに街中でこいつの事を吹聴するなよ」

「「はーい」」

「全く…」



と狩沢、遊馬崎にしっかりと釘を刺すと、門田はシートベルトを装着しながら渡草に声を掛けた



「そう言う訳だ。とりあえず露西亜寿司まで行くぞ」

「あいよ」



こうして5人を乗せたワゴンが走り出した





-NextEp2-